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お読みいただきありがとうございます。

 画面が切り替わり、おなじみの祠と白い炎が映されたのを見て、シンリは心にぽっかり穴が空いてしまったような感覚を感じていた。

 ソーシャルゲームで一生懸命貯めた課金アイテムを一気に使ってしまう時に感じるものに似ている。というか、まんまそれだった。


 命が懸かっているというのに、ゲーム感覚でいる自分にシンリは苦笑いした。

 白い炎は祠に飲み込まれていく。


(頼む……っ)


 祠が虹色に輝いた。シンリの言うところの確定演出である。

 そして取得したスキルが順に表示されていく。


 【偽装 Lv.2】

 【影踏み Lv.1】

 【空中歩行 Lv.1】


(いや、うん。まだ三つまだ三つ。いけるいける)


 経験則上、レベル3以上はないと使い物にならないということが分かっているため、これには苦い顔をせざるを得なかった。


 【剣術 Lv.3】

 【敏捷 Lv.4】

 【吸収 Lv.1】


(……い、いや、まだ確定演出のスキル出てねえし……)


 【結界術 Lv.6】

 【鑑定 Lv.7】

 【従命 Lv.7】

 【探査 Lv.6】


(ここに来て被りとか要らないから!でも、これは……こうも明らかに高レベルが続いたのなら……いける、か?)


 残るスキルはあと一つ。確定演出がレベル10で取得できるというのであれば、このスキルによってシンリの運命は左右されることとなるだろう。


 そして、シンリにはある種の確信があった。

 初めの六つ、言い方は悪いがレベルが低くて使えないものばかりなのに対して、次の四つはレベルも高く、シンリ自身もよく使っていたスキルが混ざっている。

 明らかに、後半に良いものが固まっているのだ。


(やっぱ、最後まで残ってたのは間違いじゃなかった)


 《称号》【最終者】。

 後の方になればなるほど良いことが起こるという効果を持つ称号だ。

 であるならば、運が左右するガチャという事象において。それも単発ではなく最初と最後がはっきりしている11連という事象において。この称号、【最終者】は最大の効力を発揮することができるだろう。

  シンリはそう確信していた。


(さあ……来いっ!)


 最後のスキルが表示される。


 【召喚 Lv.10】


 シンリは、笑った。


(目には目を、歯には歯を、そして魔物には魔物をってことかよ。【最終者】が引いたスキルだ。めっちゃくちゃ強い魔物を召喚してやんよ)


 スキル詳細を見るまでもなく、数々のマンガやアニメなどでその効果を知っているシンリはそう思った。


(……というか、最初からこうしとけば良かったな)


 大体が魔力を使って発動する《スキル》に対して凶悪的な効果をもたらすスキルを持っていたことを今の今まで忘れていた。


 【破魔】、発動。

 しかし 【破魔】 は こうか を あらわさなかった !!


 レベルが低い故である。確率で発動するスキルは低レベルではほとんど発動しないのだろう。

 魔力を無駄に消費しただけだった。

 だがその消費量も、常に魔力を使い続けて【魔力】のスキルが異常に成長しているシンリにとって微々たるもの。


(ま、初めから成功するとか思ってなかったし……。【破魔】【破魔】【破魔】【破魔】【破魔】【破魔】ァ!!)


 確率で発動するのであれば、何度でも発動させればいい。

 その過程で成人男性三人分もの魔力を消費したが、【破魔】によって【アースクウェイク】は無効化された。

 余震はあるものの、徐々に揺れは収まってゆく。


(スキルを打ち消すとか俺ってば何ジンブレイカー?あ、ヤバイ。そろそろ息がヤバイ)


 土の中は息がしにくく、そろそろ限界だった。


 【生命感知】でウッドゴーレムの居場所を確かめつつ……まあ場所は変わっておらず真上だったわけだが、穴をウッドゴーレムの離れた場所に掘り進めて地上に出た。


 ぷは、と新鮮な空気を肺に取り込みながら眼前にいるウッドゴーレムを見据える。

 ウッドゴーレムは先程の状態から動いておらず、シンリが地面から顔を出したことも気付いていないようだ。


(いや、そんな訳ないか)


 自分の都合の良い方向に考えていたことに気が付いて、シンリは否定した。

 【アースクウェイク】を打ち消したのはシンリなのだ。ウッドゴーレムが『シンリは死んだ』と考えてくれているはずがない。


 おそらく、気付いていないことを良いことに背後から攻撃したり、背を向けて逃げようとした瞬間に襲い掛かってくる算段なのだろう。

 ウッドゴーレムにそんな知能があるのかなど、甚だ疑問ではあるが。


(ゴーレムとか心を持たないロボットってイメージなんだけど……でもあのバグったスキル編成とか見て、普通に考えちゃダメだよな。いやこの世界の魔物が全部あんなんならもう無理ゲーだけど)


 そう考えてしまうと、どう動いても間違いな気がして、シンリは動けなくなった。


 だがこのままの膠着状態が続いても何も変わらないと考え、先制攻撃を仕掛けることにした。


 イメージするのはよく見る幾何学模様の魔法陣。

 何も無い虚空から魔物が飛び出してくる想像をした。


「ーー来い、【召喚】ッ!!」


 空中に魔法陣のようなものが描かれる。

 その魔法陣から勢いよくナニカが飛び出してウッドゴーレム目掛けて飛んでいった。

 シンリがイメージした通りだ。

 ナニカはウッドゴーレムに突き刺さった。それでようやくシンリは何が【召喚】で呼び出されたのかを視認する。


「……って木刀じゃねえか!!」


 落としてどこに行ったのか分からなかった木刀が魔法陣から出てきたのだ。


「くそっ!どういうことだよ!」


 シンリが攻撃したことによって動き出したウッドゴーレムに注意しながらもステフォでスキルを確認する。


 【召喚】:一定範囲内にある自身の所有物を喚び出す。レベルに応じて喚び出せる範囲が変わる。


「使えねぇぇえええ!!何か使えそうなヤツは……っ!?」


 まだ確認していない《称号》と《スキル》を順に見ていく。


ーーー


《称号》


【災魔】:個体で生態系を狂わせた魔物に贈られる称号。全ての生物に恐れられる。


【害獣駆除】:自身の種族に害となる獣を一定数絶命させた者に贈られる称号。獣に嫌われるようになる。


【魔人】:一定量以上の魔力を持ち、一定数以上の生物を絶命させた魔物に贈られる称号。魔力が増え、人の姿になることができる。自身より下位に属する魔物を操ることができる。


【賢者】:自身の種族の平均魔力量よりも十倍以上魔力が多い者に贈られる称号。魔力が増え、消費魔力量が減る。


《スキル》


【生命感知】:一定範囲内の生物を感知することができる。レベルに応じて範囲が変わる。


【キラー:獣】:獣へのダメージが大きくなる。レベルに応じてダメージが変化する。


【人化】:人間の姿になることができる。レベルに応じて時間が変化する。


【従命】:自身より下位に属する生物を従わせる。レベルに応じて操れる生物の属位が変化する。


【魔力効率化】:消費魔力量を減らす。レベルに応じて消費魔力量が変化する。


【偽装】:自身を偽り他人を騙す。レベルに応じて精度が変化する。


【影踏み】:影を踏むことで様々な現象を起こす。レベルに応じて起こせる現象の種類が変化する。


【空中歩行】:空中で歩くことができる。レベルに応じて歩ける歩数が変化する。


【剣術】:剣を扱うことができる。レベルに応じて精度が変化する。


【敏捷】:素早く動くことができる。レベルに応じて速度が変化する。


【吸収】:対象に触れることで任意の物を吸い取ることができる。レベルに応じて吸い取れる物と吸収量が変化する。


【結界術】:衝撃を吸収する結界を張ることができる。レベルに応じて結界の強度が変化する。


ーーー


「いけるかこれ!?大丈夫かこれ!?レベルが低いのは論外として使えそうなの【従命】か【結界術】くらいしかねえぞ!?しかも【従命】に至っては絶対に効かねえだろ!ボスモンスターをテイムするようなレベルだろおい!」


 叫びながらも、ウッドゴーレムが放ってきた【風魔法】のカマイタチのようなものを早速【結界術】を使ってみて防ぐ。


「【結界術】は当たりだなってここで死んだら当たりもハズレも関係ないんだが……どうする……?」


 【結界術】で防ぎいだり、【毒霧】で目くらましをしたりで、ウッドゴーレムの攻撃をなんとかかわしながら考える。


 だが。

 一歩間違えれば死ぬ、という状況なために必死に動いているが、そもそもシンリの身体は随分前から限界に近い。

 ただでさえ心身共に疲れ切っていたところにこの生死を賭けた戦いだ。今なお立っていることすら一種の奇跡に近い。


「あ、……」


 ーーミスった。


 集中力が一瞬切れて、【毒霧】が間に合わなかった。

 ウッドゴーレムの太い腕は的確にシンリを捉えて近付いてくる。

 巨大な岩が迫ってくるような景色が、シンリにはとてもゆっくりに見えた。

 こんなものに殴られてしまえば死んでしまうことは明白なのに、なぜか恐怖とか、そういうものは一切感じずに、まばたきすらすることなく迫り来る腕をぼんやりと眺めていた。


 でも、最後の抵抗として。

 一言。


「止まれ」


 【従命】として魔力の籠った声が口から出た。

 期待なんてしていない。希望なんて抱いていない。

 はずだったのに。


「は、ははは……こんなん、アリなんだ……」


 ウッドゴーレムの腕はシンリの鼻先で止められていた。

 シンリはその場にヘタり込みながら最後に言った。


「死ね」


 ウッドゴーレムは自身の顔に自身の拳をめり込ませて、絶命した。


 なんともあっけない幕切れで、シンリとウッドゴーレムの戦いは幕を閉じた。

シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】【生還者】

【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】

【苦行者】【災魔】【害獣駆除】

【魔人】【賢者】


《スキル》

【毒霧 Lv.7】【観察眼 Lv.4】【魔力操作Ⅱ Lv.5】

【回復術 Lv7】【ヒール Lv.10】【活性化 Lv.5】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.4】【毒無効 Lv.5】

【猛毒耐性 Lv.7】【衰弱無効 Lv.3】【麻痺無効 Lv.1】

【状態異常耐性 Lv.7】【魔力Ⅲ Lv.4】【災厄の予兆 Lv.4】

【キラー:虫 Lv.10】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.6】

【呪毒耐性 Lv.5】【睡眠耐性 Lv.5】【苦痛耐性 Lv.7】

【痛覚耐性 Lv.8】【飢餓耐性 Lv.4】【探査 Lv.6】

【鑑定 Lv.7】【収納術 Lv.10】【破魔 Lv.4】

【直感 Lv.7】【腐蝕耐性 Lv.4】【生命感知 Lv.1】

【キラー:獣 Lv.6】【人化 Lv.-】【従命 Lv7】

【魔力効率化 Lv.5】【偽装 Lv.2】【影踏み Lv.1】

【空中歩行 Lv.1】【剣術 Lv.3】【敏捷 Lv.4】

【吸収 Lv.1】【結界術 Lv.6】【召喚 Lv.10】



スキルポイント:8


ーーー




一応、毎日更新を目指しておりますが、たまに空くことがあると思います。二日以上空かないようにはしたいです。

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