【番外編】 異質な3人
【ニルヴァースの本部・隊長の執務室】
2人の男がソファーに向かい合って座っている
2人は疲労の色が強く見える、
それだけ疲れているのだろう。
「今回は非常に危なかったですよ」
軍服を着た、ニルヴァースの隊長
ヴァインが冒険者ギルドマスターのロウケン
に伝えた。
「ああ、あそこまで強いとはな、、、
なんというか、、強さのレベルが違うな」
「ええ、パッと見た感じでは分からないですが、
その深淵を見ると強さが異質だと・・・・」
「おそらく、純粋な『剣』『弓』『魔法』なら
我々が間違いなく勝つだろう、しかし、、
あいつが身に着けている特殊魔法は、、この
大陸、いや、他の大陸でも見ることはできない
だろうな」
ロウケンはコウキをそう分析した。
「ええ、ただ、、」
ヴァインは思い当たることがある、、
「なんだ?」
「思い当たる人物が、2人ほどいるんですよね」
「そんなやつが、、?」
「ええ、あなたも聞いたことがあると思います」
ヴァインが真剣な顔をして言う
「1人は北西の人族の大陸で今、大国と
肩を並べるまで成長させた『白い女王』です」
「白い女王!!そうか、、たしかに、、
噂でしか聞いたことがないが、、
我々が見たことが無い魔法を使い、
荒れ果てた国土を見事に蘇らせたという」
ロウケンがソファーから身を乗り出して言う
「ええ、私も人族の大陸に派遣している龍族の
大使館からの情報なので、実際に見たことが
あるわけではないんです。
あの地域は未だに内戦が続いているので
そう簡単には近づけないんですよ」
「なるほどな、、、『コウキ』と『白い女王』
たしかに我らが知らない力を持っている
ことには共通しているな」
「白い女王の国では彼女を『神族』として
崇めているくらいですからね」
「神族か、、伝説上の存在だと思っていたが」
ロウケンの額から汗が出ている
「まだ噂でしかありませんけど、、この噂、
人族の大国では箝口令が敷かれています」
「そうか、、
だから詳しい情報が中央大陸には
入ってこないのか、、」
「ええ、でも時間の問題だと思いますよ、
特に王国や帝国では圧政に苦しんでいる市民の
暴動が起きる気配があります。また
神聖国では白い女王は『神を欺く異端者』と
認定して戦争の準備をしていますから」
「これから北西の大陸は荒れそうだな、、
まだまだ戦争が終わらないか」
「あなたも人族ですからね、ロウケン
故郷に帰りたいですか?」
「そうだな、
俺の故郷は共和国だから、まだ安全だとは思うが、
今はまだ帰りたいとは思わないな」
「そうですか、まあ、帰る時は
しっかりと良い後任のギルドマスターを
置いて下さいね」
「分かっているよ、それが一番大変なんだよ」
2人はテーブルにあるお茶を飲んだ
そしてロウケンが切り出す
「ヴァイン、先ほど2人いると言ったな」
「ええ、言いました」
「1人は白い女王、で?もう1人は?」
「これは、まだ未確定の情報なので、
確かなことは言えないのですが」
「もったいぶらずに、言えよ!」
「絶対に秘密ですよ」
「分かっている!」
ヴァインは姿勢を正して言う
「魔女が表れました」
「魔女?」
「ええ、魔女です、
我ら龍族は『黒い魔女』と言ってます」
「ま、まさか⁉」
「そうです。遥か昔の言い伝え、、
・・・・・・・・・・・・・
この大陸全てを恐怖に陥れた
伝説上の存在『魔女』です」
2人の間に沈黙が訪れる
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「その伝説上、恐怖の存在、、
魔女か、、ほんとう、に?」
「あくまでも我ら龍族の一部が、
そう呼んでいるだけです、だが、、」
「だが??」
「その異質な力を目撃した龍族からは、
魔女として恐れられているのは事実です」
「なんだ、、その、、龍族はその『魔女』に
喧嘩でも仕掛けたのか?」
「私も細かいところまでは聞いていないので、
ただ、、、それに近い形じゃないかと、、」
空気が重い、、
ヴァインとロウケン
お互いにこれまで、この町を守るために
協力をしてきた仲間だ。
だが、今回の件は少し次元が違う話に
なり始めていた。
「現在、その『魔女』は?」
ロウケンが聞く
「分かりません、
先ほどの話は約1年前、我ら龍族が
住む北東の大陸に来た時の話です。
それからの情報は錯綜しています」
「龍族の捜索でも分からないのか?」
「ええ、我らも全ての大陸に情報網がある
訳ではないですからね、特に南西の魔族が
いる大陸などは、ほとんど情報が入って
来ないですからね」
「そうだな、、、
ということは、『魔女』は
南西の大陸にいる可能性が、、、
高いか、、?」
「そうなるでしょうね、
今の所は実害がある訳ではないですから、
下手に騒がないことだと龍族は思っています」
「南西の魔族はこの情報は?」
「おそらく知りません、
ただ大きな事件が起きていないと
思うので、今の所は大丈夫じゃないかと」
「そうだな、
この地にいる魔族にも大きな変化はないしな」
ロウケンはフーっと息をつく
「白い女王、魔女、そして『コウキ』か、
同じ異質な力を持つ同士、、、
会えばどうなるのか?」
「ハハハ、まさか同郷ってことは
ないでしょう、けど、、」
「けど?」
「もし3名が争うようなことが起これば、」
「起これば?」
「被害は尋常ではないでしょうね」
「だろうな」
2人はことの深刻さを理解している
「ただ、コウキ君は自分の力の強さをまだ
理解していないみたいだからね」
「そうだな、
あいつは自分の力がかなり特質するものだと、
そこまで理解はしていないと思う」
「もし、自分の力で世界を変えることができる
と分かった時、、コウキ君がどのような
選択をするのか?」
「ああ、そこだな、問題は」
「今はそっとしておくしか無いでしょうね、
今回みたいに人族のバカ貴族が今後は
ちょっかいを出さないようにしておかないと」
ヴァインはそう言ってすでに冷めた
お茶を飲み干した
「分かっている、
こちらもコウキを監視するような
依頼は受けないようにしておこう」
ロウケンも冷めたお茶を飲み干した
2人は会談を終えた
ロウケンはソファーを立ちあがった
「それじゃあ、俺はギルドに戻るとするか」
「今回は一つ借りが出来ましたね」
「気にするな、いつも冒険者が世話になっている」
「そういう訳にはいきませんよ」
「なんだ、龍族の誇りか?」
「当たり前です。今回の借りは必ず返しますよ」
「期待しているよ」
そう言って、ロウケンはヴァインの執務室を出た
ヴァインは自分のデスクの椅子に座った
「それにしても3人か?いったい何が起きて
いるんだ?この世界に、、、」
ヴァインは深いため息をついた後、、
今回の件に関わった部隊の処分について
更に頭を痛めることになった。




