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森竜討伐 ①

 



 目が覚めた。昨日の夜ご飯が美味しかったのと、森の中を歩き回った疲れか、とても良く眠れた。


 この世界に来てから、なぜか前の世界にいた時よりも、生活リズムが良くなっている気がする。前の世界で俺が何をしていたかは思い出せないのだが……


 今日は、ウルフトにも言ったように森の土を使い物にならない様に変えている、森の邪竜討伐に向かう。


 正直、痛い事がまた起こりそうだから行きたくはない。が、食べるものが無くなるのは困る。


 俺は、起き上がると外に出た。そう言えば、人魔に昇華してからは、トイレやお腹が空くことが少なくなった気がする。


 疑問に思ったのでフィアに尋ねると、


「人魔になったことによって、身体の構造が変わったのよ!さらに昇華したら、食べる必要無くなるかもね!!」


 とまぁ、こんな感じだ。


 確かに、食べなくても良いのは便利かも知れないが、食べるという楽しみが無くなるのは嫌だ。


 ……食べる必要が無くても食べることは出来るそうだが


「ところでフィアは?」

「ん?わたし?わたしは食べなくても大丈夫よ?なんたって精霊王だもの!」


 なるほど、今までのフィアは必要以上に飯を食い続けていたわけだ。フィアには食事制限をかけた方が村のためかもしれない。


「もしかして、今とてもいじわるなこと考えてない?」


 ビンゴだ。


「いや、なにも」

「ならいいけど……わたしは食べるからね?」

「はいはい」


 と言いつつ、俺とフィアは用意されていた朝食を食べ終えると、森に入るメンバーを集めた。


「えー、ウルフトから聞いてると思うが、森のドラゴンを倒しに行く」


 俺が改めて森に入る目的を告げると、彼らに緊張が走った。


 メンバーは、


 ハイオークのレイク、レイヤ


 オーガのサスケ、クノン


 そしてベオウルフのオルガス、フェンスト、最後にベオウルフの中で一番強いと言うか、フィアが言うには一番魔力を持っているフェンリル。こいつが今回のメンバーでの最強戦力だ。


「敵はかなり手強いと思うが、命を最優先に考えること。死んだらだめだ」


 俺は、彼らにそう命令した。死なれたら、後味が悪い。


 と言うか、悲しい。


 俺たちはウルフトに行くことを伝えると、村を発った。


 ハイオークは巨体で重いので歩きだが、オーガと俺はベオウルフに乗って移動する。もちろん俺はフェンリルに乗っているのだが、ベオウルフ最強のフィアが言うだけあり、他の2匹よりひと回り近く、大きい。


 今は、人型を解いて本来の獣の姿をしているが、強制的に働かせられていたときと比べると、人型はかなり人間に近い。


 なぜ俺が彼らを最初から人間と思ったのか不思議なくらいに、今の人型は違和感がないのだ。


 まぁ、フィアに言わせれば最初から魔物だということには気付いていたらしいが……


「サトル様、俺の背中はいかがですか?不快ではございませんか?」


 フェンリルが心配そうに俺に聞いてくる。もちろん不快なんかじゃない。むしろ、もふもふなので快適なくらいだ。


「大丈夫、問題ないよ」


 俺がそう返すと、安心したようにまた前を向いて進み出した。


 しばらくすると、森の中に小さな小屋が建っている場所に出た。時間はかなり経っているが、造りはかなり良い。村の建物と比べても、そのレベルの高さが良くわかる。


「この小屋はなんだ?」

「はっ、我らも存じませぬ……何しろあまり森の奥にはまいりませんので……」

「はいってみましょうよ!」


 みんな知らないらしい。


 フィアは入ろう入ろうと子供の様に主張している。


 まぁ、もしかしたら有益な情報が貰えるかもしれないし、借りに誰か住んでいるならば、ここは安全とは言い難いだろう。


「少しまてみるか」

「はっ!」

「やったー!」


 俺はフェンリルからおりると、小屋の入口の前に立った。


「すいません、どなたかいませんか?」


 扉を叩いて、声をかけたのだが、中から返事はない。


 俺が諦めて戻ろうとしたら、扉が開いた。


 しかし、誰かが開けたというわけではないらしい。勝手に開いた、と言うのが適切だろう。


 俺は中に入った。もちろんフィアも付いてきている。フェンリルには外のみんなを頼んでいる。


 中は暗かった。机の上に一つランプが置いてあるだけで、あとは灯りが何も無かった。窓も全て光が入らないようにしていた。


「誰かいませんか?」

「おーい!だれかー」


 俺とフィアがほぼ同時に声をかけたが、返事はやはりない。


 やはりなにもない、とあきらめて戻ろうと振り返ると、


「ようこそ我が屋敷へ!!」


 いきなり後ろに人が現れたのだ。


「うわっ!」

「ひゃっ!」


 二人ともめちゃくちゃびびってしまった。


「ごめんごめん、驚かせちゃった?」


 よく見ると、それは頭に耳の生えた少女であった。人間……という訳ではなさそうだ。


「お兄さん、旅人?どこいくの?わたしも行っていい?たのしみ!」


 俺が何も言ってないのに、勝手に話を作ってしまう。まためんどくさい奴にあってしまったようだ……


「旅人じゃないよ!ドラゴン倒しにいくの!」


 フィアが少女に応える。


「ドラゴン……?」

「ああ、ドラゴンだ」

「ってことは……もしかしてヴァレキュレア?」

「名前は知らないが、ここらでは邪竜と言われて恐れられ……」

「邪竜じゃないもん!キュレアはいい子だもん!」


 どうやら、彼女にとっては悪いやつじゃないらしい。しかし、俺らの村に被害が出ている限り、見過ごすわけにはいかないだろう。


「実はそいつがな、森の土に毒というかなんというか、とりあえずうちの村の食料が育たないわけで……」

「キュレアじゃないよ!キュレアはなんか自分の事を勇者とか言うやつに操られているだけだもん!」


 目に涙を溜めながら必死にドラゴンを少女は庇った。


「私もキュレアのとこにいく!わたし一人じゃ勝てなかったけど……お兄さん強そうだから私も行く!」


 どうやら断っても付いてきそうだから、仕方なく連れていくことにした。


「ところで勇者って?」

「私、10年くらい前までお城に住んでたの。そしたらね、ある日『魔王!勇者様が来たぞ!覚悟しろ!』ってそいつが現れて、私の仲間全員殺しちゃったんだよ……」

「魔王……?」

「うん、魔王!」

「誰が?」

「私が!」


 とんでもない奴を拾ってしまった。これじゃあ完全に人間の敵だ。


 ……まぁ種族は人じゃ無くなりましたけども


「いくら相手が魔王って言っても、全員殺すのはさすがに酷いな……」

「でしょ?でも私はあいつの攻撃じゃ死なないから、友達のキュレアに呪いを掛けたの。私にはキュレアに触れられない呪いを掛けて……」


 どうやら、森の真の敵は自称勇者のようだ。


「今のキュレアは自我を失ってるの……みんなを助けようとして弱ったところに呪いを掛けられちゃって……キュレアはほんとは、もっと強いの。だって龍王様の子供、世界で5体しかいない真竜種だから……私がとめないといけないんだけど……」

「わかった、とりあえずそのヴェレキュレアを止めよう。でもなんでそいつはそんな事するんだ?」

「それは……私達が魔物だからよ。別に人間襲ってたわけじゃないのよ?でも、魔物は敵だ!って……キュレアを操って土を悪くしてるのは、森を抜けた先の人間に物を作らせないため……あいつ、西から食料を持ってきて、その人達に高額で売りつけてるの」


 聞けば聞くほどその勇者とやらはクソ野郎だ。これなら、魔王の方が良い奴じゃないか。


「ねぇねぇ、あなた、もしかして魔王って悪いヤツって思ってない?」


 フィアが俺に話しかけてきた。


「ん?あぁ、違うのか?」

「当たり前よ!魔王って言っても魔物の王ってだけで、ヨーゼリアとかと変わりないのよ!?」

「そ、そうか……」


 俺の認識が良くなかったようだ。言われてみれば、俺の村の奴らも悪い魔物ではなかった。一概に魔物が悪いとは言いきれないんだろう。


「ならなんで攻撃されるんだ?」


 俺は不思議に感じたので少女に尋ねる。


「それは宗教のせいね。魔物は神の生み出した穢れだ、ってね」

「それはまためちゃくちゃな……」

「ミューラント王国にはなかったわよ!」

「ミューラント……?」


 どうやらミューラント王国を知らないらしい。


(フィア……真竜種のヴァレキュレアって知ってるの?)

(そういえば知らない……)

(もしかして、ここ、ミューラントとからかなり離れた、それも交わりの無いところなんじゃ……)

(かも……しれないわね……)


 ラフィーネたちと再会するにはかなり時間が掛かりそうだ、と改めて思い知らされる。


「ところで君の名前は?」


 彼女の名前を聞いてない事を思い出した。


「私はクレア!魔王クレアってみんな呼んでたよ!」



やっと10話!読んでくださりありがとうございます!よければこれからもぼちぼち更新しますので、覗いてくれたら嬉しいです!

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