表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/124

-12-

お読みいただきありがとうございます。

日が空いてしまい申し訳ありません。

少しでも楽しんでもらえれば幸いです。

 シンリが森を抜けた時、陽は高く昇って、時間は昼頃だった。

 まあ、地震……【アースクウェイク】のせいで無事な植物がほとんどなくなっているモノを森と言っていいのか分からないが。

 シンリ自身も、破壊された森を見て「これはちょっと酷いな」なんて思い、森を出る過程で見つけた川から水を収納して、血を混ぜ合わせて流し、自然を回復させていた。

 増えたアイテムボックスの容量のおかげで森は、完全にとまでは言えないまでも、一応『森』と呼べるくらいには木々が茂っていた。


「んと、地図によると一番近い村は……ネイロ村か。尺とかついてないからどんくらい離れてんのか分かんねえな」


 ステフォの機能である『地図』を見ながらシンリはそうぼやいた。

 ただまあ人里を目指すという目標は定まっているため、方向はネイロ村に向かって歩き出す。

 一歩、また一歩と森から離れていくにつれ、ほんのわずかではあるが力が抜けていくのを感じ「これが【森聖霊】の恩恵かなぁ」と呟いた。


 景色の変わらない平地をただただ歩いていく。

 たまに、遠目にウサギやシカに似た動物や、おそらく魔物と呼ばれるものであろう黒い狼のような生物を見かけたが、シンリが何気なく目を向けていると、数秒と経たずに逃げ出した。

 獣に嫌われるという【害獣駆除】の称号の影響だと思われるが、それなりに距離はあったのに効果を発揮することについてシンリはとあることを思った。


(この世界に獣人とかいたらやっぱり嫌われるんかね。耳とか尻尾とか触ってみたいんだけど。いやいるかわかんないんだけどさ。いたらエルフとかもいそうだな。俺ってば【森聖霊】だしエルフとかにちやほやされるんじゃね?今から期待が膨らむな)


 そんなことを考えているうちに、建物のようなものがぼんやりと見えてきた。

 聖霊になったおかげか、上がった視力で見えているため距離的にはまだ結構あるが、いつ着くのかわからないまま歩くのと、ゴールが見えながら歩くのでは精神的負担が全然違う。

 シンリは無意識の内に自分が歩調を早めていることには気付いていなかった。



 柵に囲まれたネイロ村の前に立ってみたはいいが、門番みたいなのがいそうな造りになっているのに誰もいないため、シンリは無断で入っていいのか分からずに躊躇っていた。


 多少偏見が混じっているが、なんとなく村というのは村人たちが結束していて、よそ者を嫌うというイメージを持っているため許可なく入ることに躊躇われたのだ。


「ごめんくださーい。ごめんくださーい!誰かいませんかー!……えー」


 とりあえず叫んでみたが、誰かがやってくるような気配はなかった。

 【森力】に統合されレベルが高くなった【生命感知】では、少し離れた場所に多くの反応があることから、もしかしたら祭りかなにかをしているのかもしれないとシンリは思い、適当に入口のようなところからネイロ村に入った。


 シンリには『村』というものがどれほど大きいものを指すのかは分からなかったが、思っていたよりも広いのだと感じた。

 まあ、シンリの想像している『村』というのは、ゲームの中のような、広くても五分あれば隅から隅まで歩けるような狭いものだったため広いと感じるのは当然なのだが。


 シンリは人が集まっている場所に向かい、人とコンタクトをとろうと決めた。

 初めての異世界交流で緊張するのを感じながら、ゆっくりと歩いていく。


 人が集まっているところは、普通の家の数倍はある建物だった。

 公民館のようなもの、といえば近いかもしれない。

 近いだけで、似て非なるものではあるが。


 村人たちが集会でも開いているのだろうとシンリは思った。


「もしそうなら邪魔しちゃあれだしな。村の中でも見物しとこうかなぁ……いや待て、おかしくないか?」


 公民館に背を向けて歩きだそうとしたシンリだが、すぐに振り返る。

 こんな昼間から、誰も外に出ていないということの異常性に気が付いたのだ。

 【生命感知】の反応も、公民館の中にいる多くの人は微動だにせず、数える程度の数人がせわしなく動いている。


 シンリが公民館の扉を開けようとしたとき、その前に扉が開かれた。


「っとと、誰だよって……シンリ?」

「いや名前で呼ぶ程の仲じゃないだろ」


 扉の向こうから現れた黒目黒髪の少年、シンリのクラスメイトであり、クラスの人気者であった(ひいらぎ) 終日(ひねもす)に、シンリはそう言った。


 ヒイラギはシンリを認識すると、嬉しそうに……いや安心したように笑った。


「ありがとう。俺の書いたことを見て来てくれたんだろ。本当に助かるよ」

「ごめん、お前が何言ってんのかさっぱり分からん。書いたことって言ったら……チャットか」


 シンリがヒイラギの言ったことを確かめるためにステフォを開いたのを見て、ヒイラギは言った。


「じゃあここに来たのは偶然ってことか。簡単に話すからついてきてくれないか?ちょっとした時間も惜しい」

「んー」


 生返事をしてシンリはヒイラギについて行った。

 シンリが見つけた、ヒイラギの書き込みだと思われる文章はこのようなものだった。


『今、俺はネイロ村というところにいるんだけど、もし近くにいたりして来れるのなら、来て欲しい。村の人たちがいきなり倒れだして、大変な状況なんだ。ここの人たちはいきなり現れた俺を警戒もせずに迎え入れてくれたいい人たちなんだよ。だから俺はこの人たちを助けたいんだ。一人でも人手が欲しい。だから、来れるのなら、頼む』


「見たか?」

「ああ」


 ちょうど読み終わったくらいにヒイラギは話しかけてきた。

 彼は村の真ん中にある井戸で、桶の中を水で満たしながら話していて、シンリには背を向けている。


「昨日のことだ。何の前触れもなく、まず子供たちが倒れた。次に年配の方たちが、そして女性、男性、ってな。自由に動ける人は俺を含めて数人しかいない。幸い死人は出ていないが……多分、時間の問題だ。意識が戻らない人が何人かいる」

「いきなり重い話を聞かされてちょっと困惑してるんだけど……」

「すまない……」

「いや謝られても……」


 気まずい空気が流れて、互いに黙った。


 クラスメイトと言ってもシンリのヒイラギは特別仲が良かったわけでもない。もちろん仲が悪いわけでもなかったのだが、話した回数も事務的なことが数回あるだけだろう。

 会話が続かないのも仕方が無いと言える。


「あ、あー」


 沈黙に耐えられなくなったシンリは言う。


「なんか大変そうだし、俺に出来ることがあるならやるよ。うん。なんかある?【ヒール】くらいなら使えるっすよ」

「それはとても助かるけど……回復魔法は……どう、だろうな。ガチャは引けないか?状態異常を治せるスキルが必要なんだ」

「あいにくスキルポイントはアイテムボックスの拡張に使っちゃったなぁ……水、運ぼうか?てか500ℓくらいなら持ってる」

「おお!ナイスシンリ!」

「……。いや、今はそれどころじゃなさそうだしいいや」


 他人に名前で呼ばれることになれていないシンリはなんとも言えない心地悪さを感じたが、場合が場合なのでスルーした。


 水については問題無くなったため、シンリとヒイラギは公民館へと戻る。

 戻る途中、シンリはヒイラギは質問をした。


「さっき状態異常がどうのとか言ってたけど、倒れた理由は分かってんの?」

「ああ。スキルで視た。だけど、おかしいんだ」

「というと?」

「倒れた理由が人によって違う」

「はー」

「毒だったり、麻痺だったり、睡眠だったり、衰弱だったり、呪いだったりでさ。一応、ガチャで出た【毒解除】って言うのは使ってみたんだけど、あまり効果はなくてな」

「んー?」

「その上、夜の大地震だろ。ただでさえ動ける人が少ないのに、怪我でさらに減ってさ。シンリが来てくれたのは本当に良かった」

「……」


 ……ふむ。

 シンリは思った。


 100%俺が原因だこれ、と。


ちなみに遅れた言い訳をさせてもらいますと、小テストが近付いてたりレポート課題を出されたりバイトが重なってたり……。

いや別に話が思いつかなかったとかではなく。

でもあえて割合で例えるなら7:3くらいですかね。

水曜日には全てが片付くと思うので3日も空くなんてことはないとは思いたいです。


シンリさんのステータスに変動がないため今回は載せてません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ