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第86話:『皇国の使者、東方の武人』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 そらをゆるやかに漂う天空要塞てんくうようさいアークの一室――アクスはソファに寝転がり、頬にリオルを乗せながらだらだらと過ごしていた。


 ここ最近立て続けに巻き込まれていた他国の厄介な依頼から解放され、久しぶりの“何もない時間”を満喫している。


「・・・あー、やっと静かになった」


 ぴぃ、とリオルが甘えるように鳴き、アクスの鼻先に頭を擦りつけてくる。アクスはその柔らかい鱗肌を指先で撫でながら、半分夢の中に沈みかけていた。


(このままあと一週間くらい、何も起きなきゃいいのにな・・・)


 ――そんな平穏は、当然ながら長くは続かない。


(アクス様、ギルドにお客様が来ているようです)


 天井からノアの澄んだ声が響いた。もう嫌な予感しかしない。


「うん、知ってた。やっぱそのパターン・・・え、客? 依頼じゃなくて?」


(はい、エリシュナの冒険者ギルドに、“アクス様に会いたい”という人物が来ているとのことです)


「はぁ、はいはい・・・行けばいいんでしょ行けば」


 アクスはしぶしぶ体を起こし、欠伸あくびをひとつ。リオルを肩に乗せ、影猫がするりと足元の影に溶けると、アークの転移陣に足を踏み入れた。


 次の瞬間、街の裏路地にひっそりと姿を現す。


 人気のない薄暗い裏路地を出てギルドへ向かうと、入口でいつもの受付嬢パルマが目を丸くして迎えた。


「え、えっ、アクスさん? ・・・タイミングがバッチリ過ぎて逆に怖いですぅ!」


「な、何だよいきなり」


 アクスは何も知らず驚いたフリで大げさに肩をすくめて曖昧に笑う。もちろん演技だ。ノアの情報取得能力が神懸かっているだけだ。


 ギルド内を進み、ギルドマスター・ガルドの執務室に入ると、そこには見慣れない人物が三人、整然と並んで座っていた。ガルドが分厚い腕を組みながら言う。


「おう、来たなアクス・・・こいつらが、お前に会いたいって言ってきた連中だ」


 その背後、アクスの影にぴたりと不可知で気配を消して寄り添うカグヤが、低く一言呟いた。


「ジバン皇国の使者ししゃですね」


 その声には、ほんの僅かに懐かしさと警戒が混ざっていた。ジバン――カグヤがかつて生まれ育った、東の島国だったか。


 アクスは席に座り、改めて彼らを観察した。


 一番手前の椅子に座るのは、涼しげな眼差しを持つイケメンの青年。背筋は真っ直ぐで、立ち居振る舞いはまるで演武のように整っている。その背後には二人の護衛――男は立派な刀に脇差も帯びた、まさに侍そのものの風貌。女はカグヤとよく似たはかま姿に軽鎧けいがい、白と黒の配色が凛としていて印象的だ。


 青年が静かに口を開いた。


拙者せっしゃはジバン皇国こうこく使者ししゃ、トウマ・ヤサカと申します。後ろの二人は護衛ごえい――男はソウジ、女はアンズと申します。以後いご、お見知り置きを」


 トウマの動きに合わせて、ソウジとアンズもぴたりと礼をする。息の合った所作は、まさに武人のそれだった。


「はぁ、これはご丁寧にどうも・・・で、私に用とは?」


 アクスは恐る恐る伺う。


「はい、率直に申し上げます」


 トウマの瞳が真剣に細められた。


「拙者らの国母神こくぼしん――天御中照主アマミナカテルヌシ輝雅神カグミヤビノカミ様を、どうかお返し頂きたい!」


「アマミ・・・何ですかそれは?」アクスは思わず素で返してしまう。


天御中照主アマミナカテルヌシ輝雅神カグミヤビノカミ様にございます。貴殿きでんの噂は遠きジバンの国まで流れてきております。何でも魔物大暴走スタンピードを一撃で静める豪剣使ごうけんつかいであると」


「えぇっ!? いや、なんでそうなるかな・・・私はただの無能の剣士ですよ、そんな事出来ませんって」


「いえ、流れてきた話では暴走を沈め、国王から報奨を賜った高ランク冒険者であると」


「いや、それはそうなんだけどそうじゃないって言うか・・・」


 アクスは額に手を当て、心の中で小さくうめいた。


(やばい・・・ここで変に答えたら、これまで目立たずやってきた苦労が全部水の泡になる・・・!)


 ――静かな執務室の中に、妙な緊張と汗がじわりと漂う。


「ヤサカ様、これではらちが明きません、一度実力を試されては?」


 後ろで控えていたソウジがとんでもない提案をしてくる。


(なんでそうなるんだよ!アマ何とかと実力試すこと関係ないだろ!)


 アクスは心の中でツッコミを入れる


「いきなり訪ねてきて荒事とは感心しませんなぁ、話も要領を得ない。それに・・・コイツはワシよりも強いんですがね」脳筋ガルドが珍しく静止を入れる


「何と! ギルドマスター以上の実力とは! それは・・・是非手合わせしてみたいものです」ソウジから闘気と怪しい笑みがこぼれる。


「ほう・・・それはギルドマスターであるワシは簡単に倒せるというように聞こえるが?」ガルドが殺気にも近い闘気で挑発する、コイツ絶対自分が戦いたいだけだ!


「ソウジ、気をお静めなさい」


 ヤサカの一言で、殺気立っていた室内の空気が一気に静かになる。まるで何もなかったような、和やかというより、熱気を氷魔法で一気に冷やしたような空気だ。


「も、申し訳ありませんヤサカ様! ガルド殿も大変失礼致した」 


(・・・俺は?)


 話はよくわからないが、ジバンでアクス宛ってことはつまり・・

東方諸島連合中心国:ジバン皇国


 大陸の東側、海を超えた先に大小様々な島が点在する諸島領域があります。その一つ一つが国のように独自の文化を形成しており、隣の島に行くだけで習慣が全く違います。ジバン皇国は、諸島の中央にひときわ大きな本島を抱え、その周囲を大小の島々が囲む――いわば、諸島連合国の本島そのもの。島ごとに別れていても、大陸の他国に比べたら単体としては弱小なので、舐められたり攻められたりしないよう諸島の長たちが結集し、対外的には諸島全体を”一つの連合国”として大国アピールするということで”東方連合国”という名前で発信しています。


 しかし、ジバン以外は無名の弱小島なので、外国のほとんどは諸島全体がジバン皇国だと思っていて、”東方のジバン連合皇国”などと呼ばれています。まぁ実質そんな感じなのですが。一応各島にもプライドというものがありまして、それを考慮した結果ちょっとごちゃついている感じになってます。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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