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「……もう、朝かよ……」
シンリは朝日を顔に感じて目を覚ました。
寝ぼけた頭を切り替えるために、手で顔を拭ったところでふと違和感に気が付いた。
「あれ、なんで普通に動くんだ?折れたはずなのに……。というか、どこにも異常が無いし」
聖霊が操っていたウッドゴーレムの死体に殴り飛ばされて、流石に自然治癒では治らないような傷を負ったはずなのに、シンリの身体は擦り傷一つない状態だった。
あえて異常を挙げるとするなら右手から広がる変色だが、それも肩あたりで抑えられていた。
数時間放置しておけば身体全体が染まっていてもおかしくないはずなのに。
自分の身体がどう変わったのか、それを調べるためにシンリはステフォでステータスを見てみることにした。
ーーー
シンリ・フカザト
《称号》
【異界人】【最終者】【生還者】
【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】
【苦行者】【災魔】【害獣駆除】
【魔人】【賢者】【聖人】
【聖霊殺し】【森聖霊】【森の主】
《スキル》
【毒霧 Lv.7】【観察眼 Lv.5】【ヒール Lv.10】
【活性化 Lv.5】【痛み分け Lv.4】【毒無効 Lv.5】
【猛毒耐性 Lv.7】【衰弱無効 Lv.3】【麻痺無効 Lv.1】
【状態異常耐性 Lv.7】【魔力Ⅲ Lv.4】【災厄の予兆 Lv.5】
【キラー:虫 Lv.10】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.6】
【呪毒耐性 Lv.5】【睡眠耐性 Lv.5】【苦痛耐性 Lv.7】
【痛覚耐性 Lv.8】【飢餓耐性 Lv.4】【探査 Lv.6】
【鑑定 Lv.7】【収納術 Lv.10】【破魔 Lv.4】
【直感 Lv.8】【腐蝕耐性 Lv.4】【キラー:獣 Lv.6】
【人化 Lv.-】【従命 Lv7】【魔力効率化 Lv.5】
【偽装 Lv.2】【影踏み Lv.1】【空中歩行 Lv.1】
【剣術 Lv.3】【敏捷 Lv.4】【召喚 Lv.10】
【聖霊信仰 Lv.-】【森力 Lv.10】
スキルポイント:34
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「ありゃ、結構ピロピロ鳴ってた気がしたからもっといっぱいあるかと思ったけど、案外増えてないのな。あ、違うわ。全部統合されてたのか」
画面を切り替えて通知を見てみると、多くのスキルを取得していたが、全てが【森力】というスキルに統合されていた。
【植物操作】【植物精製】【植物伝心】……などといった植物に関係ありそうなスキルが統合される一方で、【風魔法】や【土魔法】など、微妙に関係あるのか分からないスキルですら【森力】に統合されていた。
どうやらそれだけ【森力】というスキルは万能らしい。
しかもよく見ると、【魔力操作】【回復術】【調薬】【生命感知】【吸収】【結界術】のスキルがスキル欄から消えていた。これらも統合されたらしい。
「えー。いやスキルとしては強力になっただろうけどさ、スキルポイント的には損してる気がする。気がするっていうか、レベルボーナス的なので貰える分が貰えないから損してる。俺、ガチャ引くの好きなのになぁ」
とはいえ、言っても仕方の無いことなので、新しく手に入れた《称号》と《スキル》を調べてみる。
ーーー
【聖人】:彼らから干渉されなければ知覚できない聖霊に見初められた者に贈られる称号。聖霊を知覚できるようになり、聖霊の力の一部を与えられる。
【聖霊殺し】:彼らから干渉されなければ知覚できない聖霊を殺した者に贈られる称号。聖霊の力を譲渡される。
【森聖霊】:森で生まれた聖霊に贈られる称号。森を操り、支配する力が与えられる。
【森の主】:森を統べる者に贈られる称号。自然に囲まれた場所ほど能力が上がる。
ーーー
「おっと、人間やめちゃってるじゃねえか……って今更か。俺ってば既に昨日の時点で魔物になってたしな。【聖霊信仰】のレベルが無効なのは俺自身が聖霊になってるからか?自分で自分を信仰するとか意味わかんねえし。で、結局聖霊って何なんだよ。俺も他人に見られたら感動して涙を流されるんかな」
まあその時になってから考えようと、続いてスキルを見てみる。
ーーー
【聖霊信仰】:聖霊に興味を持たれる。レベルに応じて度合いが変化する。
【森力】:自然を自身の一部として扱える。レベルに応じて規模が変化する。
ーーー
「……あまりにも大雑把過ぎて何が出来て何ができないのかさっぱりなんすけど。いや、スキルだからなんとなく使い方はわかるんだけどな?選択肢がありすぎてどれから手をつければいいか迷うみたいな……。何言ってんだろ俺」
続いてステフォでグループチャットを見てみると、昨日の地震のことで盛り上がっていた。
この世界の各地に散らばったクラスメイトたちのいる場所にも揺れが届いていたらしい。
「……よく生きてたよな。つか、この場合、聖霊が強かったのかウッドゴーレムが凄かったのか……聖霊、だよな。もしかすると、俺にも同じことができるのか?なんだそれ、ぞっとしねえなおい」
以前と比べると格段に扱いやすくなった【毒霧】を纏ってシンリは立ち上がった。
「腹も、もう空いてないな。呼吸するだけで食事してるみたいだ。……で」
シンリが髪の毛を一本抜いて地面に落とすと、髪の毛が植物の芽に変わり、10秒と経たないうちに一本の木となった。
木には赤い果実が付いており、まるでリンゴのようだったというかまんまリンゴだった。
「自分の思ったような植物も簡単に生やすことができる、と。からの」
シンリが手刀を振るうとカマイタチのようなモノが生まれ、リンゴの枝を一本切り落とした。リンゴはふよふよと浮いてシンリの手の中に収まる。
「風の刃を作るのも物を浮かせて移動させるのも思いのままか。他にも色々できるんだろうけど、正直これだけでも充分過ぎるんだけど。もうガチャとか引く必要無くないか?」
そう思うと、そうとしか思えなくなったシンリは、全てを拡張に費やした。
34ポイント、340kg、【収納術】の効果も合わせてシンリのアイテムボックスの容量は1280kgとなった。
「これだけやったら流石にこいつも入る……よな?」
地面に突き刺さっている金色に輝く剣を収納しようとステフォをかざす。
『容量が不足しています』
「……まあいいや。なんかそんな気はしてたしな。やりたいことは別にあるし。無駄にしたとか思ってねえし……はぁ……」
シンリはため息をつきながらおもむろに自分の手首をカマイタチで切った。
血が溢れてきてぽたぽたと垂れる。
「くそ、痛い。当たり前だけど。つか、やっぱりもう赤色じゃねえのな。なんか改めて人間じゃなくなったと認識させられるのは……辛い」
シンリの血は白銀に輝いていた。
それはシンリが殺した聖霊の血と同じ色だった。
「じゃ、一応の加害者として、そして【森の主】として、軽く復興させますかっと」
シンリはステフォから水を出して、自分の手首の血を洗い流すようにした。
シンリの血に触れた水はそのまま地面に落ちて、地面を伝って周りに広がっていく。
水の通った跡には、色鮮やかな花や草木が死んだ土地を生き返らせるように生えていた。
「あ、これ意味ないじゃん。いくら拡張しても中身の水が増えるわけじゃないじゃん。うわくそ強がってたよ!ガチャ引きたいよ!人間だもの!いや聖霊だけど!魔物だけど!あれ、俺って何なんだろ……」
ふとそんなことを思ったが、はっと鼻で笑って思い直した。
「なんでわざわざ異世界に来てまで『自分は何者か』みたいな哲学しないといけないんだよ。まあ異世界に来たから問題が提起されたんだけどさ」
水を全て出し終えて、辺りが自然に囲まれたのを確認するとシンリは傷口をなぞった。するとぱっくりと切れていた手首は綺麗に閉じた。
「空になったからこの剣も……入らないねうんわかってた。1t超える剣って本格的に何なの?作った奴馬鹿なの?そういや聖霊が『神話武装』とか言ってたな。ちょっと【鑑定】でも……いや」
シンリの力の影響で、ツタが絡まって伝説の剣感が増した金色に輝く剣を【鑑定】を使って調べてみようとしたが、首を振ってやめる。
「どうせ俺じゃ使うどころか動かすことも無理っぽいし、見なくていいや。最強過ぎる能力だったら放置するにも時間が掛かりそうだし。いや強いことは分かってんだけどさ。見たら未練がでかくなりそう」
シンリはまた金色に輝く剣に背を向けた。
木刀を持っていないことに気が付いて、【召喚】で自分の手に収める。
【召喚】で持っていこうかと振り向きそうになったが、目立つことになりそうなのでやめた。
シンリの向かう先は森の外。
今からは、人のいる場所を目指しているのだから。
シンリ・フカザト
《称号》
【異界人】【最終者】【生還者】
【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】
【苦行者】【災魔】【害獣駆除】
【魔人】【賢者】【聖人】
【聖霊殺し】【森聖霊】【森の主】
《スキル》
【毒霧 Lv.7】【観察眼 Lv.5】【ヒール Lv.10】
【活性化 Lv.5】【痛み分け Lv.4】【毒無効 Lv.5】
【猛毒耐性 Lv.7】【衰弱無効 Lv.3】【麻痺無効 Lv.1】
【状態異常耐性 Lv.7】【魔力Ⅲ Lv.4】【災厄の予兆 Lv.5】
【キラー:虫 Lv.10】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.6】
【呪毒耐性 Lv.5】【睡眠耐性 Lv.5】【苦痛耐性 Lv.7】
【痛覚耐性 Lv.8】【飢餓耐性 Lv.4】【探査 Lv.6】
【鑑定 Lv.7】【収納術 Lv.10】【破魔 Lv.4】
【直感 Lv.8】【腐蝕耐性 Lv.4】【キラー:獣 Lv.6】
【人化 Lv.-】【従命 Lv7】【魔力効率化 Lv.5】
【偽装 Lv.2】【影踏み Lv.1】【空中歩行 Lv.1】
【剣術 Lv.3】【敏捷 Lv.4】【召喚 Lv.10】
【聖霊信仰 Lv.-】【森力 Lv.10】
スキルポイント:0