⑥
いつもなら帰宅した音を聞きつけて、すぐ伸夫が玄関まで出迎えに来るはずだが。
廊下を歩き進めばガタガタと音はするのでそちらへ向かえば台所に大きな背中が見える。
「伸夫?」
声をかけると座り込んで棚の中を覗いていた伸夫が振り返る。
あ、頭をぶつけた。
「あ、おかえり~、ってイテッ。もうそんな時間~?」
呑気に応えているが
「これはいったい、どういうことだ?」
台所には物が散乱していた。
◇◇◇◇◇
「だって、ほら、俺、お嫁さんに来たのに何もしてないなって思って…」
お嫁さんらしいこと=料理と考えたらしい。
「包丁とかドコにあるか分からなくって探してたら…」
言うごとに床に正座した身を縮こまらせる。
『お嫁さんになりに来ました』そう言う気持ちはどこまで本気なのか。
そこまでこちらも気にしていないが。
「いいよ、オレが作るから」
自分が食べる程度のものなら、ある程度は作ることは出来る。伸夫が来てからも食事を作っていたのは自分だ。
「うん、ごめんなさい…」伸夫は謝るが
一応、伸夫なりの気遣いの結果がこうなっただけなので怒りは無い。
「一緒に作るか?」
うなだれていた伸夫が顔を上げる。
「で、何を作ろうとしていたわけ?」
足下にはすり鉢やら寿司桶が並んでいた。
それなりに昔は、この家にも人がいた証拠の物だ。
「カレーライス♪」
それまでしおらしくしていたくせに。
後片付けは大変だったが2人で作ったカレーはそこそこ美味かった。
これからイチャイチ増し増し予定なり~。




