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無知

作者: 倉下 漂

 きっと俺は殺人を犯した。

 俺はどこにでもいる会社員。身分は高すぎず低すぎず、俗にいう中間管理職だ。

 

 珍しく残業する必要がなく、早く家に帰ることができたある日のこと。なんとなく空を見たくなった。空というか星だろうか。とにかく、頭上を見上げたくなった。残業がなくなり舞い上がっていたのだろうか。駅へ向かって歩いている途中、交差点で信号に引っかかった。信号は青から赤に変わったばかりなので青になるまでそれなりに待つだろう。時間があったから上を見た。見上げた。空には雲が広がっていて星は見えなかった。残念だと思って前を向いた時、後ろの人が背中にぶつかってきた。振り返ると人が倒れていた。意味不明。なんで倒れている。どうしたらいい?救急車を呼ぶ?周りの人に助けを求める?突然の出来事にパニックになる。頭の中がゴチャゴチャになる。

 冷静になるのに時間が掛かった。冷静になり始めた頭で周りの状況を分析する。人は居ない。出血はおそらくなし。意識も同じく。自分が平気だから、有毒ガスの可能性は低い。おそらく発作。救急に連絡。応急処置……の前に意識の確認。声かけ、肩を叩いて声かけ、反応なし。やはり意識不明。気道確保。救急車はまだ来ない。心臓マッサージしなきゃ。誰か来ないかな。心臓マッサージ出来る自信ないな。遠くからサイレンの音が聞こえる。救急車かな?何をしたらいいんだ?死んでたらどうしよう。他人のために何してるんだろう。

 そして、俺は遠目に救急車が到着するのを見てその場を去った。救急車を呼んだら、通報時の状況を伝えたりするためにその場に居なければならないことは知っていたが。


 サイレンの音が遠ざかっていくのを聞きながら、俺は家に帰った。電話がかかってきた。父からだ。

 「親戚の人が亡くなった。心臓発作らしい、俺も今から行くがお前の住んでるとこの近くだから先に病院に行ってくれ」

 病院で再会した。俺のせいで死んだ人。病院の先生は、発作だったので救急隊が到着した時には亡くなっていたと説明していた。それを聞いて俺は心の底から後悔した。俺は無知によって人を殺したのだ。殺人を犯したのだ、と。

読んでいただきありがとうございました。


今回は、無知がテーマです。無知による殺人。内容は知識的なものでしたが無知による殺人って色々ありますよね。

「知らない」でも結果的に殺人。そんなサスペンスにもならない物語でした。

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