092 自分の強さ
なんですれ違う人たちが、
俺を見ているのか分かった。
最初はマリーシャと一緒に歩いている俺に
対する嫉妬や羨望かと思っていたが、
「お、おそらく、、その背中に
背負っているウッドタートルの甲羅を
見ているのだと思います」
隣で歩くマリーシャが俺の耳元で教えてくれた
すっかり忘れていた・・・
そういえばずっと俺が背負って運んでいたんだ
この甲羅、見た目以上にかなり軽いからな、
それでも2メートル以上の甲羅だ
そりゃあ、目立ったかもしれない。
でもマリーシャに持たせなくて良かった
この町の中をマリーシャに担がせて、
俺が隣を歩いていたらと思うと・・・・・
寒気がする。
意地でも俺が運ぶと言い聞かせて良かった
当初はマリーシャが運ぶと聞かなかったから
大変だった。
「マリーシャさん、覚えておいてください。
もしも甲羅をあなたが担いでいて、
隣を男の俺が歩いていたら、俺は明日から
この町で住めなくなっていますよ」
「でも、、」
「いいですか、俺はまだ所詮は青級の冒険者で、
しかもこの町にまだ来たばかりの人間です。
あなたはニルヴァースの副隊長であり、
赤級の冒険者です、そして女性です、
もし俺が街中で女性に大きな荷物を持たせて
隣を偉そうに男性が歩いていたら、
俺でもその男性を軽蔑しますよ」
ごもっともなことを言った、
仮に軽い手荷物くらいなら問題はないとは
思うけど、背中に背負うくらいの荷物だ。
さすがに女性には持たせれない、
そういう風習はこの世界にはないかもしれないが
俺には無理だ!
「そうですか、、、分かりました。
でもいずれコウキ殿は私をすぐに
超えて金級になれると思います!
その時は私が荷物を持ちますね」
いや、違うけど・・・
もういいか・・・
住む世界が違っていたからな
そう思いながら冒険者ギルドに着いた
「やっと帰って来れた」
冒険者ギルドのドアの前で言った
「そうですね、濃い2日間でした。
昨日の朝、ここを出発したのに、、
何故か久しぶりに帰って来たような
気がします」
マリーシャもやっと帰ってきた
感じがあるみたいだ。
冒険者ギルドのドアを開けると、
まだそこそこの冒険者たちが依頼の
受付をしていた
しかし俺たちがギルド内に入ると
一瞬静かになる、、
やっぱり目立つなぁ
「お、お帰りなさい!
コウキさん、マリーシャさん」
受付にいたメリーさんが声を掛けてくれる
「ただいま戻りましたよ」
俺が返答すると
「討伐依頼達成しました!」
マリーシャも依頼報告をした。
「おいおい、、あれを狩ってきたのか?」
「あれは、なんだ?甲羅か?」
「バカ!あれはウッドタートルの甲羅だ!」
「やっぱスゲーな!赤級の冒険者は」
「いや、ニルヴァースの副隊長だろう
さすがエルフ一の魔法剣士だな」
「隣にいる男は誰だ?上級者には見えないけど」
「さぁ、たぶん荷物持ちじゃない?」
「いいなぁ、俺も荷物持ちになりたい」
「やっぱり美人だなぁ、、いいなぁ」
「素敵だなぁ、マリーシャ様は・・・」
「同じエルフとして誇りに思います」
もう俺の周りでは、マリーシャだけが
目立っていた・・・
俺も隣にいるんだけどね
荷物持ちにしか見えないだろうな
みんなが見ているのはマリーシャですよね
「ご、ご苦労様でした、、そ、、その
ここだとちょっと、、、すぐに対応が、」
周囲がざわざわしているので
メリーさんも戸惑っていると
「こっちだ!!」
やっぱり彼が2階から声をかけて来た
ギルドマスターのロウケンだ
「分かりました」
俺は周囲の人を避けながら2階の
階段に向かった。
「すまないが、通してもらえるか?」
マリーシャも急いで俺の後を追ってきた
2階でロウケンが俺を見ると
「そんなものを背負ってこのギルドに来たのは
初めて見たな、それにしても本当に2人だけで
討伐してくるとはな、」
「それは褒めているんですか?
それとも呆れているんですか?」
俺が問いただすと
「両方だよ、、、
それでも無事で良かったよ、
お疲れさん」
ようやく2階に来たマリーシャも
「ただ今戻りました!コウキ殿の力で
無事に討伐依頼を達成することができました」
ちょっと大きな声で俺の功績を言う
「お疲れ様、どうだったか?
久しぶりのモンスター討伐は?
・・・と感想を聞きたいが
廊下じゃなんだな、、
とりあえず俺の部屋に入ってくれ」
俺たちはロウケンの執務室に入った
俺は背負っているウッドタートルの甲羅を
ロウケンに渡した
「思った以上に軽いな、それに傷も少ない
これは期待して良いんじゃないか?」
「おお!それはホントですか!?」
「俺は嘘は言わない、
まあとりあえずは座ろう」
ロウケンが一人掛けのソファーに座り
俺とマリーシャは二人掛けのソファーに
座った。
すぐに受付嬢の一人が部屋に来て
お茶を用意してくれる
「ええーっと買取所の主任を
呼んできてくれるか?」
ロウケンがお茶を用意してくれた受付嬢に
声をかける
「はい、今だとファールさんが待機していると
思いますので、伝えておきます」
「頼んだ」
受付嬢が出て行くのを見送って
「さてと、見事だ!
さすがにこんなに早く帰って来るとはな
剥ぎ取りはマリーシャが手伝ったのか?」
「はい、俺は剥ぎ取り方法は素人なので
プロのマリーシャさんにお願いしました。
それとウッドタートルにトドメを刺したのも
マリーシャさんですよ」
俺が真実を伝えたが・・・
「そんな!私は最後に弱っていた
ウッドタートルの首を刎ねただけです。
それまで弱らせてくれたのはコウキ殿
一人の力です!」
まあそれは間違いではないが
「やはり、お前さんの力は本物だな、」
ロウケンは俺を真っすぐ見る
「さあ?どうでしょうね?」
俺はとぼけて答える
「まあ、
どうやって倒したかなんて野暮なことは
聞くつもりはない、
ただし、、、
お前さんの昇級は決定的だがな」
「ま、まじっすか、」
「マジだな、明日からは緑級だな、
これは最速記録の更新は間違いないな」
「それは当然だと思います!!
緑級なんて低すぎます!最低でも赤級以上
じゃないと私は納得できませんが」
マリーシャは鼻息荒く言う
いやいやマリーシャさん、、、
俺はそんなに目立ちたくないんだけどね
「やっぱりそう思うか?
赤級のマリーシャでも?」
「はい!金級・・」
と、言いかけたところで、、
俺の視線に気づいたみたいだね・・・
「やはり、、本人の意思を尊重すべきだと」
マリーシャは興奮を収めた
「そんなに睨むなよ、コウキ、
マリーシャも悪気があったわけじゃない
煽った俺が悪いんだから」
このロウケンだけは・・・
やはり油断できないギルドマスターだな
「俺の強さを確認したかったんでしょう?
でも俺も自分がどれくらい強いなんて
比べようが無いから分からないんですよ」
「分かっている、
ただ俺はお前さんの強さに純粋に興味が
あっただけだ、
しかし『赤級』が認めている強さだ、
お前さんも少しは自分の強さが分かった
んじゃないか?」
「そうですね、、、たしかに、、、」
おそらく俺の強さは結構なチートレベルだと
いうことだけは理解できたつもりだ。
それはレベル1で魔の森に放り出された
せいでもあるけどね・・・




