第84話:『歓喜の故郷、拠点へ帰郷』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
王都を発つ朝、アクスたちは民衆の盛大な見送りを受けた。草食獣人も肉食獣人も分け隔てなく、道の両脇に並び、旗を振り、口々に感謝の言葉を叫んでいる。
その熱気は、かつて街角で日常のように行われていた“食刑”の光景と、あまりに対照的だった。
「まるで・・・お祭りみたいですぅ」
隣でパルマが目を潤ませながら呟いた。
王城での決闘、雷牙の咆哮、そして草食獣人たちの正気の奪還――あの一連の出来事を知る者は王族や側近、そしてごく一部の者だけ。民の多くはただ“突然現れた大魔獣が内戦を止めた、そしてそれは目の前の人間による功績なのだ”とだけ聞かされている。
帰り道、アクスはパルマの故郷の村にも立ち寄った。内戦の終息、食刑、徴税の廃止を聞いた村人たちは口々に歓喜の声を上げ、蹂躙され続けた村を救ってくれた恩人に対し、涙ながらに歓迎する。
パルマは家族に囲まれ、泣き笑いの入り混じった表情で、ぎゅっと両親を抱きしめた。
「・・・いってきますですぅ」
村の夕日が橙色に差し込む中、パルマは涙をぬぐいながら一行の後ろに立ち戻る。その背筋は以前よりもずっとまっすぐだった。
そして、いつの間にか当然のように――いや、もはや恒例行事のように――ライガル率いる獣王の牙が、もう何の説明もなく勝手に護衛隊に加わっていた。
「兄貴、帰り道にゃ気を抜いちゃいけませんぜ!」
(・・・いつもながら、こいつらどっから湧いてくるんだ)
ライガルのしたり顔に、アクスはため息をついた。
数日後、拠点の街エリシュナの冒険者ギルド。
王都での草食獣人による反乱と、それを一瞬で鎮めた“大魔獣”の噂は、伝文によって既にギルド内にも伝わっていた。だが、文章だけでは真相が伝わり切らず、誰もが首をかしげている。
「パルマ、お前現場にいたんだろ、詳しく教えてくれ」
ギルド長のガルドが眉をひそめて尋ねると、パルマは少し困ったように笑い、耳をしゅんと下げた。
「え、えっと・・・わたしは村に居たので、王都の事は・・・よく、わからないですぅ」
ライガルもまた、のらりくらりとかわす。
「俺ぁ冒険者だからな。国政には関わらねぇってのがウチの方針だ。金になんねぇしな! 遠目に“何か”は見たが、ありゃ何だったのか全くわからねぇ。つまらねぇリスクに首突っ込む訳ねぇだろ」
最後にアクスが淡々と続ける。
「無能な部外者の俺が、あんな大事件で何かできるわけないだろ」
「でも王都には行ったんだろ?受付記録があったぞ」
「パルマが村でゆっくりしている間に観光しに行ったんだ。でもずっと隠れてたし、すぐ逃げ帰ったからよく知らんよ」
3人の報告は見事に食い違いなく揃っていた。「自分は部外者だ」という点で・・・。
ギルドは結局、真相の追求を諦める。
だが――。
その後の空気は、ほんの少しだけ変わった。
これまで「無能」と呼び捨てにしていたライガルが、アクスとの会話の節々で、時折自然と敬語を混ぜるようになっていたのだ。
「お、おいアニ・・・いや、アクスさん、それは・・・」
「お前今“さん”って言っただろ」
「い、言ってねぇ!・・・っす」
そして、かつては高ランクの冒険者相手に媚びへつらい、いつもおどおどして仕事でもそそっかしかったパルマは、今やギルドの受付嬢として誇りある態度でテキパキと仕事を捌き、もじもじしていたアクスへの対応も今や自然体。
まるで、長年共に歩んできた“相棒”のような信頼感と落ち着きがあった。
「パルマちゃん、なんか・・・変わったわね」先輩受付嬢が声をかける。
「え、えへへ・・・そうですぅ?」口調はやはりいつものパルマのようだ。
頬を少し染めて照れるパルマの姿を、アクスはただ遠目から見守っていた。
ギルドの空気も街の喧騒も、表面上は何も変わっていない。だがほんの少し、若き2人の成長により見えない何かが確かに変わっていた。そしてその中心にはあの”無能冒険者”アクスの存在。
獣王国を救った英雄は、今日も無能の仮面を被り、ギルドの窓際でだらだらと過ごす。
その足元には伝説の大魔獣が子犬の姿で丸くなって眠っていた。
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