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作者: 月詠 奏

 夢ってなんだ。夢を見るのが子供で、夢を諦めるのが大人か? いや、違うだろう。このカフェ&バーで働き出してはや3年。同じ毎日を繰り返すだけの日常を受け入れたのはいつだったろう……


「ありがとうございました。ごゆっくり」

 日にいったい何度この言葉を聞くだろう。もう何も考えなくても夜の仕込みを始められる自分をあざ笑うかの様に今日は「将来の夢」を語る就活生が多い。その中でも、夕方に来た3人組はもう30分以上も議論を交わしている。初めは敬語の混じったよそよそしさがあったが、話しているうちにどんどんヒートアップしているようだ。カクテルのための氷を大量に砕いているカウンターの中の俺にも聞こえるくらい。

「結局、何をベースにするん?」

「建物かなぁ? 最初に興味持ったのは建物だし」

「ならその建物で何がしたい? そこはっきりしとかんと仲間になってほしい人に声かけにくいよ?」

「ピーマンの中身決めんと」

「んー……」

 なんてやり取り。3人とも目をキラキラさせて、楽しそうに、真剣に話している。あれは、きっと「夢」の話。現実可能かも怪しい、夢物語。それでも。

「実現できたら最高やね!」

 俺はこの3年、何をしていたんだろう。俺の「夢」はなんだ?


――バーテンダーになること。しかも世界一の――


いつから考えなくなった? いつから目を背けてた? これではただの怠慢だ。

「何も考えないで氷割ってるだけじゃ、駄目だよな」

隣で同じように就活生の話を聞きながら仕込みをしていた同僚がいう。

「夢かー。いいねぇ。いつから俺、夢語らなくなったかなぁ」

 ふと、思いついて言ってみる。

「そういやさ、俺、夢あるんだわ。あの子らのおかげで思い出した」

 何の気なしにだろう、同僚は

「お? 何なに。いいじゃん。教えろよ」

 興味があるような、無いような。でも、わくわくする感じ。

「俺、世界一のバーテンになりたいんだわ」

「ん? いいんじゃね?」

 なんだか頑張れる気がするんだから不思議だ。

「ごちそうさまでした」

 そういいながら帰って行った、彼らの「夢」はどういうものなのだろう。詳しく聞きたいかもと思う。ま、何より。

「ありがとう。大事なもん、思い出したわ」

 「夢」を思い出してから見た景色は、鮮やかな色が広がっていた。



Fin.


依頼してもらってできた作品。

体験談を元に書きました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい、、短編だからではない。 情景描写に関する記述等を極力少なくして、早くも内容の中核の一つである3人組の会話文が始まるからだろうか。 しかも、変な会話をしている。全く何の話かは不…
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