036 複雑な世界
「コウキが『迷い人』である可能性
は高い、ということが分かったな。」
デュランは俺を見て言った。
俺も否定はしない。
「そういうことならこの世界や最近の出来事
が知らないのも当然ですね」
マグールが同意して言った。
デュランは改めて自己紹介をした。
「俺は、魔族でこの集積地を任されている。
魔族といってもたくさんの種族がいる。
その中で俺たちは鬼人族だ。」
鬼人族・・・なるほど、鬼か
それでその角か。
「魔族も魔人族、悪魔族、夢魔族、吸血族など
たくさんの種族がいる。魔族は基本この
場所から海を渡り南東に住んでいる。大きな
陸地もあるが、他にもたくさんの島が存在してあり
その島々に種族ごとで生活している」
「まあ、種族間での争いが絶えない部分もある」
デュランは困った顔で言った。
「まあ、我々は基本、闘争を好む種族だからな」
バイガクがすかさずフォローを入れた。
「そしてここは中央大陸だ」
それだけは俺も知っている。
「この中央大陸は、様々な種族、、、、
人族、エルフ、ドワーフ、魔族、龍族
などが交易をしている多民族共同地域だ」
「国家ではないのですか?」
「そうだ、国家ではない。各大陸の代表者が
集まり共同で管理している地域だ」
「争いは起きないのですか?」
俺は疑問を聞いてみた。
「昔、200年前にこの中央大陸を自分達のものに
しようと戦争があった。長い戦争で決着がつかない
泥沼の争いだった。まあ理由としてはどこかが
優勢になったら残り3つが手を組んで、
それを阻む。それを繰り返した。」
同盟と裏切り、なるほど・・分かりやすい
「そして今から約100年前に4つ大陸で停戦に
なった。その時に4つの大陸の代表者が
ここを共同で管理することが決定したんだ」
「なるほど、それがこの中央大陸ですか・・」
「理解できたか?」
「はい、ありがとうございます」
そういえば人と魔族は仲が悪い??
昨日もそんな感じで言われたが・・・
「人間と魔族は仲が悪いのですか?」
俺は率直にデュランに聞いた。
「そうだな・・・まあ確かに仲は良くない。
これは人族の大陸にある国家の一つ『神聖国』が
魔族の滅亡を目的としているのが理由の一つ
でもある」
神聖国、、名前からして近づきたくない国
「それに我々の種族の中でも、人族を嫌って
いる種族は多数いるのだ」
なるほど、根は深いようだな・・・
「デュランさん。人間の大陸については
なにかご存じですか」
「そうだな、、、俺も人族については
そこまで知らないんだ、人族の大陸には
大きな国が4つくらいあるってことくらい
かな。王国、神聖国、帝国、あとは・・」
「共和国です。その他に小国が少しあります」
マグールがフォローした。
人間の国が4つもあるのか、絶対に
一枚岩ではない!と自信を持って言えるな。
「ところで、先ほど町の近くでは一緒にいない
方が良いみたいな感じでしたが、それは人と
魔族だからですか?」
「そうだな、それもあるが、
これは昨年のことだが、、、、」
何か言いにくそうだ。
代わりにマグールが話した。
「実は昨年から人族の交易船が襲われて
いるんだ。この中央大陸に交易船は
貿易のためにたくさんやってくるんだが」
「人間の交易船だけが襲われていると?」
「そうだ」
デュランが答えた。
「なぜ、それが問題に?」
「人族は我々魔族が交易船を襲っている
と疑っているからだ。」
「???」・・なんで・・
「人族の交易船を襲っているのがクラーケンや
オクトパスなどの魔獣だからだ。
魔族は確かに魔獣を操れる魔族もいる。
それで疑われているのだ。しかも人族だけを
狙っているからだ」
なるほど、昔から仲が悪く、そして交易船が
魔獣に襲われている。だから魔族が犯人だと、
「確かに我々は先ほども言ったが、魔族が住む
所は島も多く、操船技術は他の種族よりも
レベルは高い。そして海に住む魔獣を飼いならす
『海魔族』もいるが、クラーケンなどの大物を
飼いならして、襲わせることなどはできない」
「それでは冤罪じゃないですか」
「そうだ・・・だが、、、」
デュランは悔しそうに言う。
「しかし、人族は信じてくれない」
代わりにバイガクが言った。
「人族の訴えで種族会議が行われた。そして
魔族の疑いが晴れるまでは、町での活動が
制限されたのだ!」
続けてマグールが話してくれた
「我々は本来、町の港に集積地があったのだが
そこも使用禁止になったので、町から離れた
この地に急遽、簡易的な集積地を作ったのだ」
「これが今の現状でな、人族のコウキが
我々と共に町に行けば、お互いにトラブル
になるかもしれないからな」
デュランが溜息交じりに言った。
「それでも町の近くまでは一緒に行ける。
魔物の心配はそれほどないとは思うが、
どうせ行く場所は一緒だからな」
複雑な事情がありながらも、俺を宿泊
させてくれた恩を俺も返そうと思った。
「ありがとうございます。せめて道中は
何か手伝わせてください」
「分かった、何かあったら手伝ってもらう」
「出発は1時間後だ」
俺は魔族と共に次の町を目指すことにした。




