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伸夫が家に来て数日が経ち、未だ詳しい事情は聞かされていない。
それでも2人で過ごす生活は自然なものになってきていた。
家族の介護の為に出世の道から外れた仕事を就業時間内に終わらせて、特に趣味も無い自分は毎日同じ時間に家に帰り着く。
たまに「残念だったな」と言われることもあったが他者と競って上に立つ気持ちはとうに無い。
身を固めることを勧められた時もあるが単に家族の面倒を肩代わりさせるためのものにしか思えず首を縦には振れなかった。
気楽ではあったし、自分がなるようにしてきた結果ではあるが周りを見回せば同年代の人々や友人達からは取り残されたのだと寂しく思う気持ちもどこかにあった。
祖母が亡くなってから、そんな事を考える機会が増えていたが
そんな気持ちも暫くすれば慣れてしまうだろう事も過去に経験し知っていた。
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「龍兄ちゃんはまだ33のくせに考え方が年寄りなんだよー」
伸夫は思ったことをすぐ口に出す。
体も大きく、我慢することも少なく伸び伸びと育ったのだろう。
伸夫の存在は家に染み付いた、ひっそりと年老いた空気を払拭する。
家に帰れば「おかえり」と笑顔で迎えられ「ただいま」と返事をする自分がいて
それは今までとは違う日々だ。
これNLでも大丈夫だったわ~。とか今更ながらに思った。いや、最初に書いた時がBでLな設定だったからな~。