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~執事と恋したら、どうなりますか?~  作者: 石田あやね
第6章『執事も決心しなければなりません!!』
100/126

memorys,100

なんだかんだと

100話達成です«٩(*´ ꒳ `*)۶»


ここまで長い話にするつもりは

無かったので自分でも驚いています(゜o゜;

まだ暫くは続くと思うので

よろしければ最後までお付き合い

頂ければ嬉しいです(*´╰╯`๓)♬

 確かに晶さんには嫌われているのは知っている。しかし、誘拐までされるような恨みを持たれる覚えはない。どういうつもりかと問い質したいのに、ガムテープがそれを邪魔した。


「おい、外してやれ」


 晶さんの命令で、スーツ姿の若い男がわたしへと近付くと、少し強引にガムテープを剥がす。剝がされた箇所がヒリヒリ痛むもようやく声が出せることにわたしは勢いよく体を浮かせ口を開いた。


「一体どういうつもりなんですか!!」


 そう叫んだまでは良かったのだが、言い終えた瞬間に何かが床に落ちる音が近くで響く。

 その音を聞いたわたしは嫌な予感がして、視線を下へと向けた。


「晶様、防犯ブザーです」


 目の前で奪われてしまった防犯ブザーを愕然と見つめる。


「こんなものを持ってたのか……油断禁物だな。まだ持ってないか身体検査が必要のようだ」


「もう持ってないわよ!」


 今にも体に触れようと構える男から身をよじりながら叫ぶ。


「そんな状態でも威勢だけはいいんだな。さすが庶民育ちは違うな」


「そんなこと関係ない。それよりここはどこ⁉ なんで誘拐なんてしたの⁉」


 視界がはっきりしてきたため、自分がいるところはどこかの空きビルの中というのは分かる。窓からはたくさんのビルが見えるから、街中なのは間違いないようだ。隙を見て窓から助けを呼べば誰かした気付くかもしれないが、手足を縛られている今、それは難しい。ここで大声を出しても、窓が締め切られているために無駄に終わるのは分かり切っていた。もう、自分には逃げ場はない。


(うまく晶さんを説得してやめさせるしかない……)


「お前を拉致したのは、やってもらいたいことがあるからだ」


(それなら、要求をのむふりをして何とか逃げる隙をつくろう)


 わたしはじっと晶さんを床から見上げ、できるだけ落ち着かせるように静かな口調で尋ねた。


「やってもらいたいことってなんですか?」


 晶さんは無表情でわたしの横に立つ男に手で合図を送る。指示を受けた男は部屋に散乱していた誇りまみれのパイプ椅子をひとつ持ってきて、わたしをそこへ座らせた。身動きができないように、男はわたしの肩を軽く抑える。


「今から陽太に俺が電話をかける。そしたらお前はこう言ってくれればいい」


 晶さんはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、わたしの目の前にしゃがみ込んだ。


「社長を辞退すると会長に言えって……」


「なっ、そんなこと言えるはずがないじゃない!!」


 要求をのむふりをするはずだったのに、反射的に反論してしまった。だって、あまりにも身勝手な要求に腹立たしさしか涌いてこない。


「そうか。なら仕方ないな」


 前なら感情任せに苛立ちをわたしに向けてきた晶さんだったが、今回はなぜか笑顔を絶やさない。その笑顔は逆に気味が悪く、早く逃れたい衝動にかられた。晶さんの手がこちらへとゆっくり伸びると、わたしの頬を指先で撫でるように触れる。触れられた瞬間、背筋がぞわっと寒くなるのを感じた。それ以上触られたくなくて、顔を横に避ける。


「そんなに嫌わないでくれよ。別にお前を傷付けようなんて思ってないさ……俺は優しいからな。陽太に頼むのが嫌ならそれで構わない」


「え?」


「別の選択肢だって用意してある。お前にとっても好条件になると思うぞ?」


 こんな監禁めいたことをして自分を優しいなんて言う相手の思考が分からない。別の選択肢もあるとはいうが、まるで好条件だとは思えなかった。


「それってどんなことですか?」


「簡単だ。ここで俺たちは和解し、今までのことを水に流そう」


「……それだけ?」


「ああ、そして俺たちは再出発するんだ。新しい関係を築こうじゃないか」


「新しい関係って?」


 そう聞き返すと、晶さんは更に笑顔を深める。


「俺の婚約者になるんだ」


 その言葉に唖然とした。何をどう考えてそこに行き着いたのだろうか。意味が分からな過ぎて全く理解ができない。


「そんなの……嫌に決まってるじゃないですか!! わたしはっ……」


 一瞬神木さんの名前を出しそうになり、ぎゅっと唇を噤む。


「今は恋愛感情が湧かないのも分かるさ。出会いも浅いし、交流もあった訳でもないしな……お互いの事をなにも知らない同士ではあるけど、これから仲を深めていけばきっとお前も俺を選んで良かったと思うさ。何せ朝比奈財閥の血筋と結婚できるんだからな。誰からも羨まれる結婚になること間違いなしだ!」


 絶対そんなの有り得ないに決まっていた。わたしの家族が許すはずがない。そもそも、わたしが晶さんとなんて想像しただけで虫唾が走った。


「なんでわたしと結婚したいなんて思うんですか? あんなに嫌っていたのに、どうして今になって」


「それは簡単だ。君と結婚することで俺の人生が有意義なものになると分かったからさ。結婚なんて愛は二の次……権力や名声を手に入れて初めて愛が生まれる。世の中なんて金さえあれば何でもうまくいくものだ」


「わたしと結婚したって無意味ですよ! そんな力なんてないんですから!」


 すると、晶さんは意外そうな顔でわたしを見る。


「なんだ……お前まだ知らないのか」


 その発言の意図を尋ねようと口を開きかけた時、半開きになっていた扉が壁にぶつかる程の勢いで開け放たれた。その音に驚いた晶さんと若い男は瞬時に目線をそちらへ向ける。


「誰だっ」


 そう叫んで扉の方へ歩いていく晶さんを追いかけるように、なんとか動かせる首を限界まで曲げた。しかし、誰が来たのか確認できないまま何かが床に倒れる音が耳に届く。


(どうなってるの? 何が起きたの⁉)


 目視できない恐怖の中で、わたしの肩に誰かの手が触れ、咄嗟に叫ぶ事しかできなかった。

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