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ブックマークありがとうございます。

頑張ります。

「あ、まだガチャは引いてなかったな」


 【鑑定】の残念さに気落ちしてとぼとぼ歩いていたシンリはそれを思い出してステフォをポケットの中から取り出すが、ふと顔を上げた。


「なにか、聞こえる……?」


 目を閉じて耳に神経を集中させて、僅かな音さえも聞き逃すまいとする。

 するとやはり、ほんの少しではあるが、さぁぁぁという涼しげな音が聞こえてきた。


「もしかして……っ」


 もうほとんど意地と気力と【活性化】の力だけで歩いていたシンリは今までの疲労を忘れたように音のする方へ駆けていった。


 道とは呼べない茂みの中をショートカットして、拓けた場所に出ると、シンリの思っていた通り川が流れていた。

 澄んだ水が太陽の光を反射してきらきらと輝いているのを見るとなんだか心が洗われた気がした。


 シンリが来たことで少し離れたところで水を飲んでいた鹿のような動物が逃げていったが、別に気にしない。むしろこれが飲めることが分かってよかったと思った。


「うし!」


 そうと決まれば迷うことはなく、シンリは頭から川に突っ込んだ。ひんやりというか、予想以上に冷たい水に一瞬息が詰まったが、次第に気持ちよさに変わってゆく。

 誤魔化せない空腹を埋めるためにこれでもかというくらいに水をん飲んだ。


「超生き返る!水をこんなにうまいって感じたのいつ以来っけかな。水道水とい〇はすを飲み比べした時くらい?」


 そんなことどうでもいいか、とまた水を飲んだ。


 ついでに、今まで気にしないよう努めていた汚れも落とすことにする。

 乾いた血でカピカピの制服も下着も全て脱ぎさり、手洗いで血を落としはじめた。


 ちなみに、誰も見ていないとはいえ屋外で全裸になることに抵抗があるシンリは毒を纏ってローブを着ているように肌を隠していた。


 服を洗ったといっても、乾いていないのにそのまま着ようとは思えない。幸いこの場所は先程まで歩いていたところのように木々が太陽の光を遮っている訳では無いので気長に乾くのを待つことにした。


 本来ならば早く人里におりて食べ物でも恵んで欲しいところではある。しかしシンリはこの川辺でとあるものを発見した。発見できたのは【観察眼】のおかげだろう。


「で、問題はこの魚をどう捕まえるか、だな」


 そう、魚だ。食料だ。

 森の近くに村や町があるか分からない以上、ここで食料を得るという考えに間違いはないだろう。もしここで何も食べることが出来ずに、村や町も近くに無いとしたら、次にいつ食料に巡り会えるか分からない。ここで魚を捕まえて喰らうのが最良の選択なのだ。

 と、自分を納得させるためにシンリは色々心の中で建前を言ってみたが、結局のところ今すぐ何かを食べたいだけであった。水で腹を満たしたため、余計に空腹を意識してしまい、欲が出てしまったのだ。


「スキルポイントは10あるし、ガチャは後回しにしてまずは【釣り】のスキルを……」


 【釣り】スキルを取得しようと指を伸ばすが、迷いが生じて手を止める。


「……釣竿がねえじゃん。それに俺、魚を捌くとかやったことねえし刃物とかも無いと言うね。危なかった。無駄に1ポイント使うとこだったじゃねえの」


 【釣り】をやめて他にいいものがないかと探してみる。


「だからといって他に何を取ればいいのか分からないではあるが……」


 【観察眼】に任せて高速でスクロールしていると、ピタリと指を止めた。

 目に付いたのは【収納術】。一見魚を捕まえるのにはなんの意味も無さそうに見えるが【観察眼】を信じるのであれば無関係では無いのだろう。


「いやでも低レベルのスキルとか信じらんないんだけど。【鑑定】とか【鑑定】とか【鑑定】とか……。【観察眼】は今……レベル4か。微妙だな。まあどうせガチャは一回しか引けなくなるんだし、残りの4ポイントで考えればいいか」


 なんて気持ちで【収納術】を取得した。

 ピロンと通知音がして、画面に文章が表示される。


『スキルポイントによるスキル取得数が10に達しました』

『チュートリアルを終了します』

『チュートリアルクリアボーナスとしてスキルポイントが10配布されます』

『いくつかの機能が解放されました』

『引き続き異世界をお楽しみください』


「……え?」


 目をこすってステフォの画面を見てみる。

 ……無い。 

 もう一度目をこすってステフォの画面を見てみる。

 ……無い。


「す、スキル欄が無い……だと……っ!?」


 どれだけ探してもステフォにはスキル欄が表示されない。表示されないということはスキルポイントでスキルを取得することができないということを意味していた。

 つまり、魚を捕まえるための【釣り】などのスキルは簡単には取得できないということだ。


「チュートリアルとか……チュートリアルクリアボーナスでスキルポイント配布とか……もう、もう、もうっ!」


 シンリはステフォを思い切り振りかぶって投げながら叫んだ。


「まんっまゲームじゃねえかよおおおおおおおおお!!!」


 シンリは、『ステフォって投げても戻ってくるんだろ?』的な考えでステフォをぶん投げたが、距離の問題か転送されてくるほど離れていなかったらしく、しぶしぶ自分で取りに行った。


「……そういうのは最初から書いとくか言えよ。エセガワニセガワガセガワめ。いや質問したらなんでも答えたんだろうけどさ。10個までって知ってたら俺だってもう少し真剣に選んでたし……ていうか10個も取ってたっけ?」


 【回復術】【ヒール】【活性化】

 【調薬】【痛み分け】【毒耐性】

 【飢餓耐性】【探査】【鑑定】

 【収納術】。

 きっかり10個。


「10個、か。うーん。【調薬】と【痛み分け】は使ってないけど焦りながら取ったものだし、【飢餓耐性】【探査】【鑑定】は自分で決めて取って、他のは必要だし……。【収納術】以外は10個って知ってても取った気がするな。で、結局【収納術】ってどんな効果なんだ?」


ーーー


【収納術】:アイテムボックスの容量が増加する。レベルに応じて増加量が変化。


ーーー


「ああ。330kgになってるってことは1.1倍か。別に悪くは無いんだけどさぁ」


 なんだかなぁ、と言いながら『解放された』という機能を確かめていく。


 『チャット』というものがあった。1度でも接触したクラスメイトと文章で会話できるというものらしい。


 『グループチャット』というものがあった。クラスメイトが自由に書き込みできるらしい。既に何かが書き込まれていた。

 シンリは『グループチャット』を覗いて見た。


 一番最初の文章はこう書かれていた。


『noを選んでも結局異世界に連れてこられた件について』


 それからもしかしたら千にも及ぶ文章が書かれていた。

 シンリはほとんど飛ばしながら読んでいたが、【観察眼】で読めるところは読んでいた。


『これ読んでる人には意味無いけど、スキル選び要注意な。あの瀬川許さん』

『既読つかねー』

『この文章は削除されました』

『なんでやねん(笑)』

『既読とか』

『この文章は削除されました』

『この文章は削除されました』

『この文章は削除されました』

『かよ!って全部ダメなんかい!』

『今5歳なんだけど、他に誰かno選んだ人いないの?』

『この文章は削除されました』

『あ、自分の元の名前言うのダメっぽい』

『この文章は削除されました』

『この文章は削除されました』

『この文章は削除されました』

『瀬川』

『これは言えるんかい!』

『(笑)』

『他の人の名前もNGっぽいね』

『この人生マジぬる過ぎて俺TUEEEEしてる件について』

『神童とか麒麟児とか持ち上げ過ぎ(笑)』

『妹産まれました!シスコンになっちゃうぜ☆』

『退屈』

『生まれ変わってもやっぱり面白くないね。人生ってのが面白くないんだよ』


 noを選んだ生徒の独白は段々と陰鬱になって途中で切れていたのでシンリは読み飛ばした。

 最新のを見てみれば、転移したクラスメイトたちの書き込みがあった。


『マジか。no選んだら転生出来るとか俺も知ってたらそうしたのに!』

『スキル熟考して選んだ俺大勝利』

『スライムと山で暮らしてるんだけど何か質問ある?』

『私今本を読んで色々調べてるんだけど、スライムって種類問わず自分より小さいものを捕食するらしいから気を付けてね』

『山ってことは人と出会ってないってことか?文字とか言語とかスキル無いと分からねえぞ』

『え?そマ?』


「え?」


 なんとなく他人事で読み流していたシンリだが、その書き込みを見て固まった。

 スキルが無いと人と会話できないということは、人里におりても意思疎通ができないからだ。


 どうしよう、そんな不安は次の文章で解消した。


『それガセ』

『だよね!私取ってないのに話せてる!?とか思っちゃった!』


「死ねよこいつ。あ、死ねとか言っちゃった」


 今もリアルタイムで更新されているが、そろそろ魚を捕まえるために行動しないといけないので『グループチャット』の通知を切った。


「とりあえず19ポイントあるわけだし、魚をとるための便利スキルと捌くための刃物が出ることを祈って……さあ来い!」


 まずはスキルガチャを回した。確定演出などなく普通に出てきたスキルは【鑑定 Lv.5】。被っていたがレベル5なためプラス1ポイントで残りポイントは15になった。


「レベルが5を超えてなかったらまたステフォを投げるところだったな」


 キリのいい数字になったため、気持ち的に嬉しくなったシンリは二回目のスキルガチャにトライする。


【破魔 Lv.2】:魔力現象を確率で無効化する。レベルに応じて確率が上昇。


「お、いいなこれカッコイイ。……いや、いいか?確率って無効化できないこともあるってことだろ?レベルが低い内は期待出来そうにないのに使わないとレベルは上がらないわけで。使えるようになるまで魔法とかめちゃくちゃ喰らわないのいけないんじゃね?」


 微妙に微妙過ぎる微妙スキルをとりあえず当たりだと思い込んだ。あと二回武器に費やすかもう一度だけスキルを引くか迷う。

 迷った結果、やっぱり強いスキルが欲しいのでスキルを引くことにした。


「デスティニードロー!」


 確定演出は無かったが、スキルの確定演出はレベルの高低だと知っているのでそこまでがっかりしない。祠に吸い込まれた白い炎を見つめながら、取得したスキルはーー


【直感 Lv.4】:勘が冴え渡る。レベルに応じて精度が変わる。


「ポーンときた。今すぐに武器ガチャを引くべきだと!」


 直感に、いや【直感】にしたがって武器ガチャの画面にいきガチャを引く。


 白い炎が祠に吸い込まれ、そこで虹色に輝いた。

 シンリのいうところの確定演出だ。


「キタコレ!直感キタコレ!」


 前回の武器ガチャでは見ることができなかったが、いきなり空中が光りだし、その中から刀のようなシルエットが見えた。

 シンリは躊躇なく光の中へ手を伸ばし、柄の部分を掴む。


 光が消えて、シンリの手の中にある武器が姿を見せた。


 その武器は1mほどの長さで、重さは1kg程度。シンリの手のひらから伝わる触感では、すべすべしていた。黒に茶色が混ざったような色合いで、太陽の光を鈍く反射していた。

 これをシンリはどこかで見たことがあった。

 そう、それは中学生の時の修学旅行。


「ただの木刀じゃねえか!修学旅行のお土産かよ!」


 ステフォと同じように力いっぱい木刀を地面に叩きつけると、木刀は真ん中あたりでポッキリと折れた。

 それを見てシンリの心もポッキリと折れてしまった気がした。

シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】【生還者】

【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】

【苦行者】


《スキル》

【毒霧 Lv.6】【観察眼 Lv.4】【魔力操作 Lv.8】

【回復術 Lv.5】【ヒール Lv.8】【活性化 Lv.4】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.1】【毒無効 Lv.4】

【猛毒耐性 Lv.6】【衰弱無効 Lv.1】【麻痺耐性 Lv.9】

【状態異常耐性 Lv.4】【魔力Ⅱ Lv.2】【災厄の予兆 Lv.1】

【キラー:虫 Lv.5】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.3】

【呪毒耐性 Lv.3】【睡眠耐性 Lv.4】【苦痛耐性 Lv.3】

【痛覚耐性 Lv.3】【飢餓耐性 Lv.2】【探査 Lv.1】

【鑑定 Lv.5】【収納術 Lv.1】【破魔 Lv.2】

【直感 Lv.4】


スキルポイント:0

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