表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き閃光.ヴァリキュレス  作者: しまりす
19/67

龍討伐騎士(ドラゴン.スレイヤー)聖ジーク。

 


 龍討伐騎士(ドラゴン.スレイヤー)聖ジーク。




 サバナ帝国。


 王宮、帝王の間。


『アァ……気が重いぞ、スレンよ』


 ほうほうの体で本国に帰還したハル皇子。


 へーベル河の戦いで戦乙女ヴァルキリーことキュピレスの軍に惨敗を被った彼。


 父である帝王ジークへの戦果の報告のため軍師スレンを伴い目を伏せ扉を開き入った。


『父上!!』


『折角、遠征の軍を預けてくださいましたが……力、及ばず大敗となりました事、お詫びいたします!』


『再起の機会をお与えくださいませ!』


 片膝を着き、頭を下げ懇願するハル皇子に後ろに控えた軍師スレンが、小声で話し掛けた。


『皇子様……帝王様は、また、ご不在のようでございます。』


 目を上げた皇子の前には、帝王の座の横で、じゃれあう二人の姿があった。


 病弱気味で軟弱な帝国の弟、ヒヒイロ侯爵【帝位継承権、第二位】と


 妊娠のためか、お腹の大きくなった帝王の妃ザライヤであった。




 王妃ザライヤがハル皇子に気付き、ヒヒイロ侯爵の手を素早く払いのけ咳払いをした。


『コホン』


『ヒヒイロ侯爵、ハル皇子が帰国の挨拶に参ったようです。』


 ヒヒイロ侯爵は乱れた服装を整え、フラフラした足取りで、よろめきながら、帝王の座に着いた。


 傍らには葡萄酒の瓶が無造作に何本も転がっていた。


 強いアルコールの臭いが漂う中、赤ら顔でヒヒイロ侯爵が口を開いた。


『おぉー……ハル皇子、よく戻られた。』


『兄上様は、永い事、鹿狩りに出掛けておられるゆえ私が変わりに国主を努めており申す。』


『さぞ、連日の戦いでお疲れであろう……』


 ヒヒイロ侯爵は、飲み掛けの葡萄酒の瓶を、よろめきながら側近に手渡しハル皇子の元へ運ばせた。


 ハル皇子は、薄汚れた葡萄酒瓶を怪訝けげんな顔で見ていたが、取り合えず礼を述べた。


『叔父上様……あ、ありがとうございます。』


『そのように、お酒を煽るように召されておられるのは、何か祝い事でもありましたか?』


 そこで、ハル皇子の義理の母、王妃ザライヤが口を開いた。


『おお!、皇子、よくぞ、聞いてくださった。』


『実は、ヒヒイロ侯爵が私のために大きな孔雀台離宮を金銀宝石で満たし造るとお約束して下さった祝いなのです。』


『完成の折り盛大な祝賀を催す予定です、あなた方も、招待いたしますゆえ楽しみにお待ちなされ(笑)』


 ハル皇子一礼して、早々に帝王の間を出た。


『父上の長旅が、また始まったらしい……スレンよ。』


『政まっりごとを、あの二人に任せたら国はやがて疲弊し自壊しかねない。』


『父上は、すっかり国政を忘れティルナローグの民を追う冒険者になっておられる。』


 肩を落とすハル皇子に軍師スレンが呟いた。


『それゆえに、ハル皇子が一刻も早く名君主となられますよう。』


『このスレンが、ある者たちを招いております。』


『運命を変える聖なる石を持つゾロイーダーと呼ばれる魔導師でございます。』


『古来より、真の帝王のもとに聖なる石は必ず運ばれると申します。』


『そして私が、戦乙女ヴァルキリーから奪った魔剣を自らの手で、100日の間、朝と夕に聖なる石で研ぎ磨きなさいませ。』


『100日目の朝、必ずや、あなた様が、この大陸全てを統べる帝王、いや神々の王となられるでしょう。』


 ハル皇子は、魔術師スレンの言葉に驚きながらも心が高揚した。


『スレンよ、我は神々の王になれるかのう!』


 スレンは深く頷いた。



『はい。必ずや……』


 回廊ですれ違うようにウィルオーウイプス(火の魂)が帝王の間へ入って行った。


 ヒヒイロ侯爵の大きな声が帝王の間に響いた。


『何とー!』


『征服王ドモフ.ウルワッハが、制圧したタレントウムを主邑しゅゆうと定め、帝国から独立し建国したと言うのか!!』


 皇后のザライヤが呟いた。


『ウイプス』てほんと、便利だわ……』


『侯爵様、それより早く黄金と宝石の銅孔雀台をお造りになって♪』


 ………………………………………………☆



 その頃…………遠く北の空の下。



 ドラン鉱山。


 裾野の森林をかき分け鹿を追う三頭の馬。


 戦乙女ヴァルキリーことキュピレスと二人の勇者、聖法力の槍を持つロン

 ゴミアント.


 そして黄金の湾曲剣ハルパーを持つペル.セシウスの姿があった。


 雌鹿を追い、木立の中を進むと、やがて美しい小さな湖が見えて来た。


 雌鹿は、一本の榛はしばみの木の影に隠れた。


 三人は雌鹿が隠れた榛の木の前で馬を降り木の影に近付いた。


 すると、そこには霧の国の人ニーベルゲンから来た光の妖精リョース.アルバァーが


 腕を酷く傷つけている壮年の騎士を抱え起こしていた。


『女神ナリス……治癒ヒールのお力でこの湖の命の水を掬い、私の夫をお助けくださいませ。』


 キュピレスは自分が女神ナリスの転生者であることを彼女が知っていたことに驚いた。


『あなたは、いったい何者なのです?』


 光の妖精リョースが、それに答えた。


『私は霧の国の人、ニーベルゲンのものです。』


『そして、この私の夫は、この世に転生した龍討伐騎士ドラゴンスレイヤー聖ジーク様です。』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ