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ブックマークありがとうございます。

それらを励みに毎日頑張って書いていこうと思います。

「……寒っ」


 シンリは寒気を感じて目が覚めた。


「真っ暗……ああ、毒を展開してたんだっけか」


 紫色の霧がシンリを覆っていて何も見えなかったので、彼は霧を一旦別の所へ移動させた。

 数時間で体内に作られた毒も合わせて体外に放出したため、かなりの量となっている。


「これだけあったら制服を隠すくらいはできそうだな」


 ぴちゃり。


 横になっている体を起こそうと、地面に手を当てると、生暖かいねっとりとした液体が手に付着した嫌な感じがあった。


(あれ、そもそも俺、体育座りで寝てなかったっけ……?)


 嫌な予感がして、恐る恐る視線をしたに下げる。


「っ!」


 真っ赤な水たまりがシンリを中心に広がっていた。全てシンリの血液だろう。

 驚いて固まっていると、さらに口と鼻から血が流れ、ぴちょんと音を立てて落ちた。


「なん、だよ……」


 シンリが驚いたのは自分が血の海に沈んでいたということだけではない。


 周りの草木は枯れ、腐り、朽ちており、野生動物であろう見たことのない生き物が穴という穴から血を流して静かに横たわっていた。さらにその死体に群がっていたであろう虫たちも一匹残らず絶命していた。


 もはや頭が状況に追いつかない。理解出来ない。この光景を受け入れることをシンリの心が拒否していた。


「うぇ、おぉええええ」


 激しい吐き気に襲われるが、何も食べていなかったことが幸いして、いや、災いして、吐き出したいのに何も吐き出せないという苦しみを味わうことになった。


 気分が悪い。

 惨状を見たからというだけではなく、身体的にも異常がある。もしかしなくとも、きっとそれは毒のせいだ。


「そ、うだ。なにか、スキルを……」


 ステフォを手に取りスキルの項目を押そうとしたが、指先が震えていたため近くにあったステータスの項目を押すこととなった。


ーーー


シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】【生還者】

【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】


《スキル》

【毒霧 Lv.4】【観察眼 Lv.2】【魔力操作 Lv.6】

【回復術 Lv.1】【ヒール Lv.1】【活性化 Lv.1】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.1】【毒無効 Lv.2】

【猛毒耐性 Lv.3】【衰弱耐性 Lv.7】【麻痺耐性 Lv.6】

【状態異常耐性 Lv.2】【魔力 Lv.8】【災厄の予兆 Lv.1】

【キラー:虫 Lv.4】


スキルポイント:27


ーーー


「おかしいだろ……っ」


 そうは思うも深く考える余裕はない。

 存在を忘れていた回復系統のスキルを使いまくった。


「……回復術ヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒール……活性化ぐふっヒールヒールヒール……ヒール……ヒールヒールヒール……回復術……ヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒール回復術……」


 ひとまず気分が良くなった。

 一度活性化を使うと、確かに気は楽になったのだが毒にまで作用したらしく、さらに苦しくなるという矛盾が起こった。


「というか、色々言いたいことはあるけど……あれはなんだよ」


 落ち着いたシンリは呟いた。

 あれというのは言うまでもなくステータスのことだ。

 ステフォを操作していると通知という項目を見つけたため、タップして見てみる。


 『【魔力操作 Lv.4】を取得しました』など知っていることも書かれていたが、自分の知らないところをシンリは見た。


『【毒耐性 Lv.5】に達しました。スキルポイントを1入手しました』

『【毒耐性 Lv.10】に達しました。スキルポイントを3入手しました。【毒耐性】は【毒無効】へと昇華しました』

『【猛毒耐性】を取得しました』

『【衰弱耐性】を取得しました』

『【麻痺耐性】を取得しました』

『注:魔力が尽きかけ危険な状態です。使用しているスキルの停止を推奨します』

『【衰弱耐性 Lv.5】に達しました。スキルポイントを1入手しました』

『【生還者】の称号を獲得しました。スキルポイントを5入手しました。【状態異常耐性】を取得しました』

『【魔力】を取得しました』

『【麻痺耐性 Lv.5】に達しました。スキルポイントを1入手しました』

『【疫病神】の称号を獲得しました。スキルポイントを5入手しました。【災厄の予兆】を取得しました』

『【魔力 Lv.5】に達しました。スキルポイントを1入手しました』

『【毒魔】の称号を獲得しました。スキルポイントを5入手しました。【毒精製】を取得しましたが【毒霧】に統合しました』

『【害虫駆除】の称号を獲得しました。スキルポイントを5入手しました。【キラー:虫】を取得しました』

『【ヒール Lv.5】に達しました。スキルポイントを1入手しました』


「……」


 酷い。酷すぎてシンリは絶句した。

 スキルが増えてるとかレベルアップしているとか、そんな風には喜ぶことができなかった。

 シンリが寝ている間に起きたことは、ただ自分の毒で死にかけたというだけの話なのだから。


「おかしいだろ!なんで与えられたスキルで死にかけないといけねえんだよ!ちょっと寝るつもりが永遠の眠りになるところだったんかよおい!」


 不満を晴らすように叫んだ。だが貧血の上、完全に毒が抜けているわけでもないので少し意識が遠くなった。安静にしているのが一番いいと思い、動くことはせずステフォで称号とスキルの確認をすることにした。


ーーー


【生還者】:死線から戻ってきた者に与えられる称号。丈夫な身体を得ることが出来る。


【疫病神】:一定範囲内で一定数の生物が絶命したことに気が付かなかった者に与えられる称号。異常な事態に遭遇することが多くなる。


【毒魔】:自身で精製した毒を用いて一定数生物を絶命させた魔物に贈られる称号。扱える毒の種類が増える。


【害虫駆除】:自身の種族に害となる虫を一定数絶命させた者に贈られる称号。虫に嫌われるようになる。


ーーー


「うん。まず言いたいのはガチで死にかけてんじゃねえかってことだな。あと魔物に贈られる称号ってなんだよ!あっ……くそ、叫べないとか俺はこのもやもやとした気持ちをどう発散させればいいんだ……っ。【疫病神】についても言いたいことはあるが……もうこの際どうでもいいか」


 毒で身体的にも精神的にも弱っているシンリはツッコミを放棄し、新しく取得したスキルに目を通す。


「耐性とか無効とかその辺は文字通りだし別にいいか。となると……」


ーーー


【魔力】:レベルに応じて魔力の最大量が増加する。


【災厄の予兆】:自身の周辺で起こる異常事態を予期することがある。レベルに応じて精度が上がる。


【キラー:虫】:虫へのダメージが大きくなる。レベルに応じてダメージが変化する。


ーーー


「称号に比べると普通っつうか、便利っつうか。でも【災厄の予兆】で異常事態を予期するとか言われても、その異常事態ってのは【疫病神】のせいで起こるんだろうなぁ……。転移一日目だけど早くも転生にすればよかったと後悔してきた」


 はぁとため息をつくと同時に咳き込むと、手に血が付着していたのでこれはヤバイと毒を回復できそうなスキルを探すことにする。

 毒無効と猛毒耐性の壁を通り越して毒を喰らわせる【毒霧】を纏いながら人里に向かうとかダメじゃね?とか思いつつささっとスキルを眺めていく。


「……ここはあえて装備ガチャでローブ的なのを狙うべきか。というか素直にお行儀よくスキルを取得するよりガチャで一発逆転を夢見てしまう俺がいる……。くっ、これが罠だと分かっていても謎の引力に引き付けられる……っ」


 一応、自然を破壊してしまうほどの毒を見に受けているにも関わらず案外余裕そうなシンリは一回だけ、とガチャ画面に飛んだ。スキルと武器のどちらを引こうか迷い、スキルポイントも28と余裕があるためどちらも一回ずつ引くことにした。


「んじゃ、スキルから……」


 画面が切り替わり、白い炎と祠の画面になる。

 一回目と同じように白い炎が祠に吸い込まれていくのを見て、「あ、この白い炎って魂を現しているんかな」なんて思いながら見ていると、突然祠が虹色に光り出した。


「こ、これはっ!確定演出!?うあっ……」


 気分が高まり大声を出したことでふらりとなったが気力で画面に食いつく。


『【穴掘り Lv.10】を取得しました』


「ん、んー?」


 ちょっとよく分からないスキルだった。いや名前からどういうスキルなのかは予想がつくのだが、確定演出のようなものまで出す意味が分からなかった。


「いや、レベル?……ああ、なるほど」


 シンリがステータス画面で確認してみるとスキルポイントの残りは27。1ポイントしか消費せずにガチャを引いたことになる。


「それが【穴掘り】って、運がいいのか悪いのかってな」


 続けて武器ガチャを引くことにした。


 画面が切り替わり、白い炎とスキルガチャとは少し違う祠が現れた。

 白い炎が吸い込まれていくのは同じらしく、「来い、来い……」と祈っていると、祈りが届いたのかまた虹色に光り出した。


「来たぁぁぁ……あ、あ、あ、……」


 毒が回ってふらつくのは言わずもがな。

 ふらついていたため何が当たったのかは見ることができなかった。


「ふふふ……俺の運良すぎだろ。【疫病神】なんて不名誉な称号返上したいくらいだ」


 なんて言いながらステフォを操作していると突然金色に輝く剣がシンリの目と鼻の先に落ちてきた。


「……」


 つぅ……と、冷や汗と切れた鼻先から血が流れた。


「……うん。武器ガチャは当たったやつがそのまま出てくるのな。……うん」


 シンリは気持ちを落ち着かせるように大きく息を吸って、吐いて、また吸って……


「そういうことは書いとけよ!普通に死ぬわ!」


 毒+貧血+その他諸々の疲弊という状態で大声を出したためシンリの意識は完全に落ちていった。

 シンリは遠のく意識で一つだけ心に決めたことがあった。それはーー


 横になったまま武器ガチャは絶対に引かねえ……

シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】【生還者】

【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】


《スキル》

【毒霧 Lv.4】【観察眼 Lv.2】【魔力操作 Lv.6】

【回復術 Lv.3】【ヒール Lv.5】【活性化 Lv.1】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.1】【毒無効 Lv.2】

【猛毒耐性 Lv.3】【衰弱耐性 Lv.7】【麻痺耐性 Lv.6】

【状態異常耐性 Lv.2】【魔力 Lv.8】【災厄の予兆 Lv.1】

【キラー:虫 Lv.4】【穴掘り Lv.10】


スキルポイント:22

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