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ダンジョンおじさん  作者: 広路なゆる


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100/119

100.おじさん、侵入する

「じっ……お、おじさん!?」


 ツキハはその人物の名を知っていたが、多少、機転を利かせたのか名を伏せた。


「マスター……あの人、Starry☆Knightsの……」


「おっ、本当だ……本物だ……」


 少女と通りすがりの最強千を所持した中年男性はセンの方を見る。

 ユウタやゲンゾウらもその状況に気付いたらしく、ゲンゾウが掌を前に出す動作でユウタらを制止し、ユウタらもそれに従っている。


「……ツキハさんよ、悪いな、この続きはお預けだ」


「えっ!?」


「いいか?」


「あ、はい……」


 ツキハがそう言うと、センは剣を降ろす。その瞬間、戦意が感知されなくなり、ゲーム的な戦闘状態は解除される。


 センはそのまま侵入者の元へテクテクと歩いて向かう。

 そして、目の前で立ち止まる。


「……なんだ? 主……」


 センは無言で球状の魔具のようなものを取り出し、ペンで何かを書き、それを少女に渡す。


「ん……?」


「ほら、サラ、(一応、)お礼を言うんだ」


「えっ!? あ、はい。有難うございます! ん……?」


 サラと呼ばれる少女は中年男性に言われるがままにお礼を言うが、その後で不思議そうに首を傾げる。


「いいってことじゃねえの、大事にしてくれよな?」


 サラはセンのサイン入り魔具”サインボール”を手に入れた。


「ツキハさんよ、ファンは何よりも大事にしないとな……ファンを危険に晒すわけにはいかない。そうだろ?」


 満足げなセンはツキハに向き直り、そんなことを言う。


「えっ……? そ、そうかな……」


「そういうこと、それじゃ、この続きはまたいずれ」


「そうね」


 否定しないのが、何だかんだで勝気な性格のツキハである。



 ◇



 Starry☆Knightsの面々は自家用車に乗り込み、あっさりと去って行った。


「マスター、これいらない」


「お、おう……」


 中年男性は魔具”サインボール”を手に入れた。


「じ、ジサンさん! お久しぶりです!」


 ツキハが侵入者の中年男性……もといジサンに勢いよく挨拶をする。


「そ、そうですね……」


 ジサンはとりあえず同意する。

 対面で会うのは、実に2か月ぶりくらいである。ジサンの感覚としては数か月というスパンは全く久しぶりでも何でもないのだが、彼女がそう言うのをわざわざ否定することはない。


「なんか邪魔しちゃいましたかね……」


 ジサンは結果的に水を差してしまったことに詫びを入れる。


「いやいや、全然、邪魔なんかじゃないですよ。あいつらに一方的に絡まれてただけですし……!」


「その割にツキハちゃん、楽しんでいたようにも見えたけど?」


「えっ!? 楽しくなんて全然っ!」


「そうかなー、ジサンさんに来ない方がいいメッセージを出すのも忘れてたでしょ?」


「あっ……」


 ツキハは硬直する。確かにチユの指摘通りであった。あの状況下なら渡したい釣竿(もの)があるということで、元々、会う約束をしていたジサンにメッセージを送ってやる方が賢明であったと今にして思う。


「そ、そう言うなら、チユが私にメッセージしてくれればいいじゃん!」


「えっ? そうかしらん?」


 チユは悪戯に微笑む。ちなみに月丸隊のメンバーでジサンとフレンド登録しているのはツキハだけである。


「しかしよー、笑っちまうよな。Starry☆Knightsの連中、ファンだのなんだの思い込んで、あっさり去っていきやがったがよ、まさかこの冴えないおじさんがお目当ての最強千を持ってる噂のアングラ・ナイト様だなんて思いもしなかったんだろうな!」


 ユウタが吹き出すように言う。


 ジサンはその言葉で何となく状況は呑み込める。


「冴えないは失礼でしょ!」


 ツキハが苦言を呈す。


(あ、いや……冴えないのは事実ですし……ん……? 新しいメンバーの方かな……?)


「……」


 ジサンは月丸隊メンバーから紹介されることもなく無言で佇んでいる金髪の男性に気が付く。




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