第96話:『キキカの手紙、ヤサカの伝文』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
鬼人島、族長の部屋にて、ぽけーーーっと座っている鬼人の少女が一人。
鬼人族”影護”族長”国護”キキカである。その表情は・・・族長とは思えないほどだらけきっている。
「あぁ・・・カグヤ様・・・・昔のイメージ通り。いえそれ以上に素敵な方でした・・・」
恍惚の表情を浮かべるも、どこか寂しそうにしている。
「カグヤ様の愛刀”天穿”きれいだったなぁ・・・でも私の手には少し細かったしなぁ・・・」
カグヤとの思い出を反駁するひと時を切り裂くように、側近がやってくる。
「カグヤ様! 間口にこのようなものが・・・」
「何ですか? こ・・・これは・・・・!!!」
小綺麗な箱を開けるとそこには二振りの脇差・・・人間にとっては脇差だが、鬼人にとっては小太刀くらいのサイズだ。中に手紙が同封されている。
『旅の途中で手に入れたものだが、私より貴女の方が扱えるでしょう。これでジバンを護ってくれ。 カグヤ』
キキカは小太刀を両手に持ち、外に出て構える。身体から”鬼力”が溢れ、刀身の先で翼のような形になる。
「これは・・・父様の・・・」
鬼力は鬼が出す気力の事で、人間も修練を積めば気力を出すことができるが、鬼の鬼力は更に強力。しかしその力を扱える者は少ない。
「おぉ、キキカ様が鬼力を・・・やはりあの戦いは幻ではなかったか・・・」
「えっ? いや、これは・・・えぇ~・・・」
この小太刀はノアの置き土産。初めて出会った時に一度死んだカグヤを回収し、気力の解析を行い、ついでに鬼人の死体も少し拝借して鬼力を解析した結果、才能ある鬼人の鬼力を強制的に目覚めさせる魔道具を開発した。それを小太刀の柄に仕込んだものを送っておいたのだ。柄のサイズもキキカの手に合わせてある。ノアなりの”鬼妖刀のお礼”だった。
ジバンを後にしたアクス一行は、いつものように転移でアークへ帰還した。
長い戦いと騒動の余韻を引きずったまま、ラウンジの床にカグヤがどさっと倒れ込む。
「・・・あーーー、疲れたぁぁぁ・・・」
アクスはソファに顔をうずめながら呻いた。
「お疲れ様でした、アクス様」
ノアがいつもの涼しい顔で紅茶を差し出してくる。戦場の最中でも一切ブレなかった執事ムーブ。もはや安定の光景だった。
「いやーしかし・・・まさか、最後はカグヤがキキカに見た目を寄せて、結果見間違えられるとはな・・・」
アクスがソファーで仰向けになって腹を抱えクスクスと笑う。
「わ、笑いごとじゃないです・・・別にキキカに寄せたわけでは・・・」
カグヤは膝の上で手を握りしめ、顔を真っ赤にしていた。ノアから封印された能力”気力”を解放し、当時は互角以上で強い存在としてイメージを定着していた”鬼”を模したあの気鬼化、覚醒により悪霊鬼を討伐した。全力で臨んだ壮大なバトルのあと気絶し、目が覚めたら自分が主役だと誰も信じていないという現実に、少しショックを受けているらしい。
「いいじゃないか。結果的に国は救われたし、キキカも仇を討てたしな」
「そ、それは・・・そうですけど・・・」
「それに、変に目立って“国母様復活!”とか言われるよりマシだろ。正直、肩の荷が下りたんじゃないか?」
「・・・う」
図星だったのか、カグヤは少しだけ目をそらした。
「そういえば・・・ノア、あの悪霊鬼の残骸、どうした?」
アクスが思い出したように尋ねると、ノアはにっこりと微笑む。
「もちろん、すべて無事に回収済みです。これで研究が、また一歩進みますね」
「・・・あれだけ派手にぶっ壊れたもの、よく全部拾えたな・・・」
「ふふ、私を誰だと思っているんです?」
アクスは苦笑しながら、頭をかく。巨大な鬼の悪霊との戦闘中でも解析・回収作業を平然とこなすノア。どちらが本当の“怪物”か、分からなくなる瞬間だった。
――数日後、ラウンジの空気はいつも通り穏やかだった。戦いや政争、封印や覚醒――怒涛のような数日が嘘のように、穏やかな時間が流れている。
「・・・そういえば、キキカ様から手紙が届いていましたよ」
ノアがすっと一通の封書を差し出した・・・どうやって受け取った・・・?
封蝋には、ジバン皇国の紋章。中を開くと、キキカ直筆の手紙と、国護として戴冠した姿の絵が入っていた。
『あなたのような強い存在に、いつか――少しでも近づけるように。キキカ』
カグヤは黙って手紙を読み終えると、そっと胸に抱いた。その横顔は、少しだけ誇らしげだった。
「さて、次の目的地は・・・」
アクスが気を引き締め直した瞬間――
「ごしゅじんしゃま~!!」
ラウンジの扉が勢いよく開き、エルフ娘達が満面の笑みで飛び込んできた。
そのままアクスに抱きつき――
「ちょ、ちょっと待っ・・・ぎゃああああ!!」
ソファごと倒れて大騒ぎ。
ノアとカグヤは顔を見合わせて小さく笑い合った。他の美従士、雷牙、リオル達も駆けつけて大騒ぎ・・・いつもの日常が、また戻ってきた。
エリシュナへ帰還。転移でさっと往復してしまったので約1週間程と短い日程ではあったが、なかなか濃い冒険だった。
冒険者ギルドに顔を出す・・・まだ使者がいる。ヤバい、忘れてた。1週間ずっと国母を待っていたのだろう、焦燥を越えて諦めと絶望の表情でヤケ酒を煽っている。
「あのー・・・」アクスが恐る恐る声をかける。
「おぉ! アクス殿! 探しておりましたぞ! 国母様、いえ剣聖様はお会いできましたかな?」・・・本当に探してたか?
「剣聖様は・・・会っていないですね」アクスの目が泳ぐ。
使者たちはがっくりと肩を落とし、母国の現状を憂いているようだ。
「あー! アクスさぁん! 1周間ぶりじゃないですかぁ!」パルマが大声で話しかけてくる。
「ん? あぁ、そうだな、俺に何か用か?」
「え? あー、そうじゃないですぅ、使者さーん? 伝文が届いてるですぅー♪」
受け取った伝文の控えを読むヤサカ・・・その目が見開き、勢いよく立ち上がる。
「アクス殿! 大変世話になった! お前達! 今すぐ帰るぞ!!」
「え? でも国母様が」
「もうそんな状況ではない! いいから帰るぞ!!!!」
使者たちはそそくさとギルドを後にし、皇国へと帰っていった。
「まぁ、ジバンで一番の功労者はあいつ等なんだがなぁ・・・多分」
――こうして、ジバン皇国の騒乱は幕を閉じ、新たな守り神の誕生を見届けたアクス一行、その運命は次の破滅救済の物語へと導かれていくのであった。
鬼人の強さ、カグヤの強さ
鬼人の強さは竜人騎士団の三騎士くらいです。ガルザ―と渡り合えるのはキジカくらいですが、他の鬼人も三騎士並みの実力者が揃っていて、強い個体数の優位差で鬼人の方が勢力的に強いです。まぁほぼ互角ですね。悪霊鬼は竜化したガルザ―やメルラグノスと互角くらいで、カグヤは単体で竜を屠れる力を手に入れた事になります。まぁそれでもガチ古代竜のミレイユには及びませんが、美従士内での強さとしてはヴァネッサと同じくらい強いですね。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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