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ウッドゴーレムとの戦いは終わった。
ウッドゴーレムとの戦いは。
シンリは死体となったウッドゴーレムに【鑑定】を使用した。
『ウッドゴーレムの死体』
『【鑑定】が無効化されました』
「……だよな。なんとなく、そんな気はしてた」
一番初めにウッドゴーレムを【鑑定】した時にもされた表示だが、あの時は異常なスキル編成に注意がいってしまい、気にしている余裕もなかった。
だがよく考えてみれば、スキルレベルが底上げされたような表記に、明らかに付け加えられたような表記は、他者の介入が混じっていることを示していたのだ。
そしてその『他者』とは、桁違いどころか次元が違う存在だと【直感】と【災厄の予兆】が告げていた。
ナニカは目に見えないだけで、きっとすぐ目の前にいるのだ。
『ニンゲン』
と。
頭に直接響いてくるような、そんな声が聞こえた。
誰が、どこからシンリに話しかけているのかは分からない。
だが目の前にいるはずだと、シンリは視線はそのままウッドゴーレムの死体に向けて返した。
「……なんだよ」
『我ノ森ヲ穢シタコト、万死ニ値スル』
「環境破壊具合で言ったら俺のしたことなんてかわいいものだろうけどな」
シンリは周りに視線を向けて挑発するように笑った。
シンリの視界が届く範囲には、もはや無事な植物は雑草の一本すらなく自然は破壊し尽くされていた。
シンリではなくウッドゴーレムの使用した【アースクウェイク】の影響だ。
木は根っこから掘り起こされ、地面は盛り上がって地層がズレている。
『黙レニンゲン』
「黙ってたらすぐにでも殺されそうだから黙らない。でも、どうせ殺すんだろ?やるんなら痛くないようにお願いな」
へらっと気が抜けるような笑みを浮かべた。
シンリ自身、もう助かることはないだろうと諦めていた。
姿が見えないとか、相手の強さの次元が違うとか、そういう問題ではなく、ただ単に身体が動かないのだ。
今なら森の小動物にすら勝てないだろう。
いや身体が動かないだけで【毒霧】などは使えるからそれは流石にない。
まあウッドゴーレムに無効スキルを付与できるような相手に毒が効くはずもないのだが。
『タダデハ殺サナイ。我ノ怒リヲ思イシレ』
死んだはずのウッドゴーレムが起き上がった。
ただ先程と違うのは、顔の空洞に赤い光が無いことだろうか。そこにあったであろう赤いコアのような物は、ウッドゴーレム自身が砕いて破片は地面に落ちていた。
あのコアがウッドゴーレムの動力源であり心臓のようなものだったのだろう。
シンリは一応【鑑定】を使ってみるが、『ウッドゴーレムの死体』としか表示されなかった。
生きていないのなら【従命】は使えない。
「あー。一回死んだからかな。死ぬってわかってても、あまり怖くない。いや、違うな。死んでも次があるとか思っちゃってのか。ヤバイな俺」
独り言を呟くシンリを無慈悲にウッドゴーレムは殴り飛ばした。
シンリはボールのように飛んでいき、数回地面にバウンドしてようやく止まった。
シンリの腕は変な方向へ折れ曲がっており、顔は血にまみれていて表情が見えなかった。。
「く、はぁ……。死ぬ時くらい、さ。優しくして、くれても……いいんじゃね?あぁ……痛いはずなのに、痛みすら感じねえ、なぁ」
感覚が無くなっていく。
この世に魂というモノがあるのだとしたら、それが少しずつ抜けていっている気がする。
自分の命がゆっくりと無くなって行くのを感じて、シンリは、腹が減ったなぁと関係ないことを思っていた。
ウッドゴーレムが近づいて来て、シンリにトドメを刺すために拳を握りしめた。
『脆イナ、ニンゲン』
「……人間、だもの……なんてな」
『言イ残ス言葉ハアルカ』
「なんか、優しいな、おい……。いや……これから、殺されるってのに……優しいも何も無い、か。ゴホッ、お前に、言い残すような、言葉は無いけど……せめて最後に、どんな姿かは……見てみたい、かなぁ。聖霊」
聖霊。
シンリは聖霊がなんなのかなんて知らないが、ウッドゴーレムのスキルに【聖霊信仰】なんてものがあったから、目の前にいるナニカは聖霊なのだろうなとは思っていた。
異世界に来たのなら、ファンタジード定番のドラゴンとかが見たいではあるが、それは叶いそうにない。なら、聖霊でもいいから見てみたい。妖精のようなメルヘンチックなモノなら、聖霊もまたファンタジーの定番と言えるだろうから。
「……相手がどんなのか知らないまま死ぬってのがカッコ悪いからってのもあるけどさ」
『イイダロウ』
ピロリンとステフォが通知を報せたが、確認する余裕はなかった。
シンリの目の前が光に包まれる。
その姿は、人間のようだった。
顔があって、胴があって、手足があって。大きさもシンリとさほど変わらない少女のようだった。
それから連想するモノは『天使』だろうか。
羽根も、輪っかも付いていないけれど、聖霊というモノはあまりにも神々しすぎた。
見ているだけで涙が出てきたのを感じて、シンリは「信仰されるのも分かる」と思った。
見るだけで幸せになれる気がする。側にいるだけで安心できる気がする。存在するというだけで心が軽くなる気がする。信じるだけで救われる気がする。
(ああ……こんなものを見せられたら……)
シンリは折れている腕を聖霊に向けて伸ばした。
聖霊は浮きながらシンリに近付いて、最後の慈悲だと言わんばかりにその手をとった。
(ここにあると知ってしまったら……)
ほとんど感覚のない手から伝わる温かな感触を感じながら、シンリは思う。
(もう、欲が出ちゃうじゃねえかよ)
と。
シンリの目に、聖霊の驚いた顔が映った。
『ナン……ダト……!?』
「……実体があるってなら……殺せるっていうのなら……話は、変わるんだよ」
聖霊の背中には、金色に輝く剣が刺さっており、貫通して地面に縫い付けていた。
聖霊に流れる血は赤色ではなく、美しい白銀だった。
ぽたぽたと顔に垂れる白銀の血を拭っシンリは言った。
「……ごめん」
『ナゼ……ニンゲンガ……コノヨウナ神話武装ヲ……!?』
聖霊の問いかけは無視して、シンリは懺悔するように独白した。
「ごめん。本当は、本当に、殺されるつもりだったんだ。抵抗とかできないしさ。もう諦めてたんだけど、そんな人間みたいな姿見ちゃったらさ、もしかしてって思うだろ」
『チカラガ……我ノ、チカラガァアアア!!』
「その姿も幻影とか幻想だとか考えなかった訳じゃないし、正直、不死身かもしれないとか考えたりしたけどさ、そこにいて、温かくて、血が通ってるってなら、希望を持っちゃうだろ……夢を、見ちゃうだろ。殺せるんじゃないか、生き残れるんじゃないかってさ。そう思ったら、可能性は低くても、賭けてみたくなった」
『黙レ黙レ黙レ!殺シテヤル!オマエモ道連レニシテヤル!死ネ!死ネ!死ネ死ネ死ネエエェ!!』
聖霊は酷く顔を歪めながらシンリに手を伸ばすが、聖霊の身体は指先から光の粒子へと変わり空中に溶けて無くなっていた。
「本当に悪いと思ってる。だから、最後に言い残す言葉があるのなら聞くよ。聞いて、絶対に忘れない」
『ダァァァマァァァレェェェエエ!!呪ッテヤル!怨ンデヤル!壊シテヤル奪ッテヤル狂ワセテヤル!楽ニ死ネルト思ウナ!救ワレルト思ウナ!オマエノユ行ク道ニ在ルノハ絶望ダケダ!ソレヲ忘レルナ!ニンゲェェェン!!』
「ああ、忘れない」
聖霊が消え去り、金色に輝く剣だけが地面に突き刺さったままになった。
「本当に、これで、終わり、か」
シンリがしたことは、ただ聖霊の背後から【召喚】で森のどこかに刺したままの金色に輝く剣を喚び出しただけだ。
範囲内にあるかは微妙だったが、もしかすると地震の影響で近くに来ていたのかもしれない。
ともあれ、すべてが終わった。
気が抜けて、シンリにも限界が来て地面に倒れ、気を失った。
ピロピロとステフォの音だけがその場に響いていた。
シンリ・フカザト
《称号》
【異界人】【最終者】【生還者】
【疫病神】【毒魔】【害虫駆除】
【苦行者】【災魔】【害獣駆除】
【魔人】【賢者】
《スキル》
【毒霧 Lv.7】【観察眼 Lv.5】【魔力操作Ⅱ Lv.5】
【回復術 Lv7】【ヒール Lv.10】【活性化 Lv.5】
【調薬 Lv.1】【痛み分け Lv.4】【毒無効 Lv.5】
【猛毒耐性 Lv.7】【衰弱無効 Lv.3】【麻痺無効 Lv.1】
【状態異常耐性 Lv.7】【魔力Ⅲ Lv.4】【災厄の予兆 Lv.5】
【キラー:虫 Lv.10】【穴掘り Lv.10】【疫病耐性 Lv.6】
【呪毒耐性 Lv.5】【睡眠耐性 Lv.5】【苦痛耐性 Lv.7】
【痛覚耐性 Lv.8】【飢餓耐性 Lv.4】【探査 Lv.6】
【鑑定 Lv.7】【収納術 Lv.10】【破魔 Lv.4】
【直感 Lv.8】【腐蝕耐性 Lv.4】【生命感知 Lv.1】
【キラー:獣 Lv.6】【人化 Lv.-】【従命 Lv7】
【魔力効率化 Lv.5】【偽装 Lv.2】【影踏み Lv.1】
【空中歩行 Lv.1】【剣術 Lv.3】【敏捷 Lv.4】
【吸収 Lv.1】【結界術 Lv.6】【召喚 Lv.10】
スキルポイント:10
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主人公最強のはずなのに、ボロボロとはいかに……。