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大人のための恋愛問題集  作者: 華奢 素数


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【第一問解答】夜道に、ふたり《※2026年9月1日(火)長坂氏・再取材》


------------------------------【問題】------------------------------

※(注意)この問題の本文は 【第一問】夜道に、ふたりを参照してください


長坂さんは「前職の上司で不倫関係にあった高橋さん」を自分の会社に引き抜いています。半年前に彼女は「僕」と寝ています。この時点ではまだ不倫関係は継続していたと思われます。長坂さんはどのような恋愛上の企みや意図があったうえで、半年前に僕と寝たのか具体的引用を用いながら、述べなさい。(300字以上400文字以内)


------------------------------【解答】------------------------------


 長坂さんには、不倫相手の高橋さんに「他の男(僕)」の存在を勘づかせて嫉妬心を煽る企みがあったと考えられる。彼に焦りを与えて自分優位に立ち、本命として手に入れるための策動である。


 一度目の夜、二人は「ニンニク入りを」「しこたま食べた」後に彼女の家へ向かっている。あえて「性関係に発展しない」安心感と油断を「僕」に与えて警戒を解き、土壇場で「明日の予定は、キャンセルします」と主導権を奪って自室へ誘い込んだ。そして「歯ブラシ」を残させ、同じ部署の「僕」との密かな関係を固定化した。「酔っぱらってもいなかったし、寂しくもなかった」と振り返る「僕」の無防備な隙に気づき、彼女は冷静に動いていたと言える。自社への転職を誘った高橋さんに「僕の歯ブラシ」や「僕」という男の影を暗に匂わせて嫉妬を誘発し、同時に不倫破綻時の保険としても「僕」を囲い込む、高度な二重の恋愛戦略だった。(381文字・改行・空白含まず)



------------------------------【長坂さんへの単独インタビュー】------------------------------

※2026年9月1日(火)14時~16時、奈良県奈良市内・某レンタル会議室にて

なお登場人物の「僕」は仮名でも表記NGであったため、問題本文どおり「僕」で記載しています。

※その他、登場人物の名前は、仮名です。


——本日はお忙しい中、取材をお受けいただきありがとうございます。半年前の「一度目の夜」から先日の出来事について、当時のご自身の心理や企みについてお伺いできればと思います。


長坂: ……はい。覚悟を決めて来ましたので、お話しできる範囲でなんでも聞いてください。


Q1:前職の上司だった高橋さんを、わざわざご自身の会社に引き抜いた背景にはどのような意図があったのでしょうか?


長坂: 単純に自分の手元に置きたかったからです。前職からの不倫関係は続いていましたが、関係性としては常に不安定でした。だから同じ会社の同じ部署という、彼が逃げられない距離に引きずり込むことで、私優位の関係に再構築しようと企んでいました。



Q2:その高橋さんを引き抜く裏で、半年前に「僕」と一度目の関係を持たれていますね。不倫関係が継続していたこのタイミングで、なぜ「僕」と寝たのですか?


長坂: 高橋さんに「他の男の影」を察せさせて嫉妬心を煽り、焦らせるためです。もうすぐ自分と同じ部署にやってくる高橋さんに対して、私には他の男もいると暗に匂わせることで、私の価値を跳ね上げ、彼を本命として完全に手に入れるための仕掛けでした。同時に、万が一不倫関係が破綻した際の「保険」としても使わせてもらった、ということです。



Q3:一度目の夜、「ニンニク入りの餃子をしこたま食べた」あとに「僕」を自宅へ誘っています。ここにも計算があったのでしょうか?


長坂: もちろんです。あえて「ニンニク餃子を食べに行く」という、普通なら性的関係に発展しないような状況を演出し、「今日は何も起こらない」と「僕」に安心感と油断を与えました。そうやって警戒を完全に解かせておいて、土壇場で「明日の予定は、キャンセルします」と主導権を奪って家に連れ込んだんです。



Q4:その際、「僕」の歯ブラシを自宅に残させたのも計画通りなのですか?


長坂: ええ。同じ部署の「僕」との密かな関係を固定化するためです。「僕の歯ブラシ」が部屋にあるという事実や、社内での「僕」の存在を感じさせることで、後から入社してくる高橋の焦りと嫉妬を誘発するトラップとして残させました。



Q5:しかし二度目の夜、歓迎会の帰り際に高橋さんが奥様に電話しているのを聞いてしまいますね。


長坂: ……「やっぱり、わかれてなかったのね」と現実を突きつけられました。引き抜いてまで手元に置いたのに、彼は私ではなく家庭を選んでいた。私が仕掛けた嫉妬の罠も届かないまま、本命としての企みが完全に崩れ去った瞬間でした。



Q6:その直後、「高橋さんのこと、好きなんですね」と見抜かれた際、あなたは「僕」の手をぎゅっと「貝殻握り」されましたね。あの瞬間の心理は?


長坂: 図星を突かれた恥ずかしさと同時に、「この人は私のドロドロした部分を分かった上で一緒にいてくれる」という猛烈な安堵と甘えです。高橋に捨てられた惨めさから逃げるように、壊れそうな心で「僕」の手に必死にしがみついていました。



Q7:ですがその直後、切れかかった街灯の話で「そうだね」と言って手を離し、彼に腰を抱き寄せられてよろめきながら歩いていきました。あの結末についてどう思われていますか?


長坂: 街灯の話にかこつけて、「私を高橋の代わりに乗り換えるのか(交換しないのか)」という現実を突かれて、一瞬我に返って手を離してしまったんです。でも、彼が腰を引き寄せてくれた時、拒絶なんてできませんでした。もう自分ひとりで立ち直れるような自尊心なんて残っていませんでしたから。「僕」という歪な足場にしがみついて、そのまま二人で暗闇に流されていくしかなかったんです。


——生々しく、そして冷徹なまでのご自身のお気持ちを明かしていただき、本当にありがとうございました。インタビューは以上となります。


長坂: ……ありがとうございました。これで、彼の気が済むならいいんですけど。


——彼って、「僕」のことですか、それとも「高橋」さんのことですか?


長坂: (ふっと目を細めて小さく微笑み、口元に人差し指を添えて)

……ふふ、どっちだといいですか?


そう言い残すと、彼女は深く会釈をし、答えを曖昧にしたまま静かに席を立った。




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