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紅き閃光.ヴァリキュレス  作者: しまりす
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前哨戦、ヘーベル河の戦い。③


前哨戦、ヘーベル河の戦い。③



エリス.シオン城……城門前。


物見矢倉の上から、敵の接近を、いち早く発見すべく辺りを見回す二人の門番兵士。


背か低く、丸い体つきの、ドヴァンとヒョロヒヨロの痩せ型ドウリン。


その一人、ドウリンが、遠くの方から騒がしく笛や太鼓を奏でながら近付く一行に目を止めた。


『おい!、ドヴァンよ。』


『何じゃ、あれは?』


ドヴァンはドウリンが指差す方に目を向けた。


それはエリス.シオン城の城門へと近付く音楽隊と踊り子の列だった。


『あれは、今、都で評判の天礼巫女ヴォルヴァ歌劇団じゃ!』


『サバナ連合国との戦が明日にも始まろうとしているのに……


呑気のんきにやって来たのじゃろうか?』


ドヴァンが背中の矢を取り弓につがえた。


『城門に近付かないように儂わしが、矢で威嚇してやるぞい!』


キリキリキリ)))


弓が満月のようにしなる。


その時、ドバァンの後ろからポンと肩を叩く手あった。


『まて!』


『私が、この城に招いたのだ。』


『城門を開き歌劇団を招き入れるのだ。』


ドウリンとドヴァンは声の方を振り向くと、そこにはバルキ.シオン宰相が立っていた。


門番兵士の二人は直立不動の姿勢で敬礼した。


『バルキ.シオン宰相殿!』


『これより、歌劇団を城内へ案内いたします!』


二人の門番兵士は城門へと走り出し大きな城門を両方に開いた。


歌劇団に、手招きをして城内へと招き入れた。


一行は賑やかに、楽器を演奏し、それに合わせて踊り子達が


色鮮やかな絹の衣を翻して舞っていた。


国主サー.ラミス王は城の尖塔の半円ベランダに身をのりだし


歌踊団に大きく手を振った。


『おーい!』


『ここじゃ、ここじゃ、早よう参れー!』


城の守備兵士たちは、この様子を見て、落胆の溜め息を吐いていた。


『俺たちの馬や戦身支度いくさじたくの武具も


王様の豪遊三昧で売りに出されたらしいぞ……』


『この国の没落も、時間の問題かもな……』


『だな……はぁ。』


『しかし、どうして賢者の誉れ高いバルキ.シオン宰相が王を諌いさめるどころか……


遊興を助長するような事をなさるのやら……』


『我ら、下々の者には、全く理解ができないぜ。』


兵士達が小声で話している横をバルキ.シオン宰相が歌劇団を引率して通り過ぎた。


バルキ.シオン宰相は歌劇団を大広間へと案内した。


既に、そこにはサー.ラミス王が、今は遅しと玉座で待っていた。


『おー……来たか、来たか、待ち焦がれたぞよ!』


満面の笑みを浮かべるサー.ラミス王にバルキ.シオン宰相が徐おもむろに歌劇団を紹介した。


『王様、かねてより、ご希望の都で評判を博しております歌劇団を招きました。』


『心行くまで、存分にお楽しみにくださいませ。』


『この者たちはパルドウ大陸の都からエリス城までの長い道のりを旅して参りました。』


『これも、サー.ラミス王のご威光によるものでございます。』


『存分に、これらも者たちへ褒美を取らせては如何かと……』


サー.ラミス王はバルキ宰相の薦めに即答した。


『宝物庫の扉の鍵を宰相に預ける!』


『そなたの思うように、これらの者たちに存分に与えよ!』


バルキ.シオン宰相は深々と頭を下げてサー.ラミス王から宝物庫の鍵を受け取った。


バルキシオン宰相がサー.ラミス王に言上した。


『楽しき宴の前に、偉大なるサー.ラミス王にお願いの儀がございます。』


歌劇団が来城したことで機嫌を良くしたサー.ラミス王。


『宰相よ、何でも申せ!』


『褒美じゃ、遠慮はいらぬぞ!』


バルキ.シオン宰相はサー.ラミス王の前に、おずおずと進み出た。


『予かねてより、お話し申し上げております


神の鋼パラキオンが今だ埋蔵されたままのドラン鉱山……


その地にあるバスター城へ守備兵の半分と共に私を赴おもむかせてくださいませ。』


『敵国侵攻の押さえとして私を派遣してくださればエリス王国の安泰あんたいも磐石ばんじゃくとなりましょう!』


『決して偉大なるサー王に反心など致さぬ事をお誓いいたします!』


サー.ラミス王は、困惑し一瞬、表情を曇らせたが……しばらく考えた後、決断した。


『宰相よ!』


『お主の国を思う忠誠心は誰よりも予が心得ておる!』


『信じておるぞ!』


『行くがよい。』


『宰相にバスター城の芍棒しゃくぼうを授ける!』


サー王は侍従にバスター城の芍棒を持って来させた。


サー.ラミス王、手ずからバルキ.シオン宰相に勺棒を手渡した。


バルキ.シオン宰相は、静かに下がりサー.ラミス王に深く一礼し


バスター城へエリス.シオン本城の半分の守備兵士を引き連れ移動した。


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