序幕
はじめましての方ははじめまして、家鴨です。
この小説は、まぁ、ほぼ一年前に執筆したものです。なので、内容も文章も稚拙、ですが、どうぞよろしくお願いします。
地下世界。
それは現国王「天文」の絶対王政時に、試験的に造られた場所。
国土の下に巨大な穴を掘り、そこをコンクリートで固めただけの巨大な地下室だ。
封建的身分制度によって最下層に位置した者は全て、この場所に移住を強制された。
総面積、約七〇平方キロメートル。総人口、百万人。
出入り口はただ一つ。
しかし、そこは黒い騎士團とよばれる武力集団が守っている。
通称『パズルの塔』
それは、百万ピースの立体パズルによって造られた巨大な塔のこと。
この塔はこの巨大な地下室の中心にある。
しかし、これはただのお飾りで立っているわけではない。
もちろん、何らかの企みの元この塔は立っている。
案の定、そうであった。
この世界には数少ないが規則がある。
その規則の中にその企みはあった。
以下はその規則である。
『パズルの塔』これは、諸君らを試すため作り上げた塔だ。
この塔は諸君らの人口分のピースで造ってある。
もし、このピースが一つでも欠けた場合この地下世界は一〇日後に滅亡する。
改善策はある。
その欠けたピースを見つけ出し、元の場所に戻せば滅亡する事はなくなる。
しかし、もし一〇日後までにピースが元の位置に戻らなかった場合、この地下世界は滅亡する。そして、その欠けたピースを持っていた者は即、地上世界に戻れる事を約束しよう。また、ピースか欠けた時点で『パズルの塔』からピースを取る事はできない。
ただし、諸君らはどのみち一〇年後には地上世界に戻れる。
そしてこの地下世界は誕生した。
✝
少年は長年整備されていない道路近くにある大きなドラム缶の隣に座っていた。
生きる気力を失くしたような目は人間の物とは思えないうっすらとそまった赤色で、薄い唇からは鋭い犬歯が覗いている。蒼白の顔に少し長めの黒い髪。くせ毛なのか、先の方は変なうねり方をしている。紺色の制服を身に付けており襟もとはだらしなく緩んでいる。本来はるはずのネクタイはない。手にはグローブが嵌められている。
その少年の目の前には異様な雰囲気を放つ一五、六の少女がいた。
白い髪を腰まで垂らし、幼さが残る整った顔立ち。しかし、彼女の顔の左半分は赤い十字架のタトゥーが彫られており人目を引く。そして、少女はうさぎの耳がついたピンク色のパーカーを着ていた。そして、チェックの制服のスカート。
この二人は向き合ったままずっとお互いを観察していた。
緊迫状態の空気を初めに破ったのは少女の方だった。
少女は少年を見下ろしてこう言った。
「君、ボクに従う気はあるか?」
と。いきなり、少女は名乗りもしないで見知らぬ少年にそう言った。
少年は眠たそうな目で少女を見上げた。
「ないよ」
「妥当だ。そして、ボクは君が気にいった。名前をお聞かせ願おうか」
そう言って少女は少年と同じ目線になるようにしゃがみこむ。
「ちなみに、ボクはレヴィン。第七ブロックで探偵事務所に所属している高校生だ」
少女、レヴィンはそう言いながら少年に名乗るようにせかす。
「白夜」
「白夜君か、しかし、吸血鬼に会うのは久しぶりだな」
レヴィンはそう言いながら白夜の頬を触る。そして、こう紡ぐ。
「君、居場所ほしいだろ。なら、ボクが作ってやる。丁度、人手が足りなくて困っていた所でね。どうだい、働いてみないか?」
「・・・・・・別にいい。居場所はある」
「そうか、それは残念だ」
そう言ってレヴィンはスカートを叩きながら立つ。そして、パーカーのポケットから一枚の名刺を取り出して白夜に差し出した。
「気が変わったらここに来てくれ。いくらでも待つ」
そう言ってレヴィンは白夜に背を向けて去って行った。
しばらく白夜はその名刺を見つめていたが、何を思ったのか立ちあがり無造作に名刺を制服のポケットに突っ込むと裏路地の方に歩いて行った。
その様子を立ち去ったはずのレヴィンが見つめていた。
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