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第89話:『表の夜光、裏の夜行』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 ――翌朝。


 アクスはヒノモ都の中心街を歩いていた。人混みの中、ふと目に留まった一枚の張り紙――


 ―鬼退治のための傭兵、急募! 高報酬! 腕に覚えのある者、北方詰所まで来たれ!―


「鬼退治・・・ですか」


 カグヤが小さく呟いた。その声は、懐かしさと不安が入り混じっていた。


「情報集めにはちょうどいい。行ってみようか」


「はい」


 アクスとカグヤは北方詰所へ向かった。詰所には既に腕利きの傭兵達が集まっており、にぎやかな怒号と酒の匂いに包まれている。


 ――だが、その中に混ざっていたのは、角を持つ鬼人たちだった。


「・・・なぁ、カグヤ。あれ鬼だよな?」


「・・・はい、見えています」


 鬼たちは堂々と人間の兵士と肩を並べ、まるで当たり前のように説明を聞いている。敵国の兵と同席しているような異様な光景に、アクスは眉をひそめた。


 やがて、奥の扉が開き、一人の鬼人が現れた。漆黒の衣に白い羽織、片角が折れた異形の姿――それでも堂々とした雰囲気を放っている。


「よくぞ来た、異国の冒険者よ」


 その声は重厚で、しかしどこか芝居がかっている。


 名を名乗ったその鬼は――夜行族やこうぞく族長・夜行玄真やこう・げんしん


「我ら”夜光やこう族”は、この国の暗き夜を照らす光の一族! こそこそと影を護りし悪しき影護えいご族を打ち払い、民を守るためにここに立つのだ!」


 彼は誇らしげにそう叫ぶと、集まった傭兵達から歓声があがる。


(夜光・・・?)アクスの目に疑念が浮かぶ。


「・・・目には目を、鬼には鬼を、ってやつだな! ガハハハ!」


 傭兵の一人が笑い飛ばし、それに玄真も大声で笑い返す。


(・・・なんか怪しいな、こいつ等。何と言うか、正義を成す奴には見えんというか、これまで見てきた悪人に通じる何かを感じる)


 アクスは心の中で呟いた。玄真の笑いには、表の光とは違う、どす黒い何かが混じっている。・・・もちろんノアの前情報あっての判断である。


 説明によれば、鬼人には二つの一族があるという。


 一つは――夜光族。夜の闇を照らし、人々を鬼の恐怖から守る“正義”の一族。

 もう一つは――影護族えいごぞく。影に潜み、悪霊と結託する“人食い鬼”の一族だと。


 影護族は昔、夜光族が<鬼人島>という島に追いやったが、たまに少数で島を抜け出しては人を攫って食っているのだそう。


「我らも肉は食うが牛豚鶏で事足りる。わざわざ共に暮らす人間など食わん。影護がどうかしているのだ!」


 そして、今になって封印のある<封鬼ふうきほこら>を狙って本島に本格的な侵攻を始めた。


 祠を奪われれば、そこに封じられている<悪霊鬼あくりょうき>が蘇る恐れがある――だから先んじて影護族を討つのだ、と。


「どうだ、異国の剣士よ。我らと共に悪しき鬼を討ち、この国に平穏を取り戻さぬか?」


 玄真がアクスに手を差し出した。


(うーん・・・口がうまいな。こういうタイプが一番やばい)


「・・・いいでしょう。報酬は高いに越したことはないし」


「ふふふ、勇敢なる異国の戦士よ! 歓迎しよう!」


 アクスは傭兵として討伐隊に加わることを了承した。


 戦力に自信があるため、最前線に回してほしいと願い出ると、玄真はニヤリと口元を歪め「それは心強い」と笑った。


 ――その夜。


 アクスは宿を取り、影猫に都の裏路地を探索させていた。月明かりに浮かぶ屋根の影を、黒い影が音もなく滑るように移動していく。


(ノア、何か掴めそうか?)


(はい・・・夜行族の動き、表と裏で完全に別ですね。表では討伐の準備、裏では・・・)


 影猫が見たのは、夜行族の一団がこそこそと倉庫に入っていく姿だった。倉庫の中には大量の金貨、宝飾品、そして人間の衣服――そして奥の方には、大量の血の跡。


(逆こいつらが影護族のふりして“人喰い”をやってるのか、何が牛豚鶏で事足りるだよ)


 アクスは鼻で笑った。これで一気に“傭兵として敵陣に潜り込む”理由が固まった。


 夜の帳が静かに島を包み込む頃、アクス一行は〈転移てんい〉を終え、ひっそりと鬼人島の岩場に姿を現した。波が黒い岩肌に打ちつけ、しぶきを上げる。その音に紛れるように、影猫がすっと先行して暗がりへと溶け込んでいく。


「・・・この島、想像以上に静かだな」


 アクスは囁くような声で言い、足音を殺して進んだ。


(ノア、周囲の反応は?)


(問題ありません。見張りは少数で、警戒はしていますが、殺意までは感じられません)


 アクスは小さく頷き、背後のカグヤと視線を交わした。彼女は薄く微笑み、懐かしむように夜の森を見つめている。その瞳の奥に、幼い日の記憶がちらついているようだった。


「かつてこの島で、影護族の戦士と研鑽を積んだ事もありました。共に本島で悪党や悪鬼から人々を護った事も・・・」


 カグヤが小さく呟く。


 森の奥に進むにつれ、微かな“気配”がいくつも感じられるようになっていった。殺気ではない――だが、確実にこちらを監視している。影猫が一度尻尾を立て、右手奥を示した。


(囲まれてますね。たぶん・・・歓迎はされていません)


(予想通り、だな)


 次の瞬間――

鬼人とは


 アルセイデアでは亜人の一種。オーガよりも人に近い存在。鬼の獣人版のようなものなので鬼人と呼ばれる。ジバンには周囲の島も含めて亜人は鬼人と半魚人しかいない。半魚人は魚しか食べず、人間は襲わないので海辺の街では漁業の助けとなっていて人に溶け込んでいるが、鬼人は昔から人を食べると噂され、恐れられていた。ジバンのある場所を拠点として永く居座っていたが、ある時、人を食う鬼と食わない鬼で部族が2つに分かれ、片方がとある島に追いやられてしまった。残った鬼は人と手を取り合い、平和の維持に貢献している・・・とされている。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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