032 町ですか?村ですか?
「橋だ」
ただ、ひと言そう呟いた。
森の外を出て、初めて見た文明・・・
とにかく近づいて見てみる。
辺りは夕暮れだ。もうすぐ陽が落ちる。
この「橋」から得る情報は非常に重要だ。
木を組み合わせた簡易的な橋だ。
手すりもなく、丸い木を4本並べた
だけの橋だ。
橋の左右には・・・・
もちろん道がある。
おそらく街道だ!
右側は少し上り坂、左側は少し下り坂
俺の行く方向はもちろん左だ。
下っていけば、海につながるはずだ。
俺は川沿いから橋の上に登り、左側
おそらく西側の方に向いて歩き始めた。
街道は土の道、舗装はそれ程されていないが
それでも森の中を歩くよりは数倍は楽だ。
もうすぐ日没だ。俺は街道に出た喜びより
早く、町や村に着くことが大事だと思った。
夜は俺がいた魔の森よりは危険度は
低いかもしれないがそれでも危険だと思う。
早歩きで街道を下って行った。
完全に日没を向かえて、方角は分からない。
ただ、川の音が聞こえる。
この街道は俺が先ほどまで歩いていた川に
沿って作られているみたいだ。
辺りは暗くなった。しかし今日は月が
出ている。まだ道はかろうじて見える。
明かりを使って歩くこともできるが、
危険性もある。
とにかく、歩けるところまで歩くことに
した。
しばらく、歩いて、、、
街道の先の方に・・・ついに・・・
明かりだ!!
あれは「かがり火」だ。
とにかく、かがり火の方に近づいた。
近づいたときに分かった。塀がある。
高さは2メートルくらい、木で出来た
周囲を囲んでいる。
ただそんなに大きな集落ではないと思う。
簡易的な塀であり、物見やぐらなどはない。
街道の横に入口があった。
簡易的な柵が置いてある。
普通、こういう時は街道の正面に入口が
あるはずだが、、、
おそらくこの街道が出来た後に
新しく出来た町だと思った。
入口の横に誰かいる・・いわゆる門番?
とにかく挨拶だ。笑顔で挨拶して
事情を説明して、中に入れてもらおう。
最悪、入口付近で泊めてほしいとお願い
しよう。町の外でもいいから近くに
いれば、少しは安全だろう。
「よし」
俺は考えをまとめて、塀の入口に近づいた。
向こうも俺に気づいたようだ。
「止まれ!」
若い男の声が聞こえた。まだ向こうの表情は
分からない・・・
俺は立ち止まった。そしてひのきの棒を
地面に置いて、両手を上げた。
「驚かして、申し訳ない。」
大きな声で敵意が無いことを伝えた。
「何者だ」
門番の男は立てかけていた武器を構えた。
槍かな?
俺が武器を置いたのに気付いたのか、
警戒しながらこちらに近づいて来た。
「道に迷ったんです。明かりが見えたので
こちらに来ました。急に来てすみません」
「下手に動くなよ!」
まだ警戒をしているみたいだが、敵意は
ないように見えた。
近づいた門番の顔を見た。若いな、
少し顔色は良くなく見える、青白い。
黒い髪に黒い服、真っ黒だな・・
「こんな所で迷ったのか?」
門番は槍を構えて、俺のすぐ側まで来た。
「はい、ここに来たばかりなので方角も
分からずただ町を目指して街道を歩いて来ました。」
「なるほど・・・お前、人間か?」
「は、はい」
「そうか、珍しいな」
確か、この異世界はたくさんの種族がいると
マニュアルで書いてあった。なので種族を
聞かれることは珍しくはないのであろう。
それにここは中央大陸、多くの種族が交易で
訪れているはずだ。
俺が不思議そうな顔をすると
「いや、人間がこの場所に来ることがな・・・
まあ、知っていれば絶対来ないと思う」
「そう、なんですか?」
「まあいい、ここに来た用件は?」
俺に敵意がないことが分かってくれたのか、
門番は俺に向けていた、槍を肩に掛けた。
「もしよければ、一晩泊めて頂けませんか?
無理なら、入口の近くでも構いません。
夜の移動は怖いのでよろしくお願いします」
俺は門番に頭を下げて
何とは泊めてもらえるように懇願した。
「怖い?かなり強そうに見えるが?」
門番は不思議そうに俺を見た。
「そう、ですか?ちょっと強さの比較が
分からないので・・・」
「見た感じでは、この辺の魔物なら楽勝で
勝てそうに見えたのでな?」
ん、やっぱり俺って強いのか?
でも比較が出来ないので油断できない。
門番は地面に落ちているひのきの棒を見て
「その木の棒がお前の装備なんだろ、まあいい、
ちょっと待ってろ、ボスに確認してみるから」
「お願いします。」
俺は、地面に置いたひのきの棒を拾い
入口前で待った。
門番は集落の中に入り誰かと会話している。
俺は柵の間からそれを見守っていた。
しばらくして、門番が帰ってきた。
「集落に入る許可が出た」
良かったーー。俺は、
「ありがとうございます。
本当にありがとうございます。」
何度も頭を下げた。
「お礼はボスに言いな、俺はただ伝えただけだ」
「分かりました、それでもありがとうございます」
集落の中に入った。
すると正面に人がいた。
3人ほど並んでこちらを見ている。
正面の人がおそらくボスかな?
俺は、ひのきの棒を地面に置いて一礼をした。
無論、敵意がないことを示すため。
ボスみたいな人?が俺を見て言った。
「ようこそ、人間の方」
「魔族の集落へ」
魔族かよ・・・
俺の運勢はどうなってるの?




