プロローグ
「…んっ?」
右前方、薮が青白く光っていた。これはお伽噺的なあれか?と一人妄想を膨らませた俺は、少し警戒しながらもそれに近付いた。
「っ!お前…怪我してるのか、?……息はあるな。」
そこに居たのは動物か、はたまたモンスターか何か。
でも、こんなモンスター見たことないぞ。大型よりの中型犬といった大きさ、額には角?だが折れてしまっている。馬のような体を持ち、尻尾は毛先に向けて蒼く光っていた。
「やべぇもん拾っちまったかもな…。でもほっとけねぇしなぁ。」
自嘲気味に笑いながら、自分の弓を肩に引っ掛けそいつを抱え上げた。肉食系のモンスターが近くに居なかったのが幸いだった。浅い息を繰り返すそいつを抱え、山道を下りながらアジトを目指した。
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「んー、俺ん家何もねぇからなぁ。取り敢えず適当な箱に入れとくか」
彼はこの物語の主人公……
ではない。
人里離れた山奥に自分の小屋を持ち、ハンターとして生活している。この山は気候にも恵まれ、多種多様な生命が生態系を築いていた。だからこそ、彼のようなハンターには打って付けの良い物件なのだ。
ちなみに彼の名前はハンク。生まれも育ちも山だ。そんな彼が怪我した動物なんかを処置するのは日常茶飯事だった。しかし、彼が拾い上げられるのは限られている。それに気付いてからは、自然のなすがままに目を背けてきた。だが今回はそんな彼でも拾い上げてしまった。
普通の生物とは違うオーラを放つそいつを放っておくことができなかったのだ。
「お前、なんてモンスターだ?ハンター協会になんか突き出したらただじゃ済まないだろうしなぁ…。元気になるまでここで静かにしとけ、な?」
言い聞かせるように語りかけ、その透明がかった体を撫でた。そして苦しそうな息をしているそいつの体を入念に、しかし優しく調べていく。
「う~ん、前肢は問題なし…右後肢だな。あとは打撲と…これは熱なのか?わかんねぇー。けど多分熱もあんだろ」
清々しいまでのアバウトな診察に突っ込める者は誰も居らず、それでも彼の診断は的を射ているのだ。ハンクが触れても抵抗しないそいつに水を飲ませようと席を立った。
「毛はあるけどなぁ、パサパサしてるし。あれで子供なのか大人なのかも分からん。」
何もかにもが分からない生物を取り敢えずタオルでくるんでみたりして体温を下げないようにし、怪我の様子などを紙におこした。
連れてくる時は微塵も思わなかったが、今まじまじと見てみると現実に存在しない…架空の生物に似ているような気がしてきた。額の角といい毛先に向かって蒼白く光る体。どれをとっても普通のモンスターや動物なんかの遺伝子では生まれでない形質であろうものだ。
それでもハンクの好奇心は止まらず、いつか手懐けてやる…と意気込んでいるのだった。