人魔村
村人を無事に救出する事が出来た。それに、ゴブリン達も解放する事が出来た。
「それで、こいつらはどうする?」
俺は村長に聞いた。すると村長は
「サトル様にお任せ致します……」
とだけ言って、後ろへと下がった。
(こいつらは、種族も解って無いしな……どうしたものか……)
(うーん、種族は猪喰族みたいよ?)
(猪喰族かぁ……)
(力仕事は向いてると思うけど?)
なら、村の建築や開墾をさせよう。
「お前には、この村で力仕事をやってもらう。だが、お前らみたいにタダとはいわない。働いた分だけ住むところも与えるし、食事もだす」
彼らも、これから殺されるかもしれないという恐怖との狭間に居たからだろうか、俺の話を聞くと泣きだすものや、喜ぶ者もいる。
「さて……これから村を建て直すが……」
そういえば、村の人間の名前もまだ知らなかった。
「村長、皆の名前を教えてはくれないか?」
俺がそう言うと、村長は少し困った様に
「我々はその……人狼族でして……名前はございません……」
こいつらも魔物か……
さすがに、名前がないのは不便なので、付けてみようか?
「名前がないのは不便だから、何か付けていいか?」
「!!サトル様さえ良ければ是非とも!」
村長が良いと言ったので少し多いが、猪喰族も小鬼族にも全員名前を付けることにした。
「まず村長がウルフト、君にはこれからのこの村の内政を任せたい。」
「はっ!名前に恥じぬよう努めさせていただきます……!」
「次がウルラス、ウルガ、ライガ、オルガ…………」
人狼族だけで300人近くいた。
次に小鬼族だ。こっちは100人程と人数が少ない。
「小鬼族のリーダーは、族長である君だ。名前はゴブラス」
「はっ!誠心誠意お使え致します!」
小鬼族も何とか名前がつけ終わった。
最後に猪喰族だ。こちらは残党なので数が少ない。50人程度だ。
一際大きい個体を見つけたので
「君が猪喰族を率いてくれ。オータス」
「もったいなき……」
合わせて400もの名前をつけ終わった。これには正直に言うと疲れたし、途中名前が被りかけたりと大変だった。最後の方は名前とは思えない適当さだったが、本人達は嬉しそうだったので良いのだろう。
俺は彼らに宣言した。
「俺がこの村の主になるからには、争いは禁止する。種族間での争いは厳禁だ」
仲間で争われたら話にならない。
「よそ者でも、村の住民になれば受け入れること」
「人にはこちらから手を出さないこと」
この三つを守るようにみんなにあらかじめ告知しておく。
(サトル・バーダントの種族が人魔族に昇華しました。称号獲得『魔を率いる者』名前を付けた者達が配下として『バーダントの系譜』として追加されます。これは主従を示すものです)
世界の声が俺に告げた。どうやら、俺は人間じゃなくなったらしい。人と魔物の中間のようなものだろうか?
俺は急に眠くなり、崩れるように地面へと倒れてしまった。
目が覚めると、そこには美しい女性が二人俺の周りにいた。
「あ!サトル様が目を覚ましたわ!」
「ホントだ!ウルフト様にお知らせしなければ!」
一人はすぐに出ていき、ウルフトを連れて戻ってきた。
いや、ウルフトと呼ばれる男を連れてきた。
「サトル様、おはようございます。ウルフトでございます」
そいつは俺の知っているウルフトではなかった。年老いて見えた肉体は三十代かと思うほどに生き生きとしており、身体も細かったのが、筋肉質のがっしりとした物になっている。
「お前がウルフト?」
俺は疑問をそのまま口に出してしまった。
(名付けにより魔物の文化力が向上。及び、サトル・バーダントの人魔族への昇華により魔力が増加しました)
世界の声が俺の疑問に答えてくれた。
「ええ、ウルフトです。おかげさまで我々は魔狼族に、猪喰族は猪人族に、小鬼族は鬼族へと昇華しました」
なるほど、こいつらも何やら新しい種族に生まれ変わったらしい。
「それは良かった」
「ありがとうございます。ところで、村の復興なのですが、内政担当としてまずは田畑の確保が重要かと思いますが」
確かに、食べるものが無ければ自然と村は滅んでしまうだろう。
「分かった。取り掛かってくれ 」
「了解しました。それでは、我々ベオウルフは建築材を集め、ハイオークには田畑の開拓を、オーガには周辺調査を支持してよろしいでしょうか?」
さすがは元村長だ。これくらいのことはお手の物なのだろう。専門外の俺はもちろん
「よろしく頼む」
としか言うことは出来ない。
ウルフトは礼をすると小屋から出ていった。
俺も村と村の周りをもう一度ゆっくり見ておこうと外に出た。
まずは畑へと向かった。そこではハイオークが畑を広げ、数人のベオウルフが耕作をしていた。
「すすんでるかい?」
俺が姿を見せると
「サトル様!残念ですが、ここの土は栄養価が低いらしく、昔からなかなか物が取れませんので……」
土がダメなら穀物も育ちにくいだろう。
なにか妙案はないかとしばらく考えていると、前の世の中で肥料を使って農業をしているのを思い出した。
「肥料とかは使わないの?」
「肥料……ですか……あるにはあるんですが、ここの土が合わないらしくて……」
どうやら、農業面では支給土を良くしなければ何も育たないかもしれない。
「どこかから良い土を運んできたら大丈夫か?」
「はい!豊かな土さえあれば、それを元に増やす事も可能です!」
なるほど、まずは良質な土を見つけることから始めるか。
そして、俺は農地を後にした。
さてさて……良質な土か……
俺は森の中へと入って行った。そういえば、起きてからフィアをまだ見ていないが、またどこかへ行ったのだろうか?
俺はとりあえず、落ち葉が分解されたものや、水場近くの土などを少しづつ取ってカバンの中に詰めた。
日もくれてきたので、村に戻った。農地に再び向かい、森で手に入れた土を見せる。
「どうだ?」
「残念ですが……ここら一帯の土は何故かどれも養分を吸い尽くす土の様で……なかなか良い土は森の中に我々も何度も入ったのですが見つかりませんでした……」
すでに彼らも土を求めて何度か森を探したらしい。
しかし、どれも何やら与えた肥料をまるで土が全て吸い取ってしまうように、栄養価の低い痩せた土が出来るようだ。
俺はウルフトの元へと向かった。俺よりはここらのことに詳しいだろうから、何か思いつくかもしれない。
途中、どこに行ってたのかフィアが現れた。
「どこでも話せるんだから、声掛けてくれてもよかったのに!!」
まるで母親が欲しいものを買ってくれなかった時の小さい子供の様に怒っている。
もちろん、俺は悪くないよな?
「悪い悪い。それより、ここらの土が痩せすぎてて穀物が育たないのだけど……」
「まぁ、間違いなく誰かの仕業ね。土の中に毒でも混ぜてるんじゃ無いかしら?」
「この村の奴が?」
「うーん、これは精霊系の魔法だと思うから、もしかしたら山のもっと奥に、誰かが住んでるのかもしれない」
「なるほど、そいつを止めないと村は食事無しってことか」
「たぶんだけどね」
それは死活問題だ。ご飯が食べられないのは、何よりの苦痛だ。明日の朝から、森の探索を始めるとしよう。
その日は、広場でみんなで食事をとった。想像していたのより美味しかった。というか、絶品であった。
「これは、オーガの娘達が作った夕飯ですよ。お口に合いますか?」
「うん!とても美味しいよ」
「だね!美味しいわよ!!」
フィア……こいつがいる限り、村の食料安定は恒久課題となる事は間違いがない。
「だけど……食料が、足りなくならないか?」
「その件だけが心配でして……」
「そこで俺は、明日の朝でも森の奥へ行こうと思うんだけど……」
「なんと!森の奥へ!?あそこには邪竜がいて大変危険でございますぞ!」
竜だって?全く俺は聞いてないぞ。
「そいつがどうやら、痩せた土の原因らしい。だから、みんなが飢えないためにもなさいかないと」
「なんとお優しいお方なんだ……」
「いや、だって長ってそういうもんだろ?」
またウルフトが泣き出しそうだったので、先に抑えておく。
「私も行きたいですが……足でまといになるので、腕の立つ者を選びますので、どうぞお連れください」
「あぁ、よろしく頼むよ」
俺は腹いっぱい夕飯を食べてしまった。そして、明日の探検に向け、眠ってしまった……。




