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紅き閃光.ヴァリキュレス  作者: しまりす
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角笛響くラグナロク。へーベル河の戦い。⑨

 角笛響く、ラグナロク。へーベル河の戦い。⑨



(((ブォーーーーーーッ)))


 小高い丘の上に立つキュピレスの腹心モーサが戦場となったラグナロクに角笛を響き渡らせた。


 ハル皇子の本陣天幕にも、その地を()うような角笛の音が木霊(こだま)となって届いた。


 戦場が見渡せる櫓の上に軍師スレンと共に昇り音がする方へ目を向けるハル皇子。


『何だ?』


『もう戦は始まっておるというのに、開戦の合図とは、やはり農民を集めた烏合の衆であるのう。』


『そうは思わぬか、スレンよ。』


 ハル皇子は笑いながら参謀のスレンに語りかけた。


(おそ)れながらハル皇子には、あの丘にたつ人物がどの様に目に映って見えておられますかな…』


 軍師スレンは(いぶか)しげにハル皇子の方を見て訊ねた。


『見たところ、あの格好からして、ただの農民兵であろう。』


 ハル皇子は即答した。


 賢者の呼び声も高い軍師スレンは、少し咳き込んだ後ゆっくりとした口調で言葉を続けた。


『あれは……角笛を持つ警告者』


『神々の黄昏を告げるヘイムダムでございます。』


 ハル皇子は笑いながら軍師スレンを視線を移した。


『それは、幼子が信じておる、お伽噺(とぎ)話しであろう。』


『スレンよ……耄碌(もうろく)するには、まだ早かろう…少し休むがよいぞ。』


 その時、櫓の下に足早に鉄騎馬隊の伝令が来た。


『伝令!』


『鉄騎馬隊の同盟軍、ルシュフェンドルフ隊が戦列を離れ逃亡中!』


【ハル皇子軍団、鉄騎馬隊〓四千から二千にdown↓】


 ハル皇子は、その知らせに怒りが心頭に達した。


『同盟国、リシュフエンドルフの恭順は、見せ掛けであったのか!』


『剣兵隊を、一旦撤退させよ!』


『兵を再編成し工兵としてイカダ作りを急がせよ!』


 軍師スレンがハル皇子に訊ねた。


『イカダを組んでなんとなさいます?』


 ハル皇子は自慢げに答えた。


『知れたこと!』


『橋が通れぬならば人も馬もイカダに乗せ対岸に渡すのだ!』


 軍師スレンがハル皇子の前に慌てて身を乗りだし諫言した。


『ハル皇子……お止めください。』


『何も知らぬ子ウサギが、みすみす自ら罠にはまりに動くようなものでございます。』


 ハル皇子はムッとした表情で苛立ち気味に言葉を返した。


『我を子ウサギと申すか、スレンよ。』


『臆病風に吹かれて動きの取れぬ古きつねよりは、よっほどましであろう!』


『伝令せよー!』


『剣兵を撤退!』


『イカダ作りを急がせよ!』


 ラグナロク橋に殺到していた剣兵隊は伝令を受け全軍撤退を始めた。


 やがて、工兵として陣容を変えた剣兵隊は伐採した丸太でイカダ作りを始めた。



 次々に出来上がってゆくイカダ船。


 へーベル河を挟み遠くの対岸、キュピレス陣営では、この様子を魔導師の七人セブン.ゾロイーダーの長ソー.ルイが眺めていた。


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