第95話:『千刀鬼展開、戦闘の顛末』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
「――気鬼化解放!」
族長の刀を持つ鬼の少女、その姿を見た影護族の兵たちが一斉に歓声を上げる。
「キキカ様が・・・力を解放なされた!」
実際はカグヤなのだが、族長の武器、身長、元々の容姿、そして”キキカ”という言葉・・・結果カグヤがキキカの姿に寄り過ぎたせいで完全に誤解されてしまう。
悪霊鬼が咆哮を上げ、カグヤを殴りつける。その一撃は地面を抉り、海岸を震わせた。
カグヤは海岸の砂の上とは思えない俊敏さで動き回り、居合いの構えから斬撃を放つ。
鬼妖刀を握り込んだ気力の腕が斬撃に重みを乗せ、ついに鬼の腕を切り裂いた。
技でもない一振りから繰り出す衝撃波は――まさに神速。
空を覆う瘴気が限界まで膨張し始めたとき、カグヤは目を閉じ、深く呼吸した。
「・・・千刀鬼、展開」
彼女の背中から、気力で形成された無数の“腕”が一斉に開花する。そのフォルムはまるで夜空を舞い三日月を背負ったような光の翼。
その全ての手には気刀が握られ、キラキラと夜空に煌めいた。
足元から気力を噴射し、彼女は宙を舞う――千手の翼で風を受けるも羽ばたかず空中旋回するその姿は、まるで戦闘機のよう。
悪霊鬼に突進。千本の腕が一斉に伸び、千刀によるミサイルのような連閃が交錯した。
空気を裂く轟音。弾丸のように降り注ぐ斬撃は悪霊鬼の肉体を切り刻み、巨体を次第に追い詰めていく。
悪霊鬼が最後の瘴気弾を吐き出すが、カグヤが渾身の”千閃”で粉々になり、霧散する。
千刀が一斉に突き立ち、巨体を串刺しにする。その全てが全ての面を的確に捉えていた。
「――終いです」
一刀を振り下ろすと、千刀が連鎖的に振り抜き、悪霊鬼は爆裂するように光の中へと消えていった。
いつもの事ながら・・・素材は全てノアが回収。
(また研究材料が増えましたね・・・フフフ)
瘴気が晴れ、空が一気に青く戻る。海と大地に静寂が訪れた・・・と同時に――歓声が、爆発した。
「うおおおおおおぉぉぉ!!!!」
「あの悪霊鬼を封印どころか討伐したのか・・・我らの勝利だー!」
「キキカ様が・・・あの力を・・・!」
「ついに・・・ついにキキカ様が覚醒なされたぞ!!」
「国母様の再来だ!!」
影護族の兵たちは、目の前で繰り広げられた“気鬼化”の戦いを、自分たちの姫・キキカによるものだと信じて疑わなかった。
実際には、戦っていたのはカグヤ。だが、キキカはカグヤに瓜二つ。加えて「気鬼化」の発音が「キキカ」と酷似していたため、名前・姿・タイミング――すべてが偶然重なった。
それが“誤解”を“確信”に変えてしまったのだ。
千刀鬼を解除したカグヤは墜落するように堕ち、キキカの目の前で砂埃を上げる。
「約束は・・・果たしたな・・・お互い・・・生き・・・て・・・」
「カグヤ様?・・・カグヤ様!」
高帳を手渡したカグヤはそのまま気を失い、死んだように眠ってしまった。
(ふむ、少し気力を使いすぎましたね。その前の体力の消耗も激しかったですが・・・気鬼化はまだ身体への負担が大きいようです。多用しない方が良さそうですね)
ノアが冷静に分析している。
「キキカ様! 素晴らしいお力でございましたぞ!!」
影護族たちは勝手に盛り上がり、彼女を囲んで歓喜の声を上げ続ける。
「ち、ちがっ・・・! わ、わたしは・・・!」
キキカ本人はオロオロと手を振っていたが、誰も聞いていなかった。
一方その頃、戦場の裏側――夜行族の本陣では、玄真が戦況を立て直そうと逃走を図っていた。
しかし、そこに立ちはだかったのはキキカ率いる影護族の精鋭部隊だった。
「・・・ここまでか」
玄真の額から血が滴り落ちる。先ほどのカグヤとの戦闘で深手を負っていたのだ。
「夜行玄真・・・貴様の悪行、もう隠せるものではない!」
キキカの声が震える。恐怖ではない。怒りと決意の震えだった。
玄真は黒い瘴気を纏い、棍棒を構える。
「小娘が・・・私を止められるとでも・・・」
次の瞬間、影護族の兵たちが一斉に突撃。
玄真は迎え撃とうとするも、満身創痍の体は耐えられず、数合の交錯で棍棒を弾き飛ばされる。
キキカが飛び込み、カグヤから預かった天穿で渾身の一撃を玄真の首へ叩き込んだ。
「ぐっ・・・あ・・・」
玄真の巨体が海岸に崩れ落ちる。血潮が砂浜を赤く染めた。戦場に、完全な勝利の空気が広がっていく――。
戦いが終わった後、アクスは影護族とともに玄真の首と、悪霊鬼の核(ノアが一時的に戻した)を携え、ジバン皇国の上層部へ真実を報告するためヒノモ都へ戻った。
ジバンの調査兵が夜行族の本拠地を捜索したところ、地下からは大量の人間の骨と、攫われた村人の遺品が見つかった。さらに夜行族の残党たちは戦意を失い、非戦闘員もまとめて拘束。取り調べでは、影護族に罪を擦り付け、国と民から金と命を吸い続けていた裏の所業を、あっさりと白状した。
「夜光ではなく夜行・・・これが奴らの、真の姿だと・・・?」
ジバンの将たちは言葉を失い、膝をついて項垂れた。長年共に国を守ってきたと思っていた“光の一族”が、実は最も深い闇だったのだ。
「キキカ様こそ、新しき守護神だ!」
「悪霊鬼を討ち果たした救世主!」
「あ、いえ、それは・・・国母様が――」
「おぉ、キキカ様が新たな国母様に・・・国母様、万歳!!」
結果として――影護族の姫・キキカは、人々の間で“新たな国母”として祀り上げられることとなった。
影護族もジバンの民も、口々ににキキカの名を叫んでいた。
真実を知るアクスとカグヤ、そしてキキカ本人だけが、ぽかんとした顔でその熱狂を見つめていた。
「キキカ様!もうご謙遜は不要です!」
「覚醒の瞬間、我らがしかとこの目に焼き付けましたぞ!」
キキカの弁解は、熱狂という名の津波に一瞬で飲み込まれた。もはや誰も聞いていない。
この戦いが後に「キキカ覚醒伝説」として語り継がれるとは、誰もまだ知らない。
ジバンの上層部は最終的に、キキカを「始祖」とは認められなくとも、「守護神」として<国護>という称号を正式認定する政治的決断を下した。国家として“象徴”ではなく“実際に国を護れる存在”を求めた結果だった。
一方カグヤは、国の人々の前でそっと微笑む。
「・・・私はもう、この国の護り神ではなくなったか」
その声音には、どこか晴れやかな響きがあった。
――別れの時。影護族の兵たちが整列し、キキカが涙をこぼしながらカグヤの前に立つ。
「これを・・・お持ち下さい」キキカはカグヤに高帳を手渡す。
「これは国を護る貴女に必要なものでしょう」
「いえ、私には到底扱えません。それに、カグヤ様は今ジバンだけではなく世界を救っているのだと伺いました。この世界には悪霊鬼よりも強大な怪物がたくさんいるはず。この刀で、どうか世界を救って下さい」
「わかった。この命にかけて、世界の悪い怪物を全て斬り滅ぼしてやろう」
カグヤは鬼の一族に伝わる伝説の名刀”鬼妖刀・高帳”を手に入れた。
「・・・わたし、もっと・・・もっと強くなって・・・あなたのように、この国を護ります!」
「・・・うん。あなたなら、きっとできる」
カグヤは優しく頭を撫で、姫としてではなく、一人の戦士として送り出した。
アクスはその光景を少し離れた場所から見て、ぽつりと呟いた。
「・・・あいつも、成長したな」
影猫が「にゃーん」と鳴いて、彼の足元で顔を撫でている。
こうして――ジバン皇国は新たな守護神”国護キキカ”を得て、鬼族の内戦と悪霊鬼の脅威を乗り越えた。カグヤは“国母”の役目を終え、再びアクスの従士としてアークに戻る。
空には、夜明けの光が差し込んでいた。それはまるで、新しい時代の幕開けを告げる光のようだった――。
カグヤのコンセプト
カグヤには日本の要素をなるべく詰め込みたいと思っていて、日本神話、天女、巫女、袴、侍、剣士等の要素が入っています。忍者は侍とキャラが喧嘩するのでダークエルフに任せましたが、他に入れたかった要素として仏がありました。優しい仏の心を持つという事でも良かったのですが、そういう事ではなく、何かビジュアル的に入れ込みたいけど、さすがに髪をチリチリにする訳にもいかず、明らかにインパクトがある仏といえばやはり千手観音かなと。それで調べてみたら千手観音は仏ではなく菩薩に分類され、仏と菩薩は明確に違うようです。ただカグヤの生き方としては菩薩の方が近かったのでこれは好都合という事で、気力で千本の手を生やすという形で千手観音を表現しました。最初は物理的に背中から生やそうかとも思ったのですが、想像したらキモかったのでやめました。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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