開戦!』へーベル河の戦い。⑧
開戦!』へーベル河の戦い。⑧
戦場を駆ける紅き星と称されるルージュスターの馬上で、剣を抜き放ち声高に叫ぶキュピレス。
『私は、誓い(ゲッシュ)を立てた!!』
【天が落ち、我を押し潰さぬ限り、我が誓い破ることなしーーー!!】
駆け抜ける彼女を羨望の目で見る混成軍の間から歓喜の声が上がる。
荷車に乗せられ先頭を行く盲目の老人が群衆のざわめきに呼応するように叫んだ。
『我らが救済者!』
『降臨せし女神ナリスの化身、ヴァルキュレスに栄光あれーーー!!』
老人の一声に群衆の、あちらこちらから歓喜の声が上がる。
『ヴァルキュレスーーー!!』
『ヴァルキュレスーーー!!』
【キュピレス混成軍.士気上昇、】
老人の乗せた荷車がラグナロクの石橋中央までモーサにより運ばれた。
キュピレスも紅き星ルージュスターでラグナロク橋の中央まで駆け抜けた。
対岸で長蛇の列から横陣形へと隊列を整えるハル皇子軍団。
ハル皇子の軍師スレンがラグナロク大橋の中央に置かれた荷車に乗った老人に目を止め叫んだ。
『あれは……まさか!?』
魔術師でもあるスレンは目を凝らして橋の中央にいる盲目の老人を見た。
その後、おもむろに傍らで指揮を執るハル皇子に語りかけた。
『ハル皇子.....』
『この戦、我が方に勝ち目はありませぬぞ。』
『一旦、軍をお引きになり戦況をしばらく見守るのがよろしいかと...』
ハル皇子は軍師スレンの方を睨み強い調子で怒鳴った。
『スレンよ、ここに来て、臆病風に吹かれたか!』
『お前ほどの賢者が、いかがしたのだ?』
『歳は取りたくないものだ!』
『弱腰になっておるぞ!』
『我が方は敵の2倍の軍勢であるぞ!』
『何を恐れることがある!』
『長弓隊、前へーーーーーーー!!』
軍師スレンが戦士バルドランに命じ橋の死角になっている川床へ向かうよう指図した。
『バルドランよ!、お前の大斧に氷結の魔術を付与しておいた!』
『何か異変が有るときは、持ち前の剛力で獅子奮迅するがよい!』
【戦士バルドラン、スキルUP→氷結】
魔術師スレンはラグナロク大橋の中程で紅き星に騎乗するヴァルキリーの
キュピレスが伝説の救済者、戦いの女神ナリスの地上における化身ヴァルキュレスであるとハル皇子に伝えた。
『あの者は女神ナリスが地上に転生した姿でございます。』
『その証拠は、あの荷馬車でございます。』
ハル皇子は荷馬車に視線を移して、大声で笑い声を上げた。
(((わははは)))
『ただの目の見えぬ老人ではないか?』
『あやつらは、我等の軍団を見て恐れをなし、あのような、小細工をしておるのだ!』
軍師スレンは言葉を続けた。
『ハル皇子……あれは老人ではございません。』
『運命の石【ペンタクルの聖石】でござます。』
軍師スレンの言葉は既にハル皇子の心には届かず耳を貸さなかった。
『長弓隊ー!』
『雨霰の如く、弓を敵の頭上に降らせよーー!!』
これを見た駄馬弓隊がキュピレスに追い付き弓をつがえ彼女の合図を待った。
『いざーー!!』
『開戦!!』
キュピレスは無尽火矢ソアラーをハル皇子軍団の最前列長弓隊目掛けて放った。
(((ゴォォォーーーーッ)))
火矢は、みるみるうちに、巨大な火の鳥フェニックスアローとなり、長弓隊を天から覆うほどの翼を広げ羽ばたいた。
ハル皇子軍団の長弓隊が火の鳥フェニックスアローに嵐の如く矢を放った。
しかし、その矢は事如く空で焼き尽くされた。
キュピレスの駄馬弓隊が応戦し矢が尽きた長弓隊へ嵐の如く矢を放った。
たまらず、長弓隊は陣形を崩し後退した。
『ええぃーー!!』
『何をてこづっておる!!』
ハル皇子の指示が軽装備.剣兵隊に飛んだ。
『剣兵隊!』
『橋を渡り、敵陣に突撃ーーー!!』
『あやつらを粉砕し殲滅せよーー!!』
軽装備.剣兵隊五千が時の声を上げ突撃を開始した。
『オーーーーッ!!』
突撃する剣兵士隊は橋の途中に置かれた荷車の脇を通る度に川床へ吹き飛ばされた。
軍師スレンが叫んだ。
『ハル皇子!、結界が張られておりますー!』
『軍をお引き下されー!』
『このまま軍を進めますと全滅いたします!』
軍師スレンはもはや自分の声はハル皇子の耳に届かぬ事を悟った。
剣を振りかざし叫ぶハル皇子。
『行けーー!!』
『行けーー!!』
『一歩も引いてはならんぞーー!!』
これを見た魔導師ソー.ルイが魔術で川床に迂回路を拵えた。
キュピレスと駄馬弓隊二百は一旦、ラグナロク橋を引き返し
川床にできた敵軍の死角にあたる迂回路へと回った。
しかし、ハル皇子の軍師、スレンの工作により対岸へ続く迂回路には
既に戦士バルドランと騎馬に強さを発揮する槍兵士隊か待機していた。
魔導師ソー.ルイはハル皇子に魔術師が付いていることを悟った。
ソー.ルイは早足の女魔導師、ラナに命じ
魔術師の策に注意するようキュピレスへの伝言を託した。
早足の女魔導師、ラナは、まるで羽が生えたかのようで、さながら野を駆けるウルフハウンドの如く風を切って走った。




