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無能転生者、何もせず遊んでたら異世界救ってました。  作者: 真理衣ごーるど
╰╮第9章:レオバルド獣王国編╭╯
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第84話:『歓喜の故郷、拠点へ帰郷』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 王都を発つ朝、アクスたちは民衆の盛大な見送りを受けた。草食そうしょく獣人も肉食にくしょく獣人も分け隔てなく、道の両脇に並び、旗を振り、口々に感謝の言葉を叫んでいる。

 その熱気は、かつて街角で日常のように行われていた“食刑しょっけい”の光景と、あまりに対照的だった。


「まるで・・・お祭りみたいですぅ」


 隣でパルマが目を潤ませながら呟いた。


 王城での決闘、雷牙らいが咆哮ほうこう、そして草食獣人たちの正気の奪還――あの一連の出来事を知る者は王族や側近、そしてごく一部の者だけ。民の多くはただ“突然現れた大魔獣が内戦を止めた、そしてそれは目の前の人間による功績なのだ”とだけ聞かされている。


 帰り道、アクスはパルマの故郷の村にも立ち寄った。内戦の終息、食刑、徴税の廃止を聞いた村人たちは口々に歓喜の声を上げ、蹂躙じゅうりんされ続けた村を救ってくれた恩人に対し、涙ながらに歓迎する。


 パルマは家族に囲まれ、泣き笑いの入り混じった表情で、ぎゅっと両親を抱きしめた。


「・・・いってきますですぅ」


 村の夕日がだいだい色に差し込む中、パルマは涙をぬぐいながら一行の後ろに立ち戻る。その背筋は以前よりもずっとまっすぐだった。


 そして、いつの間にか当然のように――いや、もはや恒例行事のように――ライガル率いる獣王じゅうおうきばが、もう何の説明もなく勝手に護衛隊に加わっていた。


「兄貴、帰り道にゃ気を抜いちゃいけませんぜ!」


(・・・いつもながら、こいつらどっから湧いてくるんだ)


 ライガルのしたり顔に、アクスはため息をついた。


 数日後、拠点の街エリシュナの冒険者ギルド。


 王都での草食獣人による反乱と、それを一瞬で鎮めた“大魔獣”の噂は、伝文によって既にギルド内にも伝わっていた。だが、文章だけでは真相が伝わり切らず、誰もが首をかしげている。


「パルマ、お前現場にいたんだろ、詳しく教えてくれ」


 ギルドちょうのガルドが眉をひそめて尋ねると、パルマは少し困ったように笑い、耳をしゅんと下げた。


「え、えっと・・・わたしは村に居たので、王都の事は・・・よく、わからないですぅ」


 ライガルもまた、のらりくらりとかわす。


「俺ぁ冒険者だからな。国政こくせいには関わらねぇってのがウチの方針だ。金になんねぇしな! 遠目に“何か”は見たが、ありゃ何だったのか全くわからねぇ。つまらねぇリスクに首突っ込む訳ねぇだろ」


 最後にアクスが淡々と続ける。


「無能な部外者の俺が、あんな大事件で何かできるわけないだろ」

「でも王都には行ったんだろ?受付記録があったぞ」

「パルマが村でゆっくりしている間に観光しに行ったんだ。でもずっと隠れてたし、すぐ逃げ帰ったからよく知らんよ」


 3人の報告は見事に食い違いなく揃っていた。「自分は部外者だ」という点で・・・。


 ギルドは結局、真相の追求を諦める。


 だが――。


 その後の空気は、ほんの少しだけ変わった。

 これまで「無能」と呼び捨てにしていたライガルが、アクスとの会話の節々で、時折ときおり自然と敬語を混ぜるようになっていたのだ。


「お、おいアニ・・・いや、アクスさん、それは・・・」


「お前今“さん”って言っただろ」


「い、言ってねぇ!・・・っす」


 そして、かつては高ランクの冒険者相手に媚びへつらい、いつもおどおどして仕事でもそそっかしかったパルマは、今やギルドの受付嬢として誇りある態度でテキパキと仕事をさばき、もじもじしていたアクスへの対応も今や自然体。


 まるで、長年共に歩んできた“相棒”のような信頼感と落ち着きがあった。


「パルマちゃん、なんか・・・変わったわね」先輩受付嬢が声をかける。


「え、えへへ・・・そうですぅ?」口調はやはりいつものパルマのようだ。


 頬を少し染めて照れるパルマの姿を、アクスはただ遠目から見守っていた。


 ギルドの空気も街の喧騒けんそうも、表面上は何も変わっていない。だがほんの少し、若き2人の成長により見えない何かが確かに変わっていた。そしてその中心にはあの”無能冒険者”アクスの存在。


 獣王国を救った英雄は、今日も無能の仮面を被り、ギルドの窓際でだらだらと過ごす。

 その足元には伝説の大魔獣が子犬の姿で丸くなって眠っていた。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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