第一章
これはどこかの国のどこかの田舎町での物語。
深く濃い霧のかかる早朝。
「まだなの?」
何処に行くのかも分からず好奇心だけでついていったアンは伯父にそう聞くと
「もう少しだから」
とだけ言いまたひたすら荒い息の音だけが静寂の中で鳴り響く。
丘を登っているうちにようやく太陽が見える高さまで来た。
ここまでどれくらいかかっただろう?30分くらいだろうか?たとえ30分でも急勾配の坂道を30分は訳が違う。ましてや普段運動をしないアンには人一倍ハードに感じた。
黙々と登っているうちにようやく頂上にたどり着いた。
「綺麗だろ?モヤが晴れたらもっと美しい」
伯父はそういって笑いかける。
「ちょっと待ってろ」
そう言って頂上に1本だけ生えている大木の方へと歩き出した。
「今日はな、霧が濃くてよく見えん。」
大木の回りで何かを探しながらそういう伯父。
「ちょっとアン、霧をじっと見つめてごらん。もうすぐ風が吹く。もう少しだ。」
アンは言う通り霧をじっと見つめた。しかし何も起こらない。
「あとどれくらい?」
「んー、そうだな、あと30秒くらいかな」
そう言った次の瞬間頭の後で「ドン!」と鈍い衝撃を強く受けたアンはそのまま崖の下へと落ちて行った。