暗黒魔獣軍vs聖域連合軍。
暗黒魔獣軍vs聖域連合軍。
ガシャガシャガシャ))))
カッカッカツカッカッカツ))))
ガラガラガラ)))))
擦れ合う冑や鎧の音。
騎馬隊の蹄、そして戦車輪の軋が重なる。
ラグナロクの丘を下り一路、エリスシオン城へと向かうキュピレス軍団。
付き従う兵士たちの表情が暗く、足取りが幾らか重く感じた。。。
それは兵士の中で不満を漏らす者が二人いたためである。
彼らの言動により軍団内の士気が落ち始めていたた。。。
その二人が先頭の戦車で杖をエリスシオン城の方向へ向け進軍を促す賢者ソージャに視線を送っている。
『我らには賢者ソージャ殿の考えが、まるでわからないーーっ!!』
『このまま、エリスシオン城へ進軍したら今度は俺たちが挟撃されて全滅だぞーー!!』
『そうだ、そうだ、今のうちに逃げ出した方が身のためだーー!!』
大声で軍の士気を乱す二人の兵士にキュピレスが馬上から振り向き彼らの元へ駆け出した。
カッカッカツカッカッカツ))))
キュピレスが彼らの前まで来て馬を止めた。
『進軍、止めーーー!!』
『そこの者たち前へ出よ。』
キュピレスは二人の兵士を列から外した。
進軍を止めたキュピレスの元へソージャが戦車で近付いてきた。
張り詰めた雰囲気が辺りに漂う。
『軍の士気を乱す、この者たち、許しておけぬ!』
キュピレスがティルヴィングの剣に手を掛けた。
それを見たソージャが、キュピレスの前に出て進言した。
『キュピレス姫、この者たちを、殺してはなりませぬぞ!』
キュピレスの気持ちを察してか落ち着きのない戦馬、紅き星が嘶く。
ヒヒヒヒーーーン)))
『なぜだ!……この者たちがいると軍の士気が落ちてしまう!』
ソージャが周りの兵士らに命じ、二人を縛り上げ戦車に乗せた。
『ここは、わたくしめにお任せください。』
『この者たちを、ここで成敗しても、尚更のこと士気が下がりまする。』
『わしに、妙案がございます。』
『エリスシオン城に着くまで、この件はお任せください。』
キュピレスは賢者ソージャの言葉にティルヴィングの剣から手を離した。
先頭に戻ったキュピレスは全軍に再度、激を飛ばした。
『いざ!進軍ーーー!!』
長蛇の列を成し再び動き出す軍団。
暗い雰囲気が漂う気配を察した女弓師ウィリー.アステルが
青き流星馬アンドロメダで軍の中を前後に駆け巡る。
『みんなーー!!、何暗い顔してるのよ!』
『さぁ!、元気出していこう!』
『アンドロメダは幸運の女馬よ!』
ウィリーは空へ向けて流星矢を放った。
ビューーーーーーッ》》》》》
矢は天空で8つに枝分かれして綺麗な百合の花模様をは描いた。
『女神エリスの象徴だぁ♪』
百合の花の火花が消えた後に後方から大きな金の龍が現れた。
『ご、ご、ゴールデン.ドラゴンだぁ!!
』
キュピレスの真上を行き過ぎる金の龍の足にはバルキ.シオン宰相の折れた双牙剣が握られていた。
賢者ソージャが、これを見てキュピレスに告げた。
『キュピレス姫……どうやらバスター城は落ちたようでございます。』
『我らの戻る場所はエリスシオン城しかございませんぞ!』
行き過ぎる金の龍を涙ながらに見詰めるキュピレス。
『バルキ.シオン宰相……もうこの世にはおられぬのですね。』
金の龍の出現に兵士たちの士気が再び上がった。
『金の龍が我らの軍に加わったぞ!』
『オーーーーーーッ!!』
やがて、ミネルヴァの丘が姿を現しエリスシオン城が視界に入った。
その手前には大きな大聖堂があった。
しばらく進むと一人の聖女が道に立っていた。
『進軍やめーーー!!』
キュピレスは馬を降り聖女に近付いた。
『聖パトリシア様!』
ざわめくキュピレス軍団。
『聖パトリシア様だぁ!!』
口々に声をあげる兵士たち。
聖パトリシアの後ろに控えていたラグナロクの警告者モーサが前に出た。
『この者を連れておゆきなさい。』
『この者が持つ角笛をエリスシオン城の道なりに立てられている大聖堂前で吹きならさせるのです。』
『全ては、そこから始まるでしょう。』
『人と人の戦いは終結し、暗黒にすくむ魔獣との決戦の幕開けの時です。』
聖女パトリシアは、そう告げると一陣の風に運ばれるように木枯らしとともに姿を消した。
戦列に加わった金の龍にラグナロクの警告者モーサ。
一軍は大聖堂へと、歩みを進めた。
大聖堂の前では、ハル皇子の参謀、魔術師スレンが一個軍団で構えていた。
キュピレスは賢者ソージャを使者として立てた。
ソージャが二人の縛りあけた兵士を乗せたまま戦車一台で交渉に向かった。
スレンが、これを見て一人で前に出て来た。
『賢者ソージャよ!』
『何の話だ!』
ソージャは、縛られていた兵士の縄をほどき、開放してスレンの軍へ返した。
『スレン様ともあろう、お方が、このような小細工をなさるとは……』
スレンは軽く笑いを浮かべて呟いた。
『流石、大賢者ソージャ……』
『見抜いておったか。』
『大戦を前にして、少しでも味方は多いほうが良いのではと思いましてな.……』
『スレン様も、エリスシオン城へ戻るに戻れぬご様子。』
ソージャはエリスシオン城を取り囲む黒山を杖で指し示した。
それは無数の魔物たちゴブリンや巨人オーガ、骸骨兵士スケルトンの大軍だった。
黒山に眼を移すスレン。
『お主の遠策深謀は……まさに天を突く……
このワシのような魔術師ごときが及ぶところではなかったようだ。』
ソージャがそこで口を開いた。
『古来より同じ敵を持つもの同士は共闘するのが世の常でございます。』
『我らと盟約を結ばれませ。』
『まずは、目の前の強敵を倒すが先決かと。』
スレンは頭を垂れて、暫しばらく考えを巡らし答えた。
『お主のゆうとおりじゃ……ここで、わしら両軍が戦っても、ただの消耗戦となるばかり。』
『両軍、疲弊したところを魔物たちの大軍に襲われたら、それこそ、奴等に漁夫の利を与えることになるのう。』
スレンは、クルリと向きを変え率いていた一軍に叫んだ。
『我らは、これよりキュピレス殿の軍団に降るーーー!!』
『不満が有るものは、この場で去るがよい!!
そのスレンの言葉に動揺し、ざわめく一軍。
しかし、暫くすると、ざわめきも収まった。
事の成り行きを理解した兵士たちは、去るものが一人もおらず大聖堂への道をキュピレスの一行へと開いた。
ここにキュピレスを旗頭とした聖域連合軍団が誕生した。
陣容を大きく増やした聖域連合軍は、更なる思索に出た。
大聖堂に入ったキュピレスとソージャ、そしてスレンは、これからの策を練った。
賢者ソージャが口を開いた。
『スレン殿がお味方になられたのであれば、千人力でございます。』
『迫り来る鉄騎馬隊の大軍を説き伏せて我軍団へ取り込めるようにしてくださらぬか』
『ハル皇子の信頼も厚いスレン殿の進言なら必ず傘下に入るでございましょう。』
スレンは頷き、了承の意を伝えた。
キュピレスはソージャを見て改めて大賢者の力の程を知らされた。
『ソージャ殿は、私の父の代からの重臣、敵を生かす術を心得てるとは……感服した。』
『昨日までの敵が、こうして同じ座にいるとは信じられぬこと。』
『人を殺めるばかりが戦ではないと深く知らされた。』




