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転生したおっさんは2回目の人生こそ小説家になりたい

作者: ヤナギ
掲載日:2026/05/31

「いい? 学校は勉強が大事だからね? シンくん」

「知らねえよ、お前の好都合なんか」

「まーた、そんなこと言う」


ぷっくり、と頬を膨らましてくる幼なじみのガキ。

まあ、このオレも高校生のガキなんだが。


30代で死んだオレにとっては高校生なんざガキ中のガキだ、性欲も起きない。


「しかし、本当に凄いな、お前らの家。

いや、屋敷か?」

息を吐く。

「そう? 普通だけど」

「普通、ね」

また、息を吐く。


大きな門をくぐり、もうずいぶん走ってるはずなのに、全く屋敷の形が見えない。どうせ、家じゃなくて屋敷なんだろう。まあ、これでちっぽけな家だったら、それはそれで面白い。幼なじみとして慰めてやろうか。


制服を来たオレらが乗ってる車も、真っ黒で細長くて防弾機能でもついてそうな立派な車だから、やっぱり屋敷なんだろう。慰める言葉の準備は要らないかもしれない。褒めようかな、喜ぶはずないか。


「勉強しないと大学行けないよ?」

「行かなくていいんだよ、オレは。それよりも本読みたいね、本。明日から夏休みなんだからさ」

「だーめ、シンくんは勉強するの」


『明日から夏休みだね』

式の後に笑顔で言われたことは覚えている。


気付いたらこの車の中にいた。

手首を縛られていないことが唯一の救い。

いやいや、十分サイコだよ、サイコ。


「夏休みは勉強だからね? ずっと」

「高校生最後の夏休みが…」

「覚悟してね?」

「オレは何をされるんだ?」




…。


「ふう」

手を止める。


本を読もう、と手を伸ばす。


スマホが鳴り、伸ばした手を止める。


…。


「よし」

手をスマホに…鳴る。


「ヤバイな、全く本が読めねえ。

ハハッ。

1人きりのはずなんだが?」

首をひねる。


今は、オレのための部屋。

まずビックリするのがその広さ、オレが死ぬまでに住んでいたアパートの部屋と比べたら失礼なくらない広い。


布団もあり、タンスもあり、

参考書やプリントもたくさんありやがり、

本が鞄に入れていた3冊のしかない。


まさに、勉強するための部屋。

てか拷問。新しい高校生用の拷問部屋、勉強が拷問部屋とは…。


おまけに、ちっちゃい監視カメラで監視されてるし、恐らく。

恐ろしい。


高校生のガキに監視されている、ということ。そして、それがこの人生での幼なじみで、そいつは生徒会長でもあるということ。


…、

これを作品にしようか。

肖像権…。


トントン、ノックの音がする。


「シンちゃん、入るよ?」

「…来たか」

本当の幼なじみ。


何十年か振りの再会だったりする。




「久しぶり、シンちゃん」

「お前の娘やっべえな」

「再会第一声がそれ?

相変わらず、なれもしない小説家の夢を追ってるらしいけど。その若い人生でも」


着物を着た女性。

何歳に結婚したかはわからない。

だが、街で娘と歩いても姉妹だと思われるだろう。それくらい若く見える。


「何で気付かれたんだ?」

「私の知ってる人にそっくりだったから。言動が。

あの子は知らないようだけど」

「知っても理解するのかな」

「しないでしょうね。

使ってる筆名が同じだったから、信じたけど」


「今はあの子には勉強させているけど、どうかしら、少し話でもする?」

「話ね」

「勉強の素晴らしさについて」

「学校だけだろ? 勉強なんて」

「学校は勉強する所。いい大学に入って、いい会社に入るために」

「今は学歴なんてどうでもいいんだよ」

「そう?

けど、とりあえず、学校では勉強しないと。小説家なんて目指すのは後にして」


娘がああなのは母親がこれだからか。

幼なじみで、娘と同じく生徒会長だった奴。


トゲは少し落ちたようだが、相変わらず勉強主義。


「そのいつまで続くかわからない2回目の人生で、夢を叶えることができるか、怪しいというのに」

冷静に、淡々と。


「お茶とお菓子を持ってきた。

では、監視カメラでバレないように、長居すると怪しまれるから」

「やっぱ監視カメラあるのかよ」

「大切な娘のお願いだから」

アイツのお願いだった。やっぱサイコか。


机の上に、お茶と和菓子を置く。

頭を下げ部屋から出ようとする。


「立派になってて、幼なじみとして嬉しいよ」

オレの言葉を耳にし、少しかたまる。


「私も、転生してくれてよかった」

淡々、しかし暖かみのある声で言ってくれた。


…。

「さて、本を読もうかな」


手を伸ばす、

すぐにスマホが鳴る。


「いや、本読ませて?」

参ったな。

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