表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/124

-4-

ブックマークありがとうございます。

「まったく……まったくだ。まったくとしか言いようがない。……あれ、まったくってこんな使い方であってたっけか?」


 実は見知らぬ土地で独りぼっちという状況に無意識に寂しさを覚えているシンリは独り言が多くなっているが、自分ではそのことに気が付いていない。


 気絶している間に少しではあるが気力が戻り、気分も幾分か良くなったため、今は立ち上がって、地面に刺さっている金色に輝く剣の前で腕を組んでいた。


「どんなに力を入れても抜けないとはこれいかに。単に筋力的な問題なのか、それともこの剣がエクスカリバー的な選ばれし者専用なのか……いやもし後者だったらそんなもんガチャに入れんなってキレるけど」


 意識が回復してから十分くらい剣に対して引っ張ったり蹴ったりしてみたがうんともすんとも言わない。


「ダメだ。全っ然動かねえ。あ、そういやステフォに装備とか収納出来るとか言ってたな。じゃ、収納」


 シンリはステフォを操作して金色に輝く剣を収納しようとした。


『容量が不足しています』


「なんでだよ!おかしいだろ!何っ一つ入ってねえぞこん中!」


 あまりの理不尽さにステフォを思い切り地面に叩きつける。

 バウンドして跳ね返ったステフォがシンリの足に当たり、しばらく悶絶していた。


 ステフォを弄ってヘルプのような項目を見てみると、どうやら道具の種類ではなく重量で決まるらしい。

 初期容量は50kg。ちなみに拡張することができ、スキルポイントを1消費すると10kg増えるらしい。


『拡張しますか』

《yes/no》


「何度も言うけどゲームかよ。ボックスの拡張じゃねえんだぞ」


 なんて言いつつもシンリは迷わずyesを押した。


『容量が不足しています』

『拡張しますか』

《yes/no》


「まあたった10kg増えたくらいで収納出来るとは思ってなかったけどな。100kg……スキルポイント10までなら許容する」


『容量が不足しています』

『容量が不足しています』

『容量が不足しています』


「す、既に20ポイントも使っているだと……っ!?」


 シンリのステフォのアイテムボックス容量は現在250kg。にもかかわらず金色に輝く剣を収納することは未だに出来ていない。


「こ、ここまで来て引き下がれるわけねえだろ!yes!yes!yes!!」


『スキルポイントが不足しています』

『容量が不足しています』


「馬鹿な……いや、嘘だろ……?嘘と言ってくれよ「嘘だよ」……。くそ、虚しすぎる……」


 自分の言葉に対し、裏声で答えてみたがあまりの虚しさにシンリは地面に崩れ落ちた。シンリのスキルポイントは0。全てを拡張に費やし、しかしそれでも金色に輝く剣は変わらずに地面に突き刺さっていた。


 手にあるステフォの画面の中の『270kg』という数字がシンリの行動の結果を表していた。


「……いや、別にこんな剣いらねーし。200kg以上ある剣ってなんだよ。誰が使うんだよ。持てねーよそんなもん。何が確定演出だよ。思いっきりハズレ枠じゃねえかよ。もういいや。ここに刺しとこ。いつかきっと、この剣は伝説となって世界を救うはずだ。うん。きっとそう。案外伝説ってしょうもないところから始まるのかもな」


 無理やり自分を納得させて剣に対して背を向けた。

 

 【毒霧】のレベルが上がって毒の精製量や蓄積量も増え、シンリの身体の変色は右半身に留まらず身体全体に行き渡っていた。色も紫だけではなく、黒や赤色といったものが増えている。魔力操作で手や首などの見える部分まで出てこないように抑えてはいるが、これ以上レベルが上がれば他の方法を考えなければならないだろう。まあ、人のあまりいない場所で毒を撒き散らせば済む話ではあるが。


 シンリは体内に精製され蓄積された毒を全て体外に放出し、制服ごと身体を覆うように操作した。配色が増えたおかげでいい感じにローブを着ているように見えるのはシンリにとって幸運なことだった。



「あ。ヤバイ。これヤバイ。通知ONにしたステフォがさっきからピロピロなってる」


 鼻血を拭いながらシンリは言った。

 暇があれば【回復術】と【ヒール】を使い、使いどころが分かってきた【活性化】で活力を取り戻していく。


「くそ。どうせいつかはやらないといけないからって毒の耐性上げしてるけどさ、明日にしよっかな、なんて」


 【毒霧 Lv.4】はシンリの持っていた耐性系統のスキルで耐えれるものでは無かったらしく、シンリは血反吐を吐きながら苦しんでいた。

 それでも【毒霧】を解除せずに毒を纏っているのは、彼が今言った通り、いつかはやらないといけないことだからだ。【毒霧】というスキルを与えられた以上、一生このスキルと付き合っていかなければならないのだから、いざという時、自分の毒が原因で死にましたでは話にならない。

 だから口では辛いとか嫌だとか言いつつも、毒を纏い続けているのだ。早く耐性系統のスキルを上げて、少なくとも自分の毒くらいは平気になれるように。


「やっぱし耐性系のスキルは取っとくべきかね。いくつかレベル上がってスキルポイント増えたし。でも毒に罹ってたら取得出来るっちゃ出来るしどしよっかな」


 先程から耐性のスキルを取得したりレベルが上がったりでピロピロ鳴っているステフォを操作してステータス画面を開いた。


ーーー


シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】【生還者】

【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】

【苦行者】


《スキル》

【毒霧 Lv.6】【観察眼 Lv.3】【魔力操作 Lv.8】

【回復術 Lv.5】【ヒール Lv.8】【活性化 Lv.4】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.1】【毒無効 Lv.3】

【猛毒耐性 Lv.5】【衰弱無効 Lv.1】【麻痺耐性 Lv.9】

【状態異常耐性 Lv.4】【魔力Ⅱ Lv.2】【災厄の予兆 Lv.1】

【キラー:虫 Lv.5】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.3】

【呪毒耐性 Lv.2】【睡眠耐性 Lv.4】【苦痛耐性 Lv.2】

【痛覚耐性 Lv.2】


スキルポイント:16


ーーー


「あと取れてない耐性は……【幻惑耐性】【精神汚染耐性】【飢餓耐性】に……いや、まだまだ結構あるな。やっぱいいか。取っても必要無いとかなったらあれだし。少なくとも耐えとけば耐性はゲット出来るっぽいし」


 ピピピっとステフォのアイテムボックス容量の拡張に3ポイント費やし、300kgというキリのいい数値にした。


「もうアイテムボックスの拡張はする必要が無いとして、で、ガチャを2回引くとして、あと3ポイントで何を取得するべきか」


 別に今スキルポイントを使う必要は無いのだが、ソーシャルゲームでもガチャは引ける時にすぐ引くを貫き通していたシンリに引かないという選択肢は無かった。


「そろそろ空腹も誤魔化せなくなったし【飢餓耐性】っと」


 取得した瞬間に今まで感じていた空腹感が消え去った、なんてことにはならず、空腹は続いていた。正直何が変わったのか分からないレベルだ。


「うわ。選択ミスった感ある。じゃあ今度は趣向を変えて食料を探すってことで……【探査】かな」


 取得して使ってみると、すぐ近くの茂みになんとなく反応があるのが分かった。

 スキルが告げるままに手を伸ばすと、小さなブドウのような実が生っていた。


「【探査】超便利じゃね?と言いたいところだけどな……」


 シンリは手に持っている果実を苦い顔をして見た。

 黄緑と黒の斑模様で明らかに『毒がありますよ〜』的な主張をしているのだ。

 いやもちろん耐性系統のスキルを上げに上げたシンリに生半可な毒は効かないどころか、【毒霧】の効果で自分のちからとすることだって可能だ。

 だがなんというか、一口食べたら腹を下しそうな物を自ら進んで食べようとは思えなかった。


「いや食わないとキツイんだけどさ。でも食ったら食ったでキツそうなんよな。せめてどんなんか分かれば食うか食わないかきっぱり決められるんだけど。そんなスキルは……」


 なんて考えで見つけたスキルが【鑑定】。


「これだよなぁ!うん!異世界って言ったらこれだよ!なんで気付かなかったよ俺!うわぁもうこれは取るしかねえじゃん!」


 しばしの間毒による苦痛も忘れてテンションが上がった。

 早速【鑑定】を果実に向かって使用する。


 果実の説明文がシンリの視界に浮かび上がる。


『植物』


「……」


 ……。

 以上。


「……分かってた。期待しちゃいけないって分かってた。だってこの世界俺に対して酷いもんな。貰ったスキルで死にかけるし。ガチャで当たったと思ったら大ハズレだし。さらに追討ちでポイント全損させられるし。分かってた。分かってたけどさ……少しくらい優しくしてくれてもいいんすよ?」


 シンリはある種の悟りを開いたような穏やかな表情で空を仰いだ。

 高い木々に遮られつつも隙間隙間から見える青い空と太陽は今はまだ午前中だと告げているようだった。


 そう。まだ今日は始まったばかりなのだ。


 ーーああ、もう帰って寝たい。


 そんな簡単に出来そうで、しかし絶対に叶うことのない希望を心の中で呟いて、シンリは再び歩き始めた。

シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】【生還者】

【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】

【苦行者】


《スキル》

【毒霧 Lv.6】【観察眼 Lv.3】【魔力操作 Lv.8】

【回復術 Lv.5】【ヒール Lv.8】【活性化 Lv.4】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.1】【毒無効 Lv.3】

【猛毒耐性 Lv.5】【衰弱無効 Lv.1】【麻痺耐性 Lv.9】

【状態異常耐性 Lv.4】【魔力Ⅱ Lv.2】【災厄の予兆 Lv.1】

【キラー:虫 Lv.5】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.3】

【呪毒耐性 Lv.2】【睡眠耐性 Lv.4】【苦痛耐性 Lv.2】

【痛覚耐性 Lv.2】【飢餓耐性 Lv.1】【探査 Lv.1】

【鑑定 Lv.1】


スキルポイント:10


ーーー

《称号》


【苦行者】:自らを追い詰め自らを高めようとする者に贈られる称号。追い詰めれば追い詰めるほど成長する。


《スキル》


【探査】:自身が望んでいるものを一定範囲内で探す。レベルに応じて範囲が変化する。


【鑑定】:対象の情報を読み取ることができる。レベルに応じて情報量が変化する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ