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「ここは……森、か?」


 見渡す限りの大自然に、少年は、ほぅと息を漏らした。

 空気が澄んでいて、ここにいるだけで健康になれそうな空間だが、いつまでもここにいるわけにはいられらない。


「普通こういうのって町とか村とか、そんな場所に送られるもんじゃないのかね」


 ぐちぐち言いながら少年はステフォを開いて『ステータス』のボタンを押した。


ーーー


シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】


《スキル》

【毒霧 Lv.1】【観察眼 Lv.1】


スキルポイント:10

ーーー


「ん、自分にはレベルとかないのか。ゲーム的には職業とかHPとかの数値もありそうなのに。いや現実だからこそってことか?HPとか意味わからんしな。数値で生死が決まるとか怖すぎる」


 少年、深里 真理は次に称号の部分をタップしてみた。


ーーー


【異界人】異界から招かれた者に贈られる称号。存在する全てのスキルを覚えることが出来る。


【最終者】最後まで残っていた者に贈られる称号。全ての事象において最後に近ければ近いほど良いことが起きることがある。


ーーー


「お、最後まで残ってた甲斐があったな。あのエセガワめ、無いとか言いやがって。次はスキルをっと」


ーーー


【毒霧】身体で精製され、蓄積された毒を操ることが出来る。レベルに応じて操れる毒の種類が増える。体内に毒を取り込むことでその毒を取得することも可能。


【観察眼】普通は気が付かない、あるいは見落としてしまうようなことを目敏く発見することが出来る。レベルに応じて視野が広がる。


ーーー


「毒霧ってのが与えられたスキルか?観察眼はあのエセガワにした質問からなんかな」


 シンリは他にはどんな機能があるのだろうかとステフォを弄ってみる。


「スキルポイント……は、後でいいや。地図、アイテム、所持金、ガチャ。……このガチャってなんだよ。ゲームかよ」


 そう言いつつもシンリはガチャの項目をタップした。するとソーシャルゲームなどでよく見る画面に切り替わった。


「スキルガチャに武器ガチャ、ねぇ。完全にゲームじゃねえかよ。いや引くんだけどさ。引きたくなるよねこういうの」


 スキルポイントを5ポイント消費して1回引けるらしい。50ポイントで11回引けるところなんてまるでゲームだとシンリは思った。


「や、でもこういうのって当たらないんだよなぁ。10ポイントあるし1回だけ……。でも出なかったら絶対もう1回引いちゃうと思うし、出たら出たでもう1回引くな……。だからといって今引かなかったら後になってハズれたとき『あの時引いていれば当たったのにな……』とか思って後悔する訳だが」


 しばらく引くか引かまいか迷っていたが、結局は「引かないなんて選択肢はねえんだよぉ!」と叫びながら引いた。


 白い炎のようなものが現れて、奥にある祠のようなものに吸い込まれてゆく。そして祠の奥から丸い光が出てきて画面が変わってーーー


『【魔力操作 Lv.4】を入手しました』


「あ、よく考えたらハズレか当たりかなんて分かんないじゃん。でも割とよく見るスキルっぽいし、ハズレ感あるなぁ。レベル4ってのも凄いやらそうじゃないのやら」


 ただ、今このスキルを入手したからか、シンリは先程とは違う感覚があるということに気が付いていた。

 それはおそらく魔力と呼ばれるもので、【魔力操作】を得たことでその存在に気が付くことが出来たのだ、と。


「……というか、なにこれ。右半身にすっごい違和感があるんだけど」


 むずむずするというか、こそばゆいというか、それでいてなんだかずっしりと重量もあるような気がしてならない。これが魔力というものなのかな、と服を捲って身体を見てみると、腕から横腹辺りにかけてシンリの身体は紫色に変色していた。


「っ!なんだよこれ!?打撲か!?内出血!?救急車!いや何言ってんだ俺!これ触って大丈夫なやつか!?そ、そうだ!スキル!回復系のスキルをゲットすれば!」


 一瞬でパニックに陥ったシンリは片手で服を捲ったまま、ステフォを操作するという珍奇な格好で取得できるスキル欄を見た。


 ずらりと並ぶスキル欄の中に【魔力操作】が1ポイントで取得できるということを気にする暇はなかった。画面の端っこにそれは書かれていたにも関わらず見つけてしまったのは【観察眼】のせいだと気がついて後で気分が落ち込むのだが、それは別の話。

 素早くスクロールしていくと【回復術】や【ヒール】などといったものを見つけたが、どれを取ればいいのか分からずに手当り次第に5つのスキルを取得した。


「【回復術】!【ヒール】!【活性化】!【調薬】!【痛み分け】!」


 適当に取った5つのスキルは一つたりとも望んだ効果を発揮せず、シンリの身体は紫色のままだった。


「くそっ!なんなんだよ!俺がなにしたっていうんだよ!俺、死ぬのか!?こんな毒々しい色って絶対異常だろ……。ん、毒?」


 シンリはもう一度ステフォでステータスを見た。


ーーー


シンリ・フカザト


《称号》

【異界人】【最終者】


《スキル》

【毒霧 Lv.1】【観察眼 Lv.2】【魔力操作 Lv.4】

【回復術 Lv.1】【ヒール Lv.1】【活性化 Lv.1】

【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.1】


スキルポイント:0

ーーー


「ん、んー?」


【毒霧】


「んー。もしかしなくともこれのせいだったり?いや、まさか……んー?ちょ、ちょっとこのスキル使ってみよっかなぁなんて……」


 自分が持っているスキルは、なぜかどういう風に使えばいいのかが全て理解出来ている。

 シンリはその知識に従って毒霧を発動させた。


 もやもやと薄い紫色の霧がシンリから発せられ、シンリの意思で動かすことも出来た。しばらく使っているとシンリの周りは紫色の霧で満たされ、身体の紫色はきれいさっぱり無くなっていた。


「……いや、おい、マジかよ……。俺は何のためにこんな似たりよったりなスキルを……」


 霧となった毒は風で飛ばされたが、シンリが留まるように操れば飛ばされないようなので、なんとなくもったいないと感じたシンリは腕を覆うように毒の霧を纏っていた。


「まあ、一応どんなのか見とくか。つうか【調薬】とか【痛み分け】とか名前的に治療スキルでもなさそうだというね。なんだかなぁ」


ーーー

【回復術】一定時間、傷が治るようになる。レベルに応じて発動時間が長くなる。


【ヒール】レベルに応じた傷を一瞬で治す。


【活性化】生物を活性化させる。レベルに応じて活性化具合が変化する。


【調薬】作った薬の効能が上がる。レベルに応じて効能が変わる。


【痛み分け】自身と自身が触れている生物が感じている痛みを等しく分配することが出来る。レベルに応じて痛みの配分を変えることが出来る。


ーーー


「回復術とヒールはほとんど同じだし、後の3つは別に回復系のスキルでもなんでもないな。てかスキルポイント0ってのが地味に痛い」


 木を背もたれにしてシンリは座り込んだ。毒を操作してSOSと空中に描いたが虚しさしかなかったのですぐに消した。


「あー、森を出て人のいるとこに行かないとだなぁ。いつまでもここにいる訳には行かねえし。てかこの制服っておかしいんかな。俺の知識がローブとか着た方がいいと告げている……無いんだけどさ」


 なんだかだるくて、ぼーっと意味もなく毒霧って動かしていると、さっきよりもスムーズに動かせていることに気が付いた。


「お?まさか、もしかして……」


 と、ステータスを見ると、【魔力操作 Lv.5】となっており、スキルポイントが1になっていた。


「なるほど。毒の操作で魔力操作のレベルは上がるし、スキルのレベルが一定数になったらスキルポイントが貰えるってことか。じゃあ毒は常に出しといた方がいいんかね」


 右半身をもう一度見てみると、また少し紫色になっていたので、毒を取り出して霧にする。


「増えた増えた。んじゃあこのまま増やしていって、身体全体を覆えるローブみたいになったら森を抜け……よう、か……って、あ、れ?」


 突然、めまいがしてシンリは横に倒れた。

 身体が痺れたように動けない。

 シンリは一つの答えに行き着いた。


(いや……嘘だろ!?それこそまさかだろ!?魔力切れとか言われた方がよっぽど信じられるぞ!?)


 シンリの行き着いた答えは、『状態異常:毒』というもの。つまり、自分が出した毒にやられてしまったということ。


 嘘だと思いたいし、そんなのって無いだろという気持ちが心中を支配する。だが、明らかな身体の異常にそれ以外考えられなかった。


 震える指先でステフォを操作して、闇雲にスクロールする。ほとんど字が流れていくため、ぼんやりとしか読めない、だが【観察眼】のおかげで【毒耐性】というスキルを見つけることが出来た。


 シンリは迷わずスキルを取得した。途端に症状が軽くなっていき、一回活性化を使うと元通りになった。


「……マジかよ。下手すりゃ死んでたかもだぞ。いや、レベル1だから致死性では無かったかもしれんけど。もう1回言わせてもらう、マジかよ」


 この日、シンリは森の中から出ることなく、増えに増えた毒で身体中を覆って眠りについた。


 朝起きた時、毒耐性がカンストして【毒無効 Lv.2】になっている事を彼はまだ知らない。

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