村奪還
村長らしき人物に連れられて、村の女子供が囚われているという怪物のアジトへ近付いた。
奴らのアジトは、洞窟を改造したものらしく、大きな洞窟の入口には、2匹の怪物がいた。2匹は槍を片手に互いに話をしている。
「それにしてもよ、俺たち魔物はよ、名前なんてねーのによ、俺たちのエサの人間にはあんだ?」
「そりゃ、あいつらが名前ねーと判別できねーからだよ。俺たちみたいに個体を識別できねーんだよ」
「でもよ、ボスは名前あんだろ?」
「ボスはボスだぜ?そこらの人間の名前なんて比べもんになんねーよ。何たって、ボスは魔王様に名前を付けていただいたんだからな」
「俺もほいしぜ……」
「お前には一生むりだろ!」
こいつらには名前がないのか?そういえばフィアにも無かったが……
とりあえず、ここは2匹を倒して進むしかないだろう。
(フィア、突撃するか?)
(……)
(フィア?)
(……)
(おーい、フィアさーん?)
(……うるしゃぁい……)
どうやら寝ているらしい。ここは一旦引き返すのがいいだろう。
俺が引き返そうとした時、村長が
「よろしくお願い致します、奴らはこの洞窟の中です……」
と期待の籠った目で見てきた。
(引き返せねーじゃねーか……)
仕方がない。どうせ俺は死なない能力が有るんだし、どうにかなるだろう。
俺はゆっくりと2匹に近付いた。
「……おい?あいつ何だ?」
「……しらねぇ。新入りのエサじゃねーの?」
2匹が俺を見つけたようだ。2匹の視線が俺の視線とぶつかる。
「村の人間を返してもらいにきた。手荒な真似はしたくない」
俺は勝てないと思ったら全力で逃げよう、そう心に決意し正面から声をかけた。もちろん虚勢である。
「なんだァ?殺していいのか?」
「いんじゃね?」
そう言って2匹は襲いかかってきた。
俺は無敵だ、問題ない。
2匹の槍をかわしつつ、殴ったりしてみた。
「こいつ、よえーな!」
「あぁ、蚊が止まってるようだぜ」
全く俺の力は通用していなかったのだ。
こうなれば、逃げるしかない。いくら死なないと言っても、攻撃が通用しないのである。
その時、左胸に痛みを感じた。
片方の槍が俺の胸を貫いたのだ。
「へへっ、やっと狩れたぜ」
「あぁ、雑魚だったな」
そう言うと、2匹は俺の体に槍を何度も突き刺した。
何度も何度も何度も……
そして俺は意識を失った。
(ここはどこだ……?)
辺り一面真っ暗だ。何も見えない。
(やっぱり死んだのか?)
先程刺された事により死んだかもしれない。とてつもなく痛かった。やはり痛みは嫌いだ。
(フィア……?いるか?)
どうやらフィアも居ないらしい。
(これが死後の世界かぁ……異世界まできて、なんにもせずに死んだのかァ……)
すると突然、
(実績を解除しました。称号『先導者』を獲得。『世界の声』が以後反映されます。)
突如、頭の中にまた声が直接聴こえてきたのだ。
(特殊能力、不朽体を発動しますか?Yes/No)
選択肢を出された。
(……Yes)
もちろんYesだ。
(承認を確認。スキルを発動します。これより以後、能力は任意で常時発動可能です)
そう言うと、俺の意識はまた消えた。
気がつくと声が聞こえる。
「一応ボスに報告するか?」
「こんな雑魚いいだろ」
どうやらさっきの2匹のようだ。俺は生き返ったらしい。体に痛みはもう無い。
俺はゆっくりと立ち上がった。
立ち上がって見ると、視界の左下にメニューのようなものが見える。気になったので見つめていると、メニューが開いた。
スキル
ステータス
状態
などの設定が書かれていた。どうやら、ここからスキルなどを使えるみたいだ。
「で、それからどうすんだ?」
俺が起き上がり、声をかけたことにかなり驚いているようだ。
「てめぇ!まだ生きてやがんのか!」
「殺し直せばいいだろうよ」
2匹はまた俺に向かって槍を繰り出す。一突き俺の腕に当たった。
しかし、瞬時に傷は塞がった。
もちろん痛みはあったが、塞がったら消えるようだ。
(確か模倣者は相手のスキルがコピー出来るんだったよな)
俺は模倣者を使おうとした。
しかし、模倣者の欄は何度選択しても使えない。代わりに高利貸は選択が可能なようだ。
俺は、役に立つのかどうか分からないが、選択してみた。
メニューに
0~10倍を選んで下さい
と表示されたので、迷わず10倍にした。
次の瞬間、2匹の怪物は飛び散った。
(槍による攻撃の全てを10倍の物理攻撃に変換し、対象に攻撃完了)
視界にそう表示された。
(……飛び散るってやばいだろ……)
俺の周りには、辺り一面2匹の血で真っ赤だ。
(レベル4になりました。ステータスが上昇します。普遍能力『治癒』、『筋力強化』を獲得。免疫能力『熱耐性』向上)
と、世界の声が俺に告げる。どうやら、こいつらを倒したことによってレベルが上がったようだ。
村長は木の影から目の前で起きた事に驚いていた。
こんな感じなら、アジトも案外簡単に制圧できそうだ。俺は洞窟の中に入った。中は松明が置かれており、それなりに明るい。しばらく、進んでいると鎖に繋がれ、逃げられないよにされた女性達がたくさんいる空間に出た。
俺を見つけると
「お助け下さいませ、お助け……」
怖がってみんな頭を抱えてしまった。
すると、奥から
「さぁーで、ぎょーはどいづにすっかなー」
と地響きをさせながら近付いて来る、大きな魔物がいた。そいつの周りには、数十人の洞窟の見張りをしていたヤツらがいる。
「なんだ?へんなやづがいっびぎいるど?」
俺を見つけるなり、左手に持っていた大きな石のついたハンマーを俺に投げてきた。俺は躱すことが出来ずに、頭からハンマーを食らった。
そしてまた俺は意識を失った。
が、直後に俺の身体は再生された。
そして、高利貸によってハンマーを投げたバカでかい化物に10倍で返してやった。
一瞬にして化物は肉塊と化した。
周りにいた魔物たちは、目の前で起こった事が理解出来ずに唖然としている。
「負けを認めて降伏するか、闘うか、きめろ」
俺がそう言うと、全員武器を捨てて跪いた。俺の勝ちだ。
(レベル11に上昇。普遍能力『暗視』、『水中移動』獲得。免疫能力、『魔法耐性』獲得。ステータスが上昇しました)
1匹倒しただけでかなりレベルが上がった。
囚われていた女達は歓声をあげた。後ろで隠れていた村長に至っては、俺の方へ走ってきて、地面に頭を擦り付け、何度も礼を云ってくる。
(よかったわね!)
ん?
(やれば出来る子だと思ってたわよ!ちゃんと世界の声も聴こえるようになったみたいだし、スキルも使えたし、えらいえらい!)
寝ていたフィアが起きたようだ。いや、はなから寝てなんてなかったのかもしれない。
フィアはペンダントから飛び出た。
「いやー、あなたの頭になんか入ってきたからさぁ、私追い出されちゃった。多分、メニューとか見えてるんじゃないの?」
「ああ、世界の声が聞こえ始めてから見える」
「やっぱり!慣れるまではずっと選択しないとダメよ?慣れたら私みたいにささっと使えるし、表示もされなくなるから!」
そう言うと俺の前でクルクル回った。
「それと、これあげる!」
(希少能力『思考共有』を獲得)
なにやらスキルを覚えたようだ。
(これはね!頭の中で会話が出来る能力よ!所有者が使うと持ってない人とも意思疎通ができるわ!これから、この人たちの王様なんだから、こういうのは必要でしょ?)
(いつから王様になったのかは知らないが、とりあえずありがとう。てか、スキルの譲渡は可能なの?)
(うーん、特定の能力だけかな?特殊能力は絶対できないよ!)
なるほど、スキルの中には譲渡出来るものもあり、こうやって他人に習得させることもできるようだ。
(まぁ、その人に適切がないと無理だけど……)
そう言いながら、フィアは女性たちの鎖を魔法で破壊していく。
さらに奥には、子供たちが囚われていたようで、村長が子供たちを連れて戻ってきた。
「なんとお礼を申したらよいか……とりあえず、わしらの村までお越しください……」
俺は、魔物どもを縛り上げると、村まで女性達にも手伝ってもらい村まで連れ帰った。
村では、先に解放した男達が待っていた。俺たちの姿を見つけると、みんな走ってくる。
「あなた!」
「会いたかった……!!」
そんな声が至る所で聞こえる。フィアも何故か自慢そうだ。
こうして、俺たちの地盤となる村を奪還する事が出来たのであった。




