いちごミルクの秘密
掲載日:2026/02/20
先輩の指先は、いつ見ても長くて綺麗だ。
無駄な力が抜けていて、だけど品がある。
その手が、今日コンビニの袋から取り出したのは——いちごミルクだった。
淡いピンクのパッケージが、指に触れた瞬間ふわりと浮いて見える。
思わず二度見した。
「あれ、先輩。いちごミルクなんて飲むんですか?」
「ん? ああ、最近ハマってて」
先輩が少し照れたように笑う。その表情がなんだか妙に胸に刺さる。
――そういえば友達が言ってたな。
“かっこいいよりかわいいの方が沼なのよ。だってかっこ悪くてもかわいいはあるんだから。”
最初は意味がわからなかったけど、今ならちょっとわかる気がする。
完璧じゃなくても、ふとした無防備さ一つで、勝手に心が攫われていく。
いちごミルクを片手にした先輩は、まさにそれだった。
ずるいくらい「かわいい」。
「何、そんなに変か?」と先輩が首をかしげる。
「……変じゃないです。似合ってます」
「似合ってるって……いちごミルクが?」
「先輩が、です」
言った瞬間、自分の頬が熱くなる。
先輩の手が一瞬止まり、ふっと目を細めた。
「そっか。じゃあ今度、君にも一本おごってやるよ」
そんな些細な言葉に、なぜか心臓が跳ねた。
いちごミルク一本で、こんなに幸福になれるなんて。
やっぱり——かわいいは、沼だ。




