056 大ネズミを討伐
「ネズミの尻尾♪ネズミの尻尾♪」
くだらない鼻歌を歌いながら俺は門に
向かった。初めての討伐依頼だ。
「おお!今日も行くのか?」
昨日出会った門番に声を掛けられた
「ええ、今日は大ネズミの討伐です」
「ソロでか?」
「はい、一人ですけど・・・」
「そうか、まあ若い時はなんでもすることだ、
挫折も良い経験だからな」
失敗することを前提で言ってやがるな、
「大丈夫ですよ、多分」
「そうか、まぁ無理だけはするなよ、命は一つ
しかないんだからな」
「分かりました」
そう言って俺は町の外に出た。
もう一度依頼書を確認した。
「今日は昨日と反対側だな、まあトレントの
心配はないな」
今日行くのは町の東側の草原方面だ。
東側に向かいながら左手の大きな港を見た。
「スゲーな、全部泊っているのは帆船だな、中世の
世界だな、これは、、」
10隻以上の帆船が泊っているのを横目に東側の
草原に向かった。昨日は他の冒険者とは
すれ違わなかったが、今日は何組かの冒険者
パーティーとすれ違った。
挨拶をしただけだが、すれ違った冒険者たちは
俺がソロで行ってるのを不思議そうに見てた。
(この世界の冒険者たちは結構チームを組んでいる
んだな、種族も混合しているな)
そう思いながら東側に伸びる細い街道を
歩き始めた。まだ町が遠くに見える。
この辺にモンスターはいないだろうな、
もう街道から離れた場所だろう。
今日の依頼も夕方までだからな。昨日みたいに
ギリギリに帰るのも嫌だな。
俺は少し進路を南に変えて、
街道から離れた草原を更に南東に向かって歩いた。
しばらく歩く、、、、
何かいるな、、
「お、、なんだ、スライムか、、」
スライムを2匹見つけたが、俺を認識した瞬間、
逃げる、スゲー勢いで逃げやがる。
まあ、倒してもしょうがないな
逃げる方向を見ていると、、、
!!いた!!大ネズミだ!!
5匹くらいがエサの昆虫でも食べているのか?
まだ俺の存在には気づいていないな、
10メートルくらいから見てたが、
結構デケェな!!
1メートルくらいの灰色のネズミだ。
こんなモンスターが現世にいたら、
エライ事になるな
もう少し近づこうとした時・・・
気付かれた!!
睨み合う、、、と思っていたら
「逃げやがった!!」
やっぱりか!!
5匹が一目散に後方に逃げている!!
どうする?
一瞬だけ躊躇ったが追いかけた!
だが大ネズミの方が早い。
どうする??
そうだ!!
【サンド】からパチンコ玉を買い、投げる
「当たれーーー!」
走りながら思いっきりパチンコ玉を投げた。
おおおお、【負のオーラ】を使っていないけど
自分が投げたとは思えないスピードで
逃げた大ネズミの1匹に当たった。
「キィーーー!」
甲高い鳴き声が響く、、
残り4匹はもうすでに遠くまで逃げている。
倒れている大ネズミまで急いで向かった。
何か悪いな、、倒れている1匹は痙攣して
ピクピクしている。
苦しめるのは良くないだろう、
ひのきの棒でトドメを刺した。
さてと、必要な部位は尻尾だったな、、
どうやって剥ぎ取ろうか?
ナイフでもあったら良かったけど・・
そう思っていたら
「ギャーーーー!だ、だれかー!」
大ネズミが逃げた方向から悲鳴が聞こえた!
女性ではない、、なぁ、、おそらく、、
おっさんだな・・・
「なんでーー!!」
おそらく俺のせいだな、、
急いで悲鳴の方に走った。
「はぁ、はぁ、はぁ」
いた!!
2匹の大ネズミが襲い掛かろうとしている。
「伏せろ!!!」
俺は大きな声で襲われている男性に伝え、
パチンコ玉を右手に握りしめて投げた
男性は素直に地面に伏せてくれている。
1匹の大ネズミ命中した!
もう1匹は俺に気付いた、
そして襲っている男を無視して逃げた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、もう大丈夫ですか?」
地面に伏せたまま声を出す
倒した大ネズミはすでに痙攣している。
「ああ、もう1匹は逃げました」
「良かったぁーー」
襲われていた男は伏せこんだ状態から
体を起こして座り込んだ。
「ありがとうございます、助かりました」
「いえ、襲った大ネズミは俺が取り逃がした
獲物だから、逆にすみません」
「いえいえ、助けてくれたのは事実ですので」
俺は男に手を貸して立ち上がらせた。
男はおそらく獣人だな。
頭についている耳が特徴的だ。
「私は狸人族のナズモです。プロストンの町で
商人をしています」
40歳くらいに見える、優しい顔立ちは狸から
かな?背中にはバックを背負っている。
「ああ、俺は人族で冒険者のコウキと言います」
忘れてた!!
「すみませんが、ナイフとか持っていませんか?」
「は?」
「あの、討伐依頼で大ネズミの尻尾が
いるんですよ、あります?」
「ああ、そういうことですね、ありますよ」
俺はナズモさんからナイフを借りた。
尻尾は柔らかく簡単に切れた。
「もう1匹いるので、ちょっと待っててください」
そう言って最初に倒した大ネズミの尻尾も
剥ぎ取って来た。
「ありがとうございます」
俺はナイフを返そうすると、
「それはお礼であげますよ」
「はい??」
「助けてくれたお礼です、切れやすくて
良いナイフですよ」
「いやいや、悪いですよ、、」
「いいんですよ、もし死んでいたらどうせ
誰かに奪われるだけですから、」
「そうかも知れませんが、、、」
「だから受け取ってください、それに私は
そんなに使うことがないですから」
「分かりました。ありがたく頂戴します」
「ええ、使ってください」
俺は受け取ったナイフと大ネズミ尻尾2本を
バックに入れた。
「この後、ナズモさんはどうするんですか?」
「私はプロストンの町に帰る途中でしたので、、」
「そうですか、俺もこの後は町に戻るので一緒に
町に行きますか」
「はい、助かります、この辺りは弱いですが
魔獣が多いので、、」
俺たちはプロストンの町に戻りだした。
振り返ると大ネズミの死体をスライムたちが
捕食している。弱肉強食の世界だな、、
「ところでナズモさんはどうしてこの辺りに
いたのですか?」
「私は町で薬草や毒消し草などを販売しています
今日はこの辺りの植物を調べに来ていました」
「お一人で?」
「まあ、冒険者を雇うにはお金もかかるので」
「そうなんですね、、」
「それに販売する相手がちょっと嫌われていて、」
「まさか、、魔族とか??」
「は、は、い、、でも良い人たちなんですよ!
本当に、私が困っていた時も助けてくれましたし
それに薬草や毒消し草の採取を何度も無償で
手伝ってこともあるんですよ!」
凄い焦って伝えてくる。
そうか、俺が人族だからか、、
「大丈夫ですよ、ここにいる魔族が良い人って
俺も知っていますから」
そう伝えた。
良かった。
信頼が出来る人に出会えた気がした。




