一章
「拓也さん」
「なんだい、操也君?」
「本当にすみません、うちの親父があんな感じで......」
「あっはっはっは、操也君が気にすることでもないよ」
「ですけど......」
「昔からあんな感じだったから今さらどうこう思わないよ。それにね、一度息子が欲しいなぁとか思ってたからとても嬉しいよ」
「そ、そうですか」
どう答えていいのか戸惑う操也。
家族会議の後から数時間が経過し、今は車のなかでおじと話し合っている最中。
帰ってきてからすぐに車の中に突っ込まれるとは思わなかったが、もう少しゆっくりしたかった。
荷物は後から送られてくるみたいなのだが、制服とかはもうおじの家に用意されているらしい。
「そういえば、操也君」
「なんですか?」
「君がうちの家に来ることを美夜に教えたらすごく喜んでいたよ
御馳走を用意しなくちゃとか言ってね」
「おぉ、それは嬉しいですね。美夜とももう何年会っていないことやら」
美夜はおじさんの娘で、従兄妹にあたる。
引っ越す前は俺ともう一人とでよく三人で遊んでいたものだ。
なのに、俺は二人になにも言わず遠くへ行ってしまった。
「今度こそは美夜を泣かせたりしないでおくれよ」
「......えぇ、わかっていますよ。引っ越しがあったとはいえ、なにも言わずに出ていってしまったものですから」
途中に休憩や食事などを挟みつつ、数時間が経過し、やっとおじの家にたどり着くことができた。
「長旅ご苦労様、疲れただろう?」
「まぁ、そうですけど、運転していたおじさんの方が大変だったんじゃ」
「確かにそうだね、それじゃ家に入ろうか」
おじの隣に建ってある家を懐かしく思い、眼を細める操也。
帰ってきたんだなとしみじみになる。
これからまたこの生まれ育った街で過ごせることになるとは夢にも思っていなかった。
先に家の中に入っていったおじを追いかけるようにドアノブをひねり、中に入るもなんと言って入ればいいのか迷っていると、
「お帰りなさい、操也君」
「......ただいま、おじさん」
温もりを感じられた。