能力判明!そして……
俺はラフィーネに大きな建物の前に連れてこられた。これがこの町の教会らしい。オレンジの煉瓦を基調とした建物の中では珍しく、教会は屋根が青色で、壁などは白を基調としている。入口には、左右に開く扉があり、外にはシスターだろうか?女性の人がほうき掃除をしている。
「ここがミューラント王国の国教で、アスタント公国最大の教会、ヨルムン教会よ」
そう言って、教会の説明をしてくれた。最大と言うだけあってなのか、扉の奥には人がたくさん入っていた。礼拝中だそうだ。
「うーん……人がたくさんいるわね……。これじゃ、神父様にあなたをみせることが出来ないかも……」
と言ってラフィーネがシスターに話しかけた。シスターは掃除を辞めて、仰々しくお辞儀をすると、俺に手招きしてラフィーネと共に教会の裏へと連れていった。
そこには、小さな小屋があった。
「この小屋はいったい?」
俺は教会に行かないことにしたのか、と思い目の前にある小さな小屋について質問してみた。
「はい、ここは神父様のご自宅でございます。今回はラフィーネ様が調べてほしいことがあるとの事だったので、特別にお通ししました。礼拝中で混雑しておりますが、ここならすぐに神父様にお目通りできますので」
シスターが説明をしてくれたと思うと、またお辞儀をしてくるりと引き返してしまった。
どうやら、礼拝に神父は参加していないらしい。そんなもので大丈夫なのか?と少し疑問にも思ったが、他にも弟子の神父でもいるんだろうと勝手に納得しといた。
「それじゃあ、入るわよ」
ラフィーネは小屋の扉をノックした。
すると
「どうぞ」
と中から男の声がした。
俺たちは小屋の中へと入った。そこには、40代後半くらいだろうか?中年の痩せ気味の男が座っていた。手には丸い水晶球をもって。
「ようこそお越し下さいました、ラフィーネ様。そこの御仁も」
神父はそう言って、俺に握手を求めてきた。
「ほほぉ……なるほど、なるほど。実に珍しい御仁だ」
神父は俺の右手を握るなりそう言った。
「今あなたをみているのよ、神父様は。神父様は手を触れた人の心がみれるの。例えば、本人も知らないようなね」
「私も長い間生きてきたが、遭難者に会うのはこれが3度目じゃ。前にあったのは250年くらいまえじゃった」
俺の正体を話も聞かずに見破った。それどころか、この神父はかなり長生きなようだ。これは後でラフィーネに聞いておこう。
「神父様、この人の名前と能力、お分かりになるでしょうか?」
ラフィーネは神父に尋ねた。
「もちろんじゃが……この御仁の心は雲がかかっているようで、全てを見ることはできませぬ。分かったのは特殊能力が3つと免疫能力が2つあるという事、彼の名前の一部だけじゃわ」
そう言うと残念そうに俺の手を離した。
「じゃあ、わしの精霊から話を聞くとしようか」
神父が水晶球を撫でると、球が光って中から赤色の雲のような半透明のものが現れた。
───やっと来たか───
そんな声が聞こえた気がしたが、誰も反応していないので聞き間違いだろう。
その赤い雲はどこからか分からないが、喋り始めた。
「こいつの名前は、サトル。名前はここまでしか分からなかった。他にあるのは分かるが、何故か見えなかった。次にこいつの能力だ」
俺の名前はサトルというらしい。なんともへんてこな名前の気もするし、しっくり来るような気もする。
「まずは特殊能力からだ。こいつは『高利貸』、『不朽体』、『模倣者』だ。3つも最初から持っているやつは、この世界でも遭難者でも珍しい」
なにやら物騒な名前のスキルばかりだ。そもそも、今になってだが、スキルって何なんだろうか?と思う自分もいる。
そんな俺には気にもかけず、
「続いて免疫能力だが……水中呼吸と熱耐性だな。名前の通りだ。水中でも息ができるし、ある程度の暑さなら耐えることが出来る。火の中とかな」
俺には水地獄も、火炎地獄も効かないってことだな?そう思うと、強い気がしてきた。しかし、ユニークスキルの方は全く使い方が分からない。
「悪いが、ユニークの方はどんな使い道なんだ?」
その赤い雲に質問して。
が、雲は水晶に戻ってしまったのだ。
「それについてはわしから説明しようかの……」
神父は立ち上がると、小屋の奥から古い本を持ってきた。本にかかっている埃の量を見ると、どれだけ使ってなかったのかがわかる。
「……わしにも分からんスキルはよくあってな。とくに遭難者は珍しいのが多い。そこでわしら神職は原魔導書に頼ってスキルを調べるのじゃ」
神父はグリモワールを机に置くと、本を縛っていた鎖が勝手にとれて開いた。
「高利貸……金銭及びそれに準ずる物を他者に貸した場合、それを1~10倍の任意の倍率にして返還させることが出来る。物や力でも可能」
聞くだけでも悪徳な能力ってのは分かった。
「不朽体……致命傷を受けても蘇る、朽ちることのない身体。物理攻撃はほぼ無効化できる。精神攻撃には弱い」
……いわゆる、不死身か?
「……痛覚は通称通り」
ですよね……
「模倣者、相手の発動した能力をコピー出来る。ただし、3個以上同時にはできない」
これはこれでチートな気もするが……相手が使わないと使えないので、後手に回ることになるのだろう。
「……というところじゃな。かなりレアじゃぞ、わしでも聞いたことないんじゃからな」
そう言って神父は俺の右肩をバンバン叩いた。老人のくせに、力はかなりつよい。
「あなた、見かけによらずすごいのね……」
ラフィーネは驚いたのか、ようやく口を開いた。
「精霊が見分けられないなんて、なかなかないのよ?」
そう言うと神父に礼を言った。
「本日は大変ありがとうございました。それでは。」
「いえいえ……こちらこそ珍しき御仁を拝見させて頂き……あぁ、そうじゃ。サトル殿、こいつを持っていきなされ」
神父は俺に、ペンダントの様な、真ん中に緑の石のついた物を渡してきた。
「それは精霊が入った石じゃよ。ある程度の事は答えてくれるはずじゃ。まぁ、相談役みたいなもんじゃろう。これには観察者が付与されておる。まぁ、この精霊と頭の中で会話出来る程度のスキルじゃがな」
俺は早速付けてみた。
……が、これといった反応はない。色々ペンダントをさわってみたが、なんの反応もない。
不思議に思っていると、
「……まぁ、そのうち精霊も現れるじゃろうて」
ちょうどその時、小屋のドアが開いて
「神父様、そろそろ聖堂の方へ……」
と、先ほどのシスターが神父を連れにきた。
「それでは、またお会いできれば……」
神父はシスターに連れられて、小屋を出ていった。
ラフィーネはというと、俺の方をじーっと見ている。余程スキルが珍しかったのだろうか?可愛い顔で見つめられると、こちらが気恥しい。顔をそらすと、
「サトル……行き先ないでしょ?うちで雇ってあげるわ!!」
確かに行き場はない、と言うか、この町のについても良くまだ分かっていない。
……待てよ……という事は、美少女と同じ屋根の下って事か?
それは願ってもないことだが……
「いいわね?じゃあ、私の家に行くわよ!」
そうして俺は連れていかれたのだが……家についてから唖然とした。それはなんと、この町で一番
大きな建物だったからである。
……そう、城だ。
「さぁ!着いたわよ!早速、お父様に許可を頂きに参りましょう!私の執事として!!」
……いきなりお父様ですか!?
俺……不死身といっても……死んだな……
「隠しててごめんね、私はアスタント公国の国主、ヨーザリア・アンスタンテの娘なの!」
通りで町で会う人会う人、ラフィーネを見てお辞儀したり跪付いたりしていたわけだ。
そして、遂に国主のいる扉の前まで引っ張られて来てしまったのであった……。




