045 取り調べ
どうやらニルヴァースの駐屯地?に着いた
みたいだ。警察署というより、自衛隊の
基地だな。建物が3つほどあるが、どれも
2階建ての石造りで簡素なものだ。
建物の裏側には広場があり、何名かの騎士が
訓練をしている。どうやら模擬戦闘をしている
らしい。
「この中で取り調べる。ついて来てくれ。
君たちはご苦労だった。訓練か巡回任務に
戻ってくれ」
「了解」「了解」「了解しました」
俺を取り囲んでいた3名は各々散っていった。
俺は言われた通り、建物の中に入った。
「ここだ」
女性エルフに案内されて部屋に入った。
ここは誰かの執務室みたいな感じだ。
偉そうな机が正面にあり、その前に椅子があった。
誰の部屋だ?ここのトップの部屋かな?
「座って待っててくれ」
周りを見ると良い部屋だと分かる。
サイドボード、本棚、ハンガーラックもある。
俺が周りを見ていると、後ろのドアから
2名入ってきた。
「待たせたね」
年配の男性だ。年齢は現世の俺と同じくらい?
服は鎧ではなく、黒いスーツベストだ。
(40~50歳くらいか・・・)
黒い髪に眼鏡、耳が少し長いが
エルフほどではない。耳以外は人間に似ている
「私は現在ニルヴァースの隊長を務めている
龍族のヴァインです」
「龍族・・・」
「龍族を初めて見るかな?まあ人族の大陸では
まず見ないだろうからな」
「そして彼女は・・・自己紹介はしたのか?」
「いいえ、まだです。私は現在のニルヴァース
の副隊長でエルフ族のマリーシャだ。」
「私は・・・・『人族』ってこういう時は
言うんですか?」
「まあ、人族でも人間でもかまわないよ」
「それでは、私はカミヤ・コウキです。
人間です。そして貴族とかではありません」
「へぇ、苗字があるのは貴族以上だと思って
いたが・・・まあ、別にいいか、」
貫禄がある話し方、そして立ち振る舞いから
見て、相当手ごわいな。誤魔化しても
見透かされる感じだ。
なるほど、これが龍族か・・・どう対処しよう
「ところで、ここに来た理由は聞いてるよね?」
「ええ、まあ疑われている感じらしいですね」
「ちょっと、相手がやっかいでね。こちらも
無視する訳にはいかなくてね、、」
「とういうのは?」
「君が喧嘩を売った相手が、人族の貴族でね。」
「私は喧嘩を売った覚えはありませんが・・・」
「まあ、君はそう言うけど、ほら・・向こうは
なんていうか、、恥をかかされたわけでね」
「ああ、失禁したらしいですね」
「そうだよ、大きい方もしてたみたいだから」
「あらら、、、」
俺は内心、大爆笑。笑いを堪えている。
「それでね。暴力を振るわれた!町に危険な奴が
いるのに、ニルヴァースは何をしている!!
って感じで、早朝怒鳴り込んで来たのだよ」
「俺は知り合いの魔族がそいつらに絡まれていた
ので、声を掛けただけですよ、、『大丈夫か』
って」
これは事実である。だから動揺もない。
「そうだと思うよ。あのボンボン貴族達は
酔っぱらっていたし、ケガもしていない。
ただ失禁と気を失っただけだからね」
「でも、取り調べをしたという体裁がこちらにも
必要だからね。面倒だけど・・バカを相手に」
・・突然・・
「隊長!良いんですか⁉」
マリーシャが口を挟んできた。
「何を??」
「そこまで言って・・・こいつは、」
「だって彼は暴力は振るっていない、おそらく
本当に声を掛けた、それだけだよ。」
肩をすくめてヴァインは言う。
「それに、医者にも聞いたが暴行などの痕は
4人ともなかった。もちろん魔法での攻撃
とかもない、魔法が使われたならば痕跡が
残るはずだからね。」
「てことで、これで終わり・・・ってどう?」
ヴァイン、、スゲーいい奴・・
やっぱり出来る男は違う、こんな上司大好き。
俺は嬉しそうに
「いいですよ、では帰り、、」
「待ってください!」
マリーシャがまた
止める、
このクソエルフ、、思わず心の中が黒くなる
「まだ、何か」
俺は彼女の方を冷たく見てしまう。
せっかく帰れるところだったのに・・・
「声を掛けただけで、失禁や気を失うことは
ありえないと思います。おそらく
何らかの形で・・・・」
「何らかのでとは、」
更に冷たく言う
「精神的な魔法や秘術的な何かを用いてだと」
「だから何を、」
少し睨み付ける
・・・ようやく帰れると・・・思ってたのに
しつこい・・・・
沈黙が流れる
・・・・・・・・
・・・・・・・・
もう一度言う
「だから俺が何をした?」
もう一度睨む
「うっ・・・そ、、れ、、その」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
「はい、そこまでにしておきましょう。
副隊長」
ヴァインが止めた。
「しかし、、、」
「あなたも失禁したいのですか?」
マリーシャがたじろぐ
「私も久しぶりに汗をかいてます。
彼はあなたが思っている以上に
相当強いですよ。」
ヴァインは手のひらの汗を見せた。
「おそらくはこの駐屯地のメンバーでは
絶対に太刀打ちできないでしょうね、」
俺、そんなに強くなった実感はないけど
それでもこのエルフは納得していないだろう
表情を見たら分かる。
「そんなことは、ありません!人族などに
劣るようなことは!」
真っ赤な顔で怒りを露わにしている。
「ではどうします?あなたは彼を意地でも
犯罪者にしたいのですか?確たる証拠も
なしに、、、、
そして、何より私の判断に不服があるとでも」
言葉は柔らかいがスゲー威圧感だ。
やっぱ、龍族だな・・・
「いいえ、申し訳ございません、、、
私が早計でした。」
今度は真っ青な顔になっている。
中々良い顔芸だ。
「では、私は帰ってもいいですか?」
「ああ、済まなかったね」
「ただ、訴えてきた連中には君も反省していた
と伝えるよ、いいかな?」
「ええ、構いません。確かに皆さんには
迷惑をかけましたから」
「良かった。後は余計なトラブルはなるべく
避けてね」
「気を付けます。昨日この町に来たばかり
なので、まだ世情に疎いのですみません。」
そう言って俺は部屋を出て行った。
良かった。早く終わってくれて。
そう思いながら、
俺はニルヴァースの駐屯地を後にした。




