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006 突然・・・

 パチンコ店の店長の仕事は閉店後が本格的な仕事の始まりだ。

 だいたいパチンコ店の店長は閉店前には大抵は事務所に籠り

 明日の営業を決めるのが普通だ。中には開店3時間前に出社して

 やっている店長もいるかもしれないが、そらは極少数であろうと

 思う。大抵は店の閉店前までには明日の営業方針を決めて

 閉店後にそれを副店長達に指示、または自分自身で行うであろう。


 8月31日、その日がこの会社でする仕事の最終日でも俺はいつも通り

 ホールコンピューターから出てくるデータを見ながら、明日の営業

 を決めていた。閉店後には各台からその日の売り上げを集金して

 コンピューターからの売り上げに誤差がないかを確認する集金業務

 を行い、本日の利益を金庫に保管するのが一連の集金業務の流れで

 ある。閉店前には予め前もって決めていたパチンコの調整指示と

 スロットの設定配分は作っていた。なるべく利益調整に偏りがない

 のうにはしたいと思うのだが、常連客が多い機種は少し甘めに調整

 したり、逆に人気のある新機種などは少し利益を多く取るように調整

 指示を細かく決めなければならない。かと言って7日間も連続で

 利益を取っている台などは、気持ち釘を甘くしたり、スロットなら

 高設定を入れたりして、少しでもこの店のお客を楽しめるように

 しなければ店はすぐに廃れていく現実が待っている。ここは店長の

 腕の見せどころでもある。


 経営者や営業部長ですら、そんな細かい数値は見向きもせず、

 どちらかというと全体的な数値でしか見ないので、

 こうした細かい努力はやって当たり前、もしくわできて当然の

 ように言うことが多い・・・まあしょうがないとは思うのだが


 閉店後、アルバイトや役職の低いスタッフやリーダークラスが

 退勤すると、出入り口を施錠して、カーテンを下して最後の仕上げ

 に俺は釘調整道具を持ってホールに向かった。


 ちなみに釘調整は厳密には違法行為ではある・・


 しかしある程度は抜け道がある。パチンコは毎日、釘に玉がぶつかる

 遊技である。そのため玉がぶつかることによって釘が曲がっているのを

 元の正常な状態に戻す行為をしている、などという風に言えば

 厳密には違法ではあるが、言い逃れができる行為でもある。


 はっきり言って嘘ではある・・・利益調整のため、今も6000~

 7000店舗くらいの店で毎晩、コンコンと釘をたたいている現実がある。


 正月・お盆の時の釘と普段の平日の釘は1000%と違うと俺は

 断言することができる・・・

 

 まあそれをお上(警察関係?)は分かっているとは思うのだがやりすぎる

 と警察に目をつけられるので、素人では分からないレベルでも調整が

 必要となってくる世界でもある。


 ここまで長く働いた業界ではあるが、この釘調整だけは嫌いじゃなかった

 なあと考えながら、自分で指示を出した遊技台の調整に向かって歩いて

 行った。

 

 西山副店長と歩いて指示された遊技台に向かっている途中

 「いよいよ、最後の調整ですね、今後この技術は役に立つんですかね?」

 

 「いいや、この業界以外では全く役に立たないと思う、大工になるなら

 少しは釘を上手にたたけるかもしれないが・・」と俺は答えた。


 「まあ、仕方ないですね。この業界に私は未練もないし、またパチンコ

 店で働くなんて2度と御免ですからね」


 「それ分かります。俺もパチンコ店で働くのは絶対に嫌です」

 隣のコースにいた、池中副店長の声がした。


 「まあ、俺も同じかな、このパチンコ業界は衰退産業だから今後

 爆発的に伸びることはまずないだろうと俺も思うよ」


 「まあ、早く調整終わらせて、とっとと帰ろう」

 「了解」「分かりました」と返事を受けて3人で協力して

 しーんと静まりかえったホールで釘を叩く音だけがホールを

 支配していった。


 俺はこの店での1番の稼働をしている『P山物語』の調整を

 始めようと、ハンマーを持って席に座った。

 

 この機種も長い間、ご苦労さんと言いたいくらい頑張った機種である。

 釘も少し古くなっており、釘の先端は黒くっていた。


 その釘に向かってハンマーを叩こうとした瞬間・・・


 俺は目の前が真っ暗になっていたのだ・・・・・

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