3.5話「交流」(サブストーリー)
深海に響く重い足音。
ゼビウスは王座に腰を下ろし、冷たい声で命じた。
ゼビウス「さて、今日も選別を開始するか。連れて来い。」
その指示に従い、手下のアビスが一人の子供を引きずってきた。
スマホを握りしめた少年――キヨシ。
顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
キヨシ「離して!離してよ!」
ゼビウスは興味なさげに少年を見下ろす。
ゼビウス「なんだ、子供ではないか。
能力透視」
光がキヨシを包む。
名前:キヨシ
アビスエネルギー:1
能力:なし
ゼビウス「ちっ、やはり予想通りだな。
吸収しても何の足しにもならんが仕方ない。」
ゼビウスは一瞬だけ、少年の必死な顔を見た。
だが、すぐに興味を失った。
ゼビウス「吸――」
キヨシ「ま、待って!僕を殺そうとしてるんでしょ!
だったら死ぬ前にありったけの石でガチャさせて!
じゃないと死んでも死にきれないよ!」
ゼビウス「ガチャ?なんだそれは?」
キヨシ「スマホでできるゲームのガチャだよ!
ずっとハマってやってたんだ!
最後ぐらい貯めた石でガチャさせてよ!」
ゼビウスは眉をひそめたが、少年の必死さに少し興味を持った。
ゼビウス「何?それはそれほど面白いものなのか?
……ふむ。少し興味が出てきたぞ。
いいだろう、やってみろ。」
キヨシ「ありがとう、おじさん!」
キヨシは震える指でスマホを操作しようとする。
しかし――画面には「通信エラー」の文字。
キヨシ「電波が無いからゲームができないよ……うわ〜ん!」
深海に響く大泣き。
ゼビウスは耳を押さえ、苛立ちを露わにする。
ゼビウス「ええい、泣くな見苦しい!
そのスマホゲーとやらには人間の電波が必要なのか?
ならば、余が使えるようにしてやろう。」
キヨシ「え、ほんと!?そんなことできるのおじさん!」
ゼビウス「余を舐めるなよ、小僧。
余はムーア星の魔王と呼ばれた存在だぞ。
人間の電波をジャックしてその機械に流すなど造作もないわ!」
ゼビウスは地上のアビスに命令を飛ばす。
ゼビウス「人間の電波をとらえよ!
そして、その電波と仕様を信号として余に転送せよ!」
しばらくして、ゼビウスの頭部に青白い光が走る。
ゼビウス「なるほど、これが人間の電波か……ふむ。
おい、小僧。余の頭が無線ルーターとなった。
その機械にテザリングをして
Wi-Fiのアクセスポイントも作ってやった。
SSIDは“abisujyou”(アビス城)、
パスワードは“zebisamasaikyou”(ゼビ様最強)だ!」
キヨシ「SSID?パスワードって何?難しくてできないよ〜!」
また泣く。
ゼビウスはついに折れた。
ゼビウス「おい、お前!代わりに設定してやれ!」
手下「わ、わかりました……
ですがパスワード設定はいらなかったのでは……」
設定が完了し、ついにゲームが起動した。
キヨシ「やったー!これでガチャができるー!
課金はダメって言われてたから、
毎日ログインして石貯めてたんだよ!!」
キヨシがガチャを回し始める。
ゼビウスは隣で画面に釘付けだ。
しかし――
キヨシ「うわーん!最後のガチャなのにレアが出ないよー!
7が揃えられないよー!」
ゼビウス「な、泣くな!要は7を揃えればいいのだろうが!
貸せ!余がやってやる!」
ゼビウスはスマホを奪い取る。
ゼビウス「この程度の目押しなど造作も無いわ!」
指が閃き――
スロットは777で停止した。
パンパカパ〜ン!
画面が金色に輝き、派手な演出が炸裂する。
キヨシ「あああああ!!SSRキャラ!!
凄いよおじさん!SSRキャラが当たった!」
ゼビウス「な、なんだ今の演出は!?
それは凄いのか?」
キヨシ「凄いも何も超レアだよ!0.01%しか当たらないんだから!」
ゼビウス「な、何!?10000分の1を余が当てたのか!?」
キヨシ「そうだよ!凄すぎるよ!」
ゼビウス「わはははは!
やはり余は覇王として選ばれし者!
運も味方につけておる!これは愉快だ!
よし、小僧。命は助けてやる。
だからそのスマホとゲームアカウントを余によこせ!」
キヨシ「え、ええ〜……そんなあ〜……」
ゼビウス「ならば今ここで死ぬか?」
キヨシ「やだ!死にたくない!
……わかったよ。本当は嫌だけど……命には変えられない。
このスマホとゲーム、おじさんにあげるよ。」
キヨシは震える手でスマホを差し出す。
キヨシ「アカウントIDとパスワードは◯◯だよ。
大事にしてね……」
ゼビウス「ああ。いいだろう。
おい、この子供を地上に戻して来い!」
手下がキヨシを連れて去っていく。
王座にはゼビウスだけが残った。
ゼビウス「もっと……もっとだ……!
レアキャラよ、来い!」
しかし、すぐに石が尽きた。
ゼビウス「なんだ、ガチャができなくなったぞ……
石とやらが無くなったのか!?
くそ……もっとガチャがしたい……
もっとレアキャラを引きたい……!」
沈黙。
そして、ゼビウスの口元がゆっくりと歪む。
ゼビウス「……そうだ。選別だ。
人間の選別を“ガチャ”に見立てて楽しめばいいのだ。」
深海の闇に、狂気の笑みが浮かんだ。
煽り:人間ガチャの起源、ここに――!
※62話へ続く




