バスター城、虚を突かれる~ジュワユーズの短剣、速足のルナへ渡る。
バスター城、虚を突かれる~ジュワユーズの短剣、速足のルナへ渡る。
月明かりが黒雲に隠され闇に包まれるへーベル河。
バスター城裏の非常門近くにへーベル河から静かに音もなく接近する大型黒船。
バスター城の裏門の見張り台には、居眠りをする二人の老兵士の姿。
ドウリンとドヴァンの小人妖精が鼻ちょうちんを膨らましながら鼾をか
き寝ている。
グーウ……グーウ……ムニャムニャ。
大型黒船の船上で列をなし整列する漆黒十字軍。
大型黒船から手に手に剣や槍、弓を持った兵士たちが小舟に乗り込んだ。
群れをなし水面を滑る小舟の一団。
先頭を行く舟には黒十字旗がたなびいている。
開け放たれた非常門に通ずる先の尖った格子柵が魔導師ソウ.ルーイの呪文で開かれた。
ガガガガガ…………
物音に見張り台の小人妖精の一人、ドヴァンが寝ぽけ眼で辺りを見回した。
空を飛ぶ鴉が彼の視界を遮り前を横切った。
『なんじゃ……鴉か。』
再び弓を枕に眠りにつくドヴァン。
鴉は静かに水面を行く先頭の小舟に降り立つた。
すると、たちまち黒装束の少女魔導師へと変容してゆく。
先頭の小舟が非常門に接岸し、黒いローブで顔を隠し人物が小舟から降りてきた。
これを岸で出迎える魔導師ソウ.ルーイと五人の彼の門弟。
黒いローブの人物が兵士たちに命じ大量の金(GOLD)と大麻を岸に上げた。
『流石……聞きしに勝る大策士にして魔導師の尊者。』
『これは、今回の手引きと、闇の軍団を召喚せし、そなたへの約束の報酬だ。』
『事が成就した暁には、このバスター城の主にお前を就かせるつもりでおる……』
そう語り終えたところで黒いローブの男はフードを外し顔を見せた。
魔導師ソウ.ルーイは後ろへ二.三歩さがり深く一礼し呟いた。
『漆黒の破壊騎士様の寛大さと天をも凌ぐ智恵に並ぶ者はございません……』
ハル皇子はソウ.ルーイの一番弟子、速足のルナを自分の従者として側に置いていた。
『この者は、ことさら役にたつ……いずれ黒騎士の称号を俺、自ら授けるつもりでおる。』
『今回の策も、この者の手引き無しには成し得なかった。』
『そなたを信頼できる腹心と思っておるぞ。』
ハル皇子は腰の短剣一日に三〇回彩りを変化させるというジュワユーズを速足のルナに手渡した。
ハル皇子の前に、かしずく少女魔導師ルナがこれを頭を下げ受け取った。
師のソウ.ルーイが弟子ルナの肩に手を置き語り掛けた。
『新しき主ハル皇子様を、よくよく、お護りせよ。』
※ジュワユーズの短剣〓主を死に至らしめる呪われた魔剣と伝承される。




