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紅き閃光.ヴァリキュレス  作者: しまりす
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前哨戦、ヘーベル河の戦い。⑤

前哨戦、ヘーベル河の戦い。⑤



静静(しずしず)と聖堂の中へと入るキュピレスと三人の従者。


(おごそ)かなパイプオルガンの調べが鳴り響く。


(((ヴァーーーン)))


敷き詰められた赤い絨毯じゅうたんの上に礼拝のための椅子が整然と並んでいる。


中央の広い通路の先には神々しい女神エリスの像が立っていた。


キュピレスは女神エリス像の間近まで歩きひざまづき祈った。


従者たちも、主人キュピレスに倣い頭を垂れた。


パイプオルガンの響きに重なるように聖パトリシアの声が聞こえた。


『我、妹……キュピレス(戦の乙女ヴァルキリー)よ。』


『見なさい。』


『そなたの姉、パトリシアとヴォルサティアです。』


キュピレスは、その言葉に頭を上げた。


『キュピレスよ、二人の姉は喜んで貴女を迎えます。』


先ほどまで、聖壇に立っていた女神エリスの像はなく、そこには聖パトリシアの姿があった。


聖パトリシアの顔を、よくよく見ると、それは先ほどまで従者として付いてきた婦人の顔そのものだった。


聖パトリシアは、陰ながらキュピレスを見守っていたのである。


もう一人の美しい乙女を見ると、この聖堂へ案内した幼い聖衣の女の子が変容した姿だった。


手には、たわわに実った稲を握っていた。


聖パトリシアがキュピレスに語りかけた。


『我、妹よ……そなたばかりに苦労をかけます。』


『三姉妹の女神、エリス、アリス、ナリスはそれぞれの務めを果たさねばはりません。』


聖パトリシアは自分が神聖の女神エリスであることを明かした。


そして次女のヴォルサティアは生産を司る農耕の女神。


そして三女のキュピレスは戦闘の女神ヴァルキリーだと話して聞かせた。


その後、女神エリスはキュピレスが連れてきた盲目の老人を戦の際には


荷車に乗せ先頭を行かせるよう話した。


キュピレスは疑問に思い長姉、女神エリスに訊ねた。


『姉上様、この盲目の老人を矢面やおもてを進ませるのは何故でございます。』


『目の見えない老人を見殺しにはできません!』


女神エリス(聖パトリシア)はこれに答えた。


『全ては運命を司る神聖の女神、貴女の姉、この私わたくしの言葉を信じ進むのです!』


『恐れてはなりません!』


『道が有るから進むのではなく、勇気を持って進むから新たな道が開かれるのです!』


『次女のアリス(ヴォルサティア)が、貴女キュピレスがここに来る間に


エリスシオン王国より従って来た民と馬


そして近隣より貴女キュピレスを慕って来た者たちへ十分に食糧を与えました。』


『それから、貴女キュピレスの後ろに従っている口のきけない少年は私わたくしがこの修道院で預かります。』


『この少年は貴女の後継となるものです。』


『成長した暁には、貴女の強き味方となり、そして意思を継ぐ選ばれし者となるでしょう。』


『名は、引き継ぎし者ロング.ムウ』




『キュピレスよ!さぁ、行きなさい!』



『あとは、貴女の勇気と民を思う神徳に掛かっています!』


そう言うと聖パトリシアは女神エリスの像に変容し動かなくなった。


ヴォルサティアも傍らに寄り添う稲と鎌を持つ女神アリスの像となった。


キュピレスは盲目の老人を修道院の庭先にあった荷車に乗せ、もといた群集のもとへと引き返した。


隊列を整えたキュピレスは女神エリスに言われたように盲目の老人の荷車を先頭に据えた。


駄馬弓隊の世話役モーサがキュピレスに近付いて来た。


魔導師ゾロイーダーが仲間に加わっていること


彼女が帯びている剣に紅い閃光が魔導師の長、ソー.ルイにより付与された事を話した。


その後、国母メグ.メルよりの伝言を伝えた。


『国母様の、おっしゃるには、出陣に際しては尽無火矢ソアラーを夜空に向けて放てとの仰せでした。』


キュピレスは、(うなず)き無尽火矢をつがえ夜空の真上に向かい強く射放った。


(((ビューーーーーーッ)))


目映く紅い閃光を放ち矢は空高く上がった。



その後、しばらくして、その紅い閃光は大きな翼を広げた火の鳥 へと変容した。


『見よーーー!!』


『我らを戦勝へと導くフェニックスアロー!!』


魔導師ゾロイーダーたちが輪を造り両手を翳した。


すると、キュピレスに従う全ての民の上に光がさして、心の波動が最高潮となった。


【キュピレス混成軍、士気、UP!】


戦場の乙女ヴァルキリー、キュピレスの雄叫びが響く!


『いざ!へーベル河へーー!!』



『おーーーーー!!』


キュピレス混成軍の士気は天をつくばかりに高揚した!


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