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第93話:『開戦の瞬間、解印の予感』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 そして間もなく、軍の陣幕が開かれ、玄真が壇上に立った。

 兵士たちと夜行族の戦士たちが集まり、ざわめきが広がる。

 玄真は一歩前に出ると、朗々と声を響かせた。


「――諸君! いよいよ我らは、このジバンを蝕む“闇の一族”を討つ時が来た!」


 兵士たちが「おおおっ!」と歓声を上げる。


「影護と名乗るあの者どもは、長きにわたり我々を裏切ってきた。かつては国母様の監視のもとで渋々封印を守っていたようだが、国母様がいなくなられた途端に手を翻した! 奴らは祠の力を我が物とし、人々を脅かし続けている!」


 嘘だらけの言葉が堂々と語られ、周囲の人間も夜行の戦士も、それを当然の真実として頷いていた。


「我ら夜光族は、夜の闇を照らす光! 人々の希望だ! この戦いは正義の戦いであり、ジバンを護る聖戦である!」


「うおおおおおっ!!」


 兵士たちは大歓声を上げ、槍を突き上げる。士気は最高潮だ。


「それにこれはジバン皇国皇王陛下からの正式な依頼である! 依頼料も前金で頂いておる! これは皇王陛下の覚悟と受け止めた! 我らも命を賭して戦おう!」


 皇王という言葉に自らの正当性が高まる、士気はさらに高まる。


「それに・・・鬼人島にはお宝がたんまり溜め込まれている! 元々人間から奪い取った宝だ! この際全て返して貰おう、その宝は・・・皆で山分けだ!」


 大義名分に豪華な報酬・・・それは人心を完璧に掌握した演説だった。もはや洗脳に近い。


 その光景を少し離れた場所から眺めていたアクスは、あくびをかみ殺しながらぼそっと呟いた。


「・・・いや〜、見事な演説だな。大嘘だけど」


 カグヤが目を細める。


「これでは・・・影護族が悪だと信じてしまいます・・・」


「まぁ、今はその“嘘の戦”に乗ってやるさ。・・・あとで全部ひっくり返してやればいい」


 アクスはにやりと笑った。


 その頃、沖合では影護族の船団が夜の海を渡り、本島海岸へと進軍を開始していた。


 一方、夜行族とジバン軍もまた「影護討伐」の名目で進軍を始める。


 まるで互いに獲物を狙う二つの影――。


 本島海岸線を舞台に、影護族と夜行族・ジバン軍の船団が、互いに引かれ合うように接近していく。


 やがて、海面を切り裂くような戦鼓の音が鳴り響いた。


 波間に漂う不穏な空気――海戦の幕が、ゆっくりと上がる。


 ジバンから大金を積まれた夜行やこう族が、「影護ごえい族討伐」の名目で軍を率い、本島の海岸付近へ到着、部隊編成を開始した。


 一方、影護族も祠奪還を掲げ、戦闘員総出本島沿岸に着岸、迎撃の準備を整えていた。本島の海岸――白波が砕け散る戦場に、二つの軍団がぶつかる。


 空は曇天。海面は不気味なほど穏やかで、嵐の前の静けさのような空気が張り詰めている。


「戦が、始まるぞ・・・」


 アクスは討伐軍の一員として、傭兵団の後方に立っていた。もちろん、表向きはただの傭兵。


 背後ではノアの解析魔法が戦場全体を覆い、影猫は既に夜行族主将達の影へと潜入済みだ。


(全体の動きはノアで見える・・・あとは、仕掛けるタイミングだけだな)


 影護族の船団が一直線に迫ってくる。その先頭には、キキカの姿があった。大柄な体に、鋭い双眸――カグヤに瓜二つの容姿は、戦場でも際立っている。


「・・・行くか」


 カグヤは無言で刀の柄に手を添え、じっと戦の動向を睨んでいた。


 やがて――


 両軍が激突。海岸に戦鼓とときの声が響き渡る。


 矢が飛び交い、鬼人と兵士の咆哮が入り乱れる中、キキカは最前線へと躍り出た。


 しかし――


「くっ・・・多すぎる・・・!」


 夜行族とジバン軍を合わせた兵力は影護族の数倍。


 圧倒的な数の前に、影護族は次第に押し込まれていく。


 既に勝ちを確信した一部の夜行族と傭兵達はここぞとばかりに戦果の奪い合いを始めた。


「俺が討った!」「いや、俺だ!」と仲間内で争い、連携は崩壊。


 本来なら共闘すべき討伐軍は、内部から自壊を始めていた。


「・・・今だな」


 アクスは小さく呟き、影猫に合図を送る。


 次の瞬間――


 戦場の影という影から、黒い猫のシルエットが滑るように走り抜けた。


 同時に、夜行族の鬼たちが次々と倒れていく。喉を尻尾で締め上げられ、または意識を刈り取られ、血煙が上がることもなく静かに沈んでいった。


 ダークエルフ部隊もまた、アクスの指示で暗闇から討伐軍を襲撃。


 ジバン兵士と傭兵たちは可能な限り気絶させ、殺さずに無力化する。


 内部撹乱――その効果は絶大だった。


 統率を失った討伐軍は、夜行族の側から雪崩のように崩壊していく。


玄真げんしんッ!!」


 混乱の最中、カグヤが閃光のように駆け抜け、夜行族族長・玄真の前へ斬り込んだ。


 その剣閃は音よりも速く、玄真の首を狙う――が、玄真は巨大な黒鉄の棍棒でその一撃を受け止めた。


「ほう・・・噂に違わぬ剣だな、国母様よ」


「あなたを・・・許すわけにはいきません」


 金属と金属がぶつかり合い、火花が散る。


 鬼族の長と、国母の激しい一騎打ちが海岸の中央で繰り広げられ、兵士たちが息を呑んで見守った。


 戦況が一時的に影護族優勢へと傾いた、その時だった。


 ドゥンッ!!!――大地が揺れた。

カグヤが天界から降りてきた理由


 天界にいる天人(天女)は、基本的に地上には干渉せず、たまに上空から地上を見下ろすだけで、特に何かするという事はありません。カグヤが地上に降りた理由はとてもシンプルで、単に”人助けがかっこよかったから”。襲われそうになっている者の前に颯爽と現れ、悪人や魔獣を倒すヒロイックなシチュエーションに感激し、自分もやってみたいという理由だけで降りてきました。天界のルールとしては特に禁止されていませんが、他の天人は地上に降りたいという発想自体無く、暗黙的に地上とは干渉しないようになっていて、カグヤの行動がバレるとかなりの変わり者、変人扱いを受ける事でしょう。それをカグヤも理解しているので、天界にバレないよう編笠を被り、人のフリをして人助けをしながら、戦う為の技術として東方諸国内の武術を学ぶ旅をしていました。武を極めた結論として、刀が一番扱いやすいという答えが出たので使っていますが、実際は大抵の武器が使用可能、素手でもかなり強いです。魔銃や魔法杖は専門外ですが。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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