表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

娘が明日、沖縄に行く。

作者: でんでろ3
掲載日:2011/09/19

 沖縄に行ったこと? あるよ。 思い出? あるよ。



 何年前だろう? ああ、去年、勤続20周年だったから、21年前か。就職1年目の新人研修で、沖縄に行った。

 別に自慢ってわけではないが……、その実、ちょっとは自慢なのだが……、誰でも行けた訳ではない。……運が良かっただけかも知れんが……。

 たった1泊しただけだ。当然、夜は、街に繰り出すことになった。(スイマセン。見栄張りました。私、そういうことしたこと、ありませんでした。噂にしか聞いたことのない「ディスコ」なるものに行くと言うので、心躍りました。……あ、あの頃は、あくまで「クラブ」じゃなくて「ディスコ」でした。)

 人数が多かったので、数台のタクシーに分乗していくこととなった。(そこで、あんなことしなけりゃなー)いつもは自己中心な私が、なぜか、その時は、控えめに、他人に先を譲り、結局、私を含めた3人で最後の1台に乗った。

 乗って、初めに驚いたのは、沖縄のタクシーの初乗り料金の安さだった。鉄道が無い分、安いのかな? と、思った。

 さて、待ち合わせの場所で、タクシーを降りると、誰も居ない。1人も居ない。痕跡すらない。しかし、そこで、おいてきぼりを食った事実を実感する前に、「あぁーーーっっっ!!!」とでも表記したい大声が、私の耳に突き刺さった。

 声の主は、一緒にタクシーでやって来たHさん。

「どうしたんですか?」

聞きたか、なかったが、聞かないことには、始まらない。

「ホテルの鍵をタクシーの中で落としました」

「フロントに預けなかったんですか?」

「ええ」

「でも、くれぐれも持ち出さないように言われましたよね」

「はい」

「だけど、持って来ちゃったんですね」

「はい」

「……ホテルに戻りましょうか」

「すみません」


 まぁ、ケータイはおろか、ポケベルすら、普及していなかった時代だ。どの道、後を追って合流なんて、不可能だったのだが、未練がましくする時間くらい欲しかった。


 ホテルに戻るタクシーの中で、Hさんに聞いた。

「運転手さんの名前が分かるといいんですがね」

「あっ、分かります。覚えてます」

Hさんは、助手席に乗っていたので、目の前に名札が有ったのだ。

「へぇ、それでも、凄いですね」

「でも、タクシー会社の名前が分からなくて……」

「ああ、私、覚えてます。ジャイアンツ・タクシーです」

沖縄って、巨人ファンが多いのか? と、奇異に思ったので、記憶に残っていたのだ。


 さて、ホテルに着き、事情を話して、謝って、ジャイアンツ・タクシーに電話してもらうことにした。しかし、ホテルの人が言うには、ジャイアンツ・タクシーは、とても小さなタクシー会社なので、なかなか電話が繋がらない、とのことだった。

 そして、それは、本当のことで、1時間以上フロント前のロビーで待ったが、結果として、ホテルの人に、「どうしても電話が繋がらなかった」と、言われた。


 さて、困った。どうしよう。その時、名案が閃いたのさ。

「こうなったら、道路に出て、なんでもいいから、ジャイアンツ・タクシーを1台捕まえて、無線で会社に連絡してもらいましょう」


 しかし、さしものレアものタクシー。なかなか通りかからない。とはいえ、30分以上待っただろうか。1台のジャイアンツ・タクシーがやって来た。しかも、「空車」の表示。死に物狂いで止める。Hさんが、勢い込んで助手席のドアを開けてもらい、中に頭を突っ込む。

「実は、さっき、ジャイアンツ・タクシーに乗って、ホテルの鍵を……って、あーっ! あなたはさっきの運転手さん!」

こういう、要らんところで運を使うから、欲しいところでツキが来ないんだろうな。その運転手さんは、さっき乗ったジャイアンツ・タクシーの運転手さん、その人であった。

「これでしょ」

と言って、運転手さんは鍵を返してくれた。


 てこずった割に、最後は、劇的にあっけなかった。


 でも、まあ、Hさんは上機嫌。

「お礼におごらせて下さい。たしか、プールサイドにビヤホールが……」

無かった。

「じゃあ、中のレストランで……」

閉まってた。


 自動販売機で買ったオリオンビールを、男3人で、ツマミも無しで、ちびちび飲んでいると、ディスコに行った奴らが帰ってきた。

「いやー、楽しかった!」

その後、とうとうと、いかに楽しかったか、話していた。

「どうして来なかったの?」でも、「来れば良かったのに?」でも、なかった。完全に、数に入ってないことが良く分かった。



 えっ? ディスコに行った事が有るかって? いや、結局、無いんだけどね。

 なんだよ。その、意味深な「ふーん」は……。

 はぃはぃ、分かってますよ。ディスコなんて、柄じゃ、ありませんよ。


 まぁ、おまえは、ガッツリ楽しんでおいで。あんまり見苦しくない程度にね。


                                   (おしまい)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ