5.5話「誤算」(サブストーリー)
ヨコの独白「――俺は愛の戦士ヨコ。
アビスとかいう化け物に襲われたところを
イズナさんと言う女性に助けられ一目惚れ。
アクトに加入することにした。
アクトに加入し、イズナさんと同じチームに入れば、
ラブコメ的な展開が期待できる!と思ったからだ。
しかし、現実はあまく無かった。
来る日も来る日も化け物との戦闘の日々。
その戦闘も終われば、各自別行動。
いつまで経ってもラブコメの"ラ"の字すら見えてきやしない。
そんな生活に痺れを切らした俺は
今夜"ある作戦"を決行することにした。」
アクト本拠地の廊下。
ヨコは周囲を警戒するように、きょろきょろと視線を泳がせながら歩いていた。
ヨコ(イズナさんは……
確かこの時間にシャワーを浴びていたはず……)
日頃のリサーチ活動(本人談)により、
シャワータイミングを知っていた彼は
Dチーム専用のシャワールーム、その入り口部屋へ足を踏み入れた。
シャワールームの入り口部屋には時計が置いてあった。
入り口部屋には曇りガラスのドアがあり、
そのドアの向こうは脱衣所となっていた。
その曇りガラスに人影が映った。
黒く長い髪を下ろした、細身のシルエット。
やがてその影は、
さらに奥のシャワールームへと消えていった。
ヨコ(いしし、やっぱりいた!これで作戦に移せる!)
ヨコはそう言うと入り口部屋の時計を見た。
時刻は18時10分を指している。
ヨコ(男子の使用時間は16時から18時まで。
女子のシャワールーム使用時間は18時から20時まで。
だから、この時計を40分前に戻せば…)
ヨコは時計の針を戻し17時30分にした。
ヨコ(はい、これで偽造男子タイムの完成!
シャワーの利用時間はこの時計で確認する。
脱衣所へのドアには鍵がない。
だから、イズナさんがシャワー室から出てきたところを見計らい、
俺が“時間を勘違いした男”として入れば――
大義名分のもとイズナさんの裸を見れてしまうというわけだ!
名付けて、時計に罪被せちゃおう大作戦!
うーん、やっぱり俺って天才!)
ヨコが顎に拳を当て、ひとり悦に入っていると――
ガチャ。
奥のシャワールームから、扉の開く音。
曇りガラス越しに、再び人影が映った。
ヨコ(よし、イズナさんが出て来た!
それでは作戦を決行するか!
くくく、ラブコメが無けりゃあな、
自分で作っちまえばいいのさ!)
ヨコは邪悪な笑みを浮かべた。
そして、わざとらしく声を張り上げた。
ヨコ「いやー、汗かいたなあ!
……お、時計見たらまだ男子タイムじゃん!
よーし、シャワー浴びよっと!」
さらに、満面の笑みで――
完全に“事故”を装った台詞を先走らせながら、
脱衣所のドアを開ける。
ヨコ「って、あ、イズナさんいたの!?
ごめーん!気づかなかっ――」
!!!!!
――言葉が、喉で凍りついた。
そこに立っていたのは、イズナではない。
髪を下ろし、濡れた気配を纏った
――キリヤだった。
時間が止まったかのような沈黙。
キリヤは何も言わず、ただ静かにヨコを見つめている。
その長い沈黙に、ヨコの喉だけが鳴った。
キリヤ「……誰がイズナだ」
ヨコの顔から血の気が引いていく。
ヨコ「キキキ、キリヤさん。なんでここに。」
キリヤ「新人のテストに付き合ったら汗をかいてな。
イズナとマシロに頼んで、先に使わせてもらったんだ。」
ヨコ「そそそそんな!
じゃあ俺はこれで・・!」
逃げるようにドアへ手を伸ばした、その瞬間――
ガシッ!
ヨコの肩をキリヤが掴んだ。
キリヤ「……待てよ。
さっき、なんで俺をイズナって呼んだ?」
ヨコ「そそそ・・それは・・」
キリヤの視線が、入り口部屋の時計へと移る。
……17時40分。
次に、ヨコを見る。
キリヤ「……いじったな。」
キリヤは視線を逸らさなかった。
ヨコ「こここ、これは出来心でして・・・」
キリヤ「未遂でも十分だ。」
ポキッ、ポキッ。
キリヤの拳から準備運動が完了する音がした。
キリヤ「歯ァ、食いしばれ。」
ヨコ「ひひひ・・・
ひぎゅあああああああああああ!!!!!!!!!!」
その夜、アクト本拠地にヨコの断末魔が響き渡った。
煽り:愛の戦士、ラブコメ創造という聖戦に挑み、散る――!
※6話へ続く




