042 路地裏から
飯だ♪飯だ♪飯だ♪
どんな飯だろう、楽しみだ。やっぱり
この世界に来たからには今まで食べたことが
ないものを食べてみたい。
1階に下りた俺は、真っすぐ併設されている
レストランに向かった。
中は広いな、席は50以上あるな・・・
さて、どうやって注文するのかな?
とりあえず空いている席を探した。
「いらっしゃい、宿泊客の方ですか?」
「はい。」
そう言って宿泊している鍵を見せた。
鍵を見せればいいですよ、って
宿泊している受付嬢に言われてたな。
「ではこちらにどうぞ」
案内してくれた。1人で食べれるカウンター席
が奥にあった。
「今日の夕食はウサギのクリーム炒めと
魚介のスープ、あとはパンになります。
飲み物はどうします?」
「お酒はありますか?」
「別料金ですが、ワインとエールがあります」
「エール?」
「エール、、知らないですか?」
エールって、エール?エール、、
ああ、異世界のビールだ。確かエールって
名前だったよな。
現世でもエールという名で中世のヨーロッパ
で飲まれていたらしいが・・
詳しくは俺も知らない。
「いえ、エールをお願いします。いくらですか?」
「銅貨2枚です。」
「では、これで」
「すぐ持ってきますね」
持ってきたエールは俺が普段飲んでいるビール
より色が濃い。黒ビールに近い色だ。
残念なことだが、冷えていない。
これがキンキンに冷えていれば、、、
仕方ない。
「味はどうだ」
濃いな。独特な味だ。苦味というより
少し甘い感じでもあり、香辛料?
ハーブの香りがするな。初めて飲む味だ。
「どうです?美味しいですか?」
先ほど注文聞いてくれた女性が食事を
持って来てくれた。
「ええ、初めての飲みましたが美味しいです」
まあ本当は現世のビールの方が好きだが、、
「それは良かった。でもワインの方が美味しい
と思いますよ」
「そうなんですか?」
「この中央大陸ってブドウの出来がいいんですよ
だからワインは赤も白も美味しいですよ」
なるほど、良い情報だ。ここは確かに気候は
良いと思っていた。
さて食事の続きだ。
まずは魚介のスープは、、
これは魚介のトマト風味のスープだ。
中には海老が入っている。
これはうまい。味が濃いのでエールに合う。
そしてウサギのクリーム炒めは、、、
これもうまい。
獣特有の臭みはあるが、クリームで炒めている
ので臭みが和らいでいる。それに中に入っている
野菜が美味しい。これは人参とジャガイモかな。
味は現世で食べたのとほぼ同じだ。
どちらかと言えば、クリームシチューに近いな。
それでもこの世界に来て一番美味しい料理を
食べたと感じた。
パンも全部食べたし、今日はこのまま部屋に
帰って寝るかな?と思った。
気が付くとレストランは満席であり、通路では
何名か並んで待っている。早めに出た方が
いいな。
「ご馳走様」
先ほどの女性に伝えた。
「ありがとうございます。」
「これから1週間は来るのでよろしく」
「分かりました、では明日も待ってます」
そう言って俺はレストランを出た。
受付も混雑しているな。
「この後、どこに行くかな?」
「飲みに行くか!!」
「デーザト食べに行こうよ」
「いや、俺は娼館だな」
「何だよ、まだ早いよ、もう1杯飲もうぜ」
「私たちは部屋に戻りますね」
色々な声が聞こえてくる。賑やかだな。
どこかに繁華街でもあるのかな?
まだ今日この町に来たばかりだからな。
明日は冒険者ギルドに行った後にでも
町を見て周ろうかな?
それにしても、こういう異世界の娯楽は
やはり「酒」と「女」か・・・
まあ現世でも基本だと思うが、
映画やゲームなんてのはまだ、無いのだろう。
特にギャンブル関係は少なそうだな。
それにしても「タピオカ」さんや「高級食ぱん」
さんは元気でやっているのかな?
この世界のどこかにはいるとは思うのだが、
そういう手がかりも、冒険者ギルドで
聞いてみよう。
俺は部屋に戻って、桶に水を汲んで体を
洗った。
そういえばコインロッカーの中にタバコが
まだ残っているな。
俺はロッカーを召喚してセカンドバックから
タバコとライターを取り出した。
部屋は禁煙かな・・・
まあ分からないけど、外で吸おう。
宿の外に出て、路地裏に移動した。
携帯灰皿も持っているので、そこで吸うことに
した。煙を吹かしながら、空を眺めている。
何か声が聞こえる・・・
いや怒鳴り声だな・・・喧嘩か?
4・5人くらいの男性の声だな。
路地裏の奥から聞こえてくる。
何か巻き込まれるのも嫌だけど・・・
まあ気になったので見に行ってみよう。
数名の男性が1人の男を取り囲んでいる。
「なんで貴様みたいな奴がここにいるんだよ!」
「お前、何しに来たんだ、また何か悪いことでも
企んでいるのだろ?」
「貴様みたいな種族がこの世界を汚して
いるんだよ!分かってんのか!」
酔っ払いだな、これは・・・
取り囲まれているのは・・・・
おそらく『魔族』だな。
あれは今朝、デュラン達と一緒に来た奴
じゃないか・・・
「すまない、もう帰るので通してもらいたい」
誤ってこの場を離れようとしているが、、、
「待てよ!」
「だから、なんで町の中にいるんだよ!!」
魔族は言い返した。
「俺たちは町での活動は制限されているが、
町の出入りは禁止されていない、、、
少し買い物をしに来ただけだ。
それでも気を悪くしたなら済まない、
もう帰るから通してくれ」
酔っ払いはそれでも絡む。
「お前らが買っていい物なんかねえんだよ!」
「汚ねえツラしやがって!!」
「ここで来ていい、魔族なんていねえんだ!」
何かだんだんと腹が立ってきた。こいつら
殴ってもいいですか?この人間たち?




