悪役令嬢にならない理由
俺は王子の婚約者(17歳……男)だ。
公爵家三男の俺は、八歳くらいの頃、四歳年上の王子様に見初められて婚約者になった。
意味が解らない。まず、王子は俺の戸籍を改竄させ女性にしてしまった。
次に俺を女装させ、婚約者にしたいと王に伝えた。公爵家で家柄もバランスが取れており、
特に反対も無かった。
俺の親父(公爵)はそんな裏切るような事できるわけがない!と最後まで反対したが、
王子の押しに結局負けた。
やばい、この国マジやばい。跡継ぎはどうするんだ……。
「第二夫人にでも産んでもらうさ。嫉妬するなよ、俺が愛してるのはお前だけなんだから」
俺の身体が成長すれば、王子の熱も冷めるだろう……。
俺は現在、17歳。
髭も生える。声変わりもする。背も伸びた。
「どうだ、王子。俺の事嫌いになったか?」
「髭って、その産毛か?声変わりしても相変わらずソプラノボイスなのにか。背も数センチを伸びたって言わない」
王子、身長180、体重64、細マッチョ。俺、身長161、体重47、華奢な体躯
世の中は不公平だ。
身長があと30センチ伸びて王子みたいに筋肉が付けば良いのに。
本当に結婚するのか……。そう思っていた矢先……。
綺麗な顔立ちの女性が王子と色々な男達の逆ハーを引き連れてやってきた。
王子が俺の方を指差して言った。
「君には失望したよ、そんな尻軽だったとはな!婚約解消だ!」
「……はぁ」
この王子は何を怒っているんだろう。
「何か最後に言う事はあるか?」
「……ありがとうございます?」
「違う!お前はこのカミラ嬢の兄と寝たんだろう!」
「アァ……?」
いかん、ブチっとキレそうになった。何で相手が男なんだよ。
「それだけではありませんわ!この人は私を階段から突き飛ばしたり、王子様に近寄るな、と言ったんですわ!」
こいつ、誰だよ。
「カミラ嬢を突き飛ばすよりも大事なのは、浮気だ!」
「何を言う王子。こんなに美しいカミラ嬢を突き飛ばしたんだぞ!」
外野の宰相の息子が俺に向かって叫ぶ。こいつ暑苦しくて嫌いなんだ。
「突き飛ばしてないっすよ……」
「そもそもお前は言葉遣いもなってない。校則で決まった制服を着用しない。常に男装する。
それでも公爵の令嬢か!」まあ、見かけだけは、その。可愛いがな……。
そう赤くなりながら付け加える宰相の息子を睨みつけブッ殺すぞ!と脅しを入れておく。
「とにかく、君は国外追放だ!」
「身に覚えが無いんですけど、婚約破棄だけで何とかなりませんかね?」
「なるか!お前はカミラの兄と、い、いちゃいちゃしたいんだろう!そんな事は許さないからな!」
王子がいちゃいちゃという言葉で詰まる。そんなに嫌なのか。
「そもそもカミラって誰なんですか」
「私よ!」
そう言って、逆ハーっぽい少女が手を上げる。
「このビッチめ!王子様という婚約者がありながら私の兄にまで手を出して!お兄ちゃん、この女よね!」
「ああ、俺はこの女性と、最後までやってしまった」
そう言って追加の男が出てくる。話題のカミラの兄だろう。
「女性だと……?」
王子が気付く。俺は戸籍から学校の登録、何から何まで女性で登録されているのだ。
「その、最後までというのは、子供を作る所までか?」
「はい、そうです。申し訳ありません、王子の婚約者をお取りしてしまいました」
「いや、それはいい。よく見たのか?尻の穴に入れているかもしれんだろう?」
「いえ、明るくしたままが好みだといわれたので、明るい場所で事に及びましたので」
ドヤ顔をする逆ハー女性。
このビッチめ、と罵る逆ハー要因イケメンズ。
「そうか……。来週この件について、まとめる事にしよう」
翌日、俺の元に現れた王子は言った。
「もしかして、本当はお前は女なんじゃないか?」
「ブッ殺すぞ?」
そして確認してみないと、と俺は服を脱がされ王子に三時間の間、視線で嬲られ続けた。
翌週、逆ハー女が国外追放になったのは言うまでも無い。
2015.08.29 13000PVになりました。
読んで頂きありがとうございます。
指摘がありましたので、主人公の体重を少し変更しました。
2015.09.01 35000PVになりました。
沢山の人に評価やブックマークを頂き、驚いています。
読んで頂きありがとうございました!